食料システム変革:子どもと若者から5つの具体策~子どもたちの声を意思決定プロセスに【プレスリリース】
公益財団法人日本ユニセフ協会
首都ニアメの学校で、給食を食べる7歳のジェミラさん。(ニジェール、2021年10月12日撮影) © UNICEF_UN0535858_Dejongh
【2021年10月29日 ニューヨーク発】ユニセフ(国連児童基金)事務局長のヘンリエッタ・フォアは、第31回Martin J. Forman記念講演会において、「食料システムとユース:私が若者たちから学んだこと、自分たちを取り巻く食料システムを直したいという若者たちの望み」を主題にスピーチを行いました。本講演会は毎年、世界の栄養問題への取り組みに貢献している人々を講師として招き、栄養分野に関する主要な問題についてディスカッションを行っています。フォア事務局長のスピーチは以下の通りです。* * *本日は、食料システムと若者についてのディスカッションに参加することができ、大変嬉しく思っています。ユニセフ事務局長の務めの中で光栄だと感じることの一つは、世界中の子どもや若者たちと出会い、話を聞く機会が持てることです。この4年間、私は、厳しい状況や人道危機の中で生活している子どもや若者たちと話をして、将来に向けて抱いている望みを直接聞くことができました。チームメイトと夜ご飯を食べる女子サッカー選手たち。(バングラデシュ、2021年6月撮影) © UNICEF_UN0482177_Satu
子どもや若者たちはまた、世界の状況や気候変動、紛争、貧困、教育や雇用への障壁といった、私たちの前に立ちはだかる大きな課題への懸念も示しています。本日は、子どもや若者たちが、食料や食品、食事について語ってくれたことを皆さんと共有したいと思います。どんな食事をどのようにとっているのか、どのような食環境で暮らしているのか、また、彼らが望む、栄養価が高く安全で手頃な価格の持続可能な食生活を手に入れるために直面している課題について、いくつか考察してみたいと思います。また、子どもや若者がこうした課題にどのように対応しているか、そして、食料と栄養に関する権利をすべての人に実現するための、食料システム変革のアイデアについてもお話しします。最後に、現在、そして2030年に向けて、子どもたちを食料システム変革の中心に据えるとはどういうことなのかをご説明します。■ 食事や食料システムについて、子どもたちの声を聞く首都ジャカルタにある屋台のジャンクフード。(インドネシア、2021年4月撮影) © UNICEF_UN0459363_Wilander
では、子どもや若者は、自分たちの食事について何を語っているのでしょうか。今年の9月、国連は食料システムサミットを開催しました。サミット開催までの2年間に、世界各地のユニセフ事務所とウェスタンシドニー大学のスタッフが、25カ国で1,500人以上の子どもや若者と会ってきました。また、2万人以上の若者たちを対象とした世論調査を行いました。彼らが口にしている食事、彼らを取り巻く食料システム、そしてそのシステムがどのように変わればより良いと感じているのか、子どもたち自身の経験を聞きたくてそうした調査を実施したのですが、どのような話を聞いたと思いますか?友人や家族と一緒に食事をすることで、喜びやつながりを感じることができると、子どもや若者たちは話してくれました。また、食事は自分の個性や文化を反映するものであり、コミュニティや人類共通を象徴するものでもある、と考えているそうです。また、栄養価の高い食事が、成長、発達、学習のためには必要不可欠な要素であることも認識していました。健康的な食事は、心身ともに健康な暮らし、学業の成功、そして将来のために重要であると話していました。しかし、彼らが食べたいものと、実際に食べているものの間には、大きな差があるのです。■ 栄養価の高い食料が入手できないアンドロイ地域では、干ばつや砂嵐の影響で農業に大きな打撃を受けた。500gのお米と大量の水を家族12人で分け合っている。(マダガスカル、2021年1月撮影) © UNICEF_UN0406721_Andrianantenaina
食料生産と、家庭や地域における食料の入手可能性との間には関連があることを、子どもや若者たちは理解しています。また、彼らを取り巻く食環境の中で、農産物がどこでどのように栽培、加工、包装され、さまざまな場所に運ばれていくのかを、子どもや若者たちはしっかりと理解していることを、彼らとの対話を通して私たちは認識しました。栄養価の高い食料を入手し難い、あるいは入手できないという状況は、多くの要因が絡んでいることも理解しています。たとえば、市場の在庫が少ない、農村地域から遠く離れている、流通の問題などです。また、インフラや道路が整備されていないこと、輸送にかかるコストが高いことなどの問題によって、食料がコミュニティに届かなかったり、届く前に腐ってしまったりする事例についても話してくれました。