Untopmed Frontier, a robot contest that challenges the mystery of the seabed!
火星への移住など、宇宙開発の夢が膨らむ一方で、私たちが暮らす地球の海底は、ほとんど手付かずの神秘の世界にとどまっていました。自律的な水中探査技術の飛躍的な進化により、ようやくこの未開拓のフロンティアに挑むときが来ました。
2015年12月、海洋技術開発を競う世界的なコンテスト「Shell Ocean Discovery XPRIZE」が、賞金総額700万ドル(約8億円)を掲げスタートしました。参加チームの形成期間を経て、タイトな時間制約のもと極限の深みを舞台に調査や測量を遂行するロボット開発の本格的な競争が、今年の後半から始まろうとしています。
石油会社が共同スポンサー
これまで地球の海底は、約5%しか測量できていません。地理的特徴、深海の海洋生物、発見されていない考古学的遺物など、実は海底で何が起こっているのか、まだまだ知る余地があるんです。このコンテストは、無視されていた分野の技術開発を促進する目的で、ロイヤル・ダッチ・シェルとアメリカ海洋大気庁(NOAA)が共同主催するものです。
ただ、石油会社が共同スポンサーとなっている事実には注意が必要です。化石燃料発見に不可欠な海底探査は、エネルギー会社に大きな利益をもたらす可能性に満ちています。また海底には貴重な金属やその他の資源が眠っているのです。
このコンテストが海底資源のさらなる開発を可能とし、不可避的に生態系の損傷を引き起こすリスクは皆無とはいえません。
video: XPRIZEコンテストのルール
審査員は2015年にエントリーした32組のうち21組をセミファイナルに選出しました。進出チームは25カ国から集まった350人ほどの参加者で構成され、半数近い170人が学生です。展開されるソリューションは、グライダー、空中・水中ドローン、自律型水中ビークル、人工知能、大規模コンピューティングプラットフォームなど、きわめて多様。第1ラウンドの要件を満たすチームのみが、第2ラウンドと最終ラウンドに進出できます。
第1ラウンドでは、2,000mの深さでデバイスを操作。テザーや人の介入は許されていませんが、オペレーターは遠隔地から装置を制御しても良いことになっています。デバイスが配備されたら、チームは、500平方km(東京23区が約630平方km)におよぶ、あらかじめ指定された水域の少なくとも20%の測量を競います。探査機は、水平解像度が少なくとも5m、垂直解像度が0.5mの海底地形図を作成し、いかなる深度においても、沈没船、水生生物、海山など、考古学的、生物学的、または地質学的な特徴を捉えた画像を少なくとも5枚撮影しなくてはなりません。これほどのタスクの実行に与えられる時間は、わずか16時間!
これほどの深みでは、水中の装置とのコミュニケーションは難しく、とても簡単にはいかないでしょう。 水深2,000mの世界は暗くて寒く、水圧は2,800ポンド/平方インチに上ります。
セミファイナリスト21組のうち、わずか10組が第2戦に進出し、予備賞金100万ドルを山分けします。第2ラウンドの内容は第1ラウンドとほぼ同じですが、難易度は2倍にアップ。深度は4,000mに倍増、海底の少なくとも50%の測量、科学的特徴を捉えた資料も10点要求されます。このステージの制限時間は丸一日、24時間。
これらすべての目標達成に最も近いチームが、400万ドルの大賞を授与されます。 2位は100万ドルを獲得。海底マッピングの最高解像度を実証し、スピード、自律性、深さに関する最低限の要件を満たすスコアで評価されます。
各チームのアイデア
この困難なタスクに挑戦するべく、各チームはそれぞれ面白いアイデアをひねり出しているようです。
米国ラトガース大学のチームSubUASは、海面上を飛行してから海底に潜り込むことができるハイブリッド無人機を開発(上の動画)。この技術により、チームは装置を迅速にテスト現場に配備することができます。
フランスのチームEauligoは、働き蜂の行動から発想を得、集中型の「巣箱」から、泳ぐロボット昆虫の群れ(スウォーム)を展開します。マイクロサブシステムにより、作業負荷を分担する狙い。同様に、英国のチームTaoも、アリの行動に基づいてスウォーム技術を活用。古代中国の「道教」の概念に触発され、自然の力に逆らうのではなく、自然の力を活用しようとの試みです。
image: Duke/Blue Devil Ocean Engineering米国デューク大学のチーム、Blue Devil Ocean Engineeringは、まったく異なるアイデアを思いつき、水中で音波を探知するソナーポッドを落として拡散する無人航空機(UAV)を開発。これらのポッドは、海底まで沈むと海底の3Dマップを作成し、仕事が終われば海面上に浮上、ドローンによって回収されます。
その他のセミファイナリストには、ドイツから一群の自律型水中ビークルを展開するArggonauts、米国コネチカットから「高効率水中グライダー」のExocetus、また日本からも水中ロボットを使用するTeam KUROSHIOが選出されています。
ボーナス賞
ボーナス賞もあり。NOAAは、生物学的・化学的な信号の発信源を追跡し、海洋の特定の物体を「嗅ぎ当てる」能力が最も高いチームに、追加で100万ドルを授与します。この種の技術は、例えば、海に墜落した飛行機の位置の迅速な特定や、海底にあるホットスポットの研究に役立ちます。この賞には12組が挑戦する予定。
コンテストの意義
コンテストのレベルの高さからして、どのチームも目標を達成できなかったらどうなるの?
「コンテストの企画にあたっては、できる限り達成可能なものとなるよう努めていますが、勝者なしとなるかもしれない」と、XPRIZEの地球環境部門シニアディレクターJyotika Virmaniさんは語ります。「結果いかんにかかわらず、参加チームの多くが相互に触れ合い、この分野の研究開発が競争を超えて継続される」ところに、このコンテストの意義があるんですね。
第1ラウンドは秋にスタート、面白いコンテストになりそうです!
・水深100mをスイスイ、水中ドローンを試してきました
top image: New Underwater Drone Flies AND Swims/YouTubesource:Shell Ocean Discovery XPRIZE
George Dvorsky - Gizmodo US[原文](Glycine)