栄養価の高い安全な食料が入手し難い、あるいは入手できないことによって、いかに健康的な食事ができなくなってしまうかを、子どもたちは具体的に語りました。また、食料が手に入らないということは、家族にとって何を意味するのかを十分に理解しています。子どもたちは、栄養価の高い食料が高価な場合、加工食品に頼ることが多いといいます。塩分、糖分、脂肪分が多く、健康に良くないことは分かっていますが、安価で手に入りやすいのです。こうした食品が、テレビや広告、SNSを通じて、自分や家族に向けて盛んに売り出されていることも知っています。■ 食料生産に影響を及ぼす、さまざまな課題首都ブジュンブラ近くの国内避難民キャンプで、野菜を売る親子。(ブルンジ、2021年3月撮影) © UNICEF_UN0441879_Prinsloo
世界中の子どもたちは、気候変動についても強く意識しています。自分たちを取り巻く食料システムに被害が及んでいることを目の当たりにしています。対話の中で、多くの子どもたちが、地球温暖化、環境破壊、大気汚染を重要な問題として挙げました。また、気候変動や地球温暖化が干ばつを引き起こし、食料生産に影響を与えていることも認識しています。持続可能ではない手法の食料生産が、環境の悪化に大きな影響を与えていることを知っています。一つの例として、殺虫剤の使用がよく挙げられます。また、ボート、船、列車、飛行機などを使った食料の輸送、特に長距離輸送が、大気汚染や水質汚染の原因になっていることを懸念しています。子どもたちは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが、こうした状況を悪化させ、特に、何百万もの家族が日々の生活のやりくりで苦労していることに気付いています。また、子どもたちは、自身の体型への不満、自尊心の低さ、肥満体型に対する差別や偏見など、不健康な食環境に関連するメンタルヘルスの課題についても話してくれました。彼らは、社会が過体重に対して不当に非難する一方で、健康的な体重を維持することが困難になるような不健康な食環境を作り出していることを理解しています。また、広告主やマーケティング担当者が達成不可能な美の基準を押し付ける一方で、彼らを取り巻く食環境には不健康な食品や飲料の宣伝が溢れていることにも気付いています。■ 食料システムの改善に向けて母親と昼食の準備をする12歳のマイコさん。(ウガンダ、2021年9月撮影) © UNICEF_UN0540307_Kabuye
さて、子どもや若者は、地域や世界の食料システムを一体どのように変えていきたいのかをこれからご紹介したいと思います。子どもたちは崩壊した食料システムに懸念を抱く一方、期待と要求は明確なのです。各国政府や政策立案者には、子どもや若者たちの栄養への権利を守り、栄養価の高い、安全で手頃な価格の持続可能な食生活を、どこで暮らしていても実現できる食料システムを、より責任を持って構築・促進して欲しいと思っています。また、各国政府はコミュニティ全体の能力を高め、栄養価の高い食品を生産する人々を支援するべきだと考えています。子どもたちのための食料システムの再構築は、最も厳しい状況にある子どもたちや家族、コミュニティから始めなければならないと感じており、最も生活が不安定で取り残されている人々に対して、特別な配慮を求めています。■ 子どもや若者が提案する5つの具体策食料システムを立て直し、地球を守るために何をすべきか、子どもたちが対話の中で提案した、5つの具体策は下記の通りです。■ 子どもや若者の参画のためにラージャスターン州で、家族の健康のために野菜を栽培し、収穫する17歳のカムラさん。(インド、2020年12月撮影) © UNICEF_UN0388632_Panjwani
最後の「参画」が特に重要です。なぜなら、子どもや若者の参画によってのみ、彼らを食料システム変革の中心に据えることができるからです。彼らは、解決策を見つけ出し、それに貢献することができる変革の担い手として、力を与えられるべきなのです。私たちは、どのようにすれば子どもや若者が食料システム変革に参加し貢献できるのかを、彼ら自身に尋ねました。彼らの洞察力や考え方が聞き入れられ、認められ、行動に移すことができるようにするためです。その結果、次のような意見が寄せられました。こうした提案を支援するためのインフラが重要です。首都エレバンにある自宅の中庭で、家族と夕食を食べる16歳のハスミクさん(右)。(アルメニア、2020年8月撮影) © UNICEF_UNI363732_Babajanyan_VII Photo
子どもや若者たちには、自分たちの意見を表明するためのプラットフォーム、空間や場所、道筋が必要です。また、子どもが主導する組織、議会や公開フォーラムなどへの参加を通じて、自分たちのアイデアを現実にできる人々、つまり権力をもつ人々と直接対話する機会も必要です。この講演会に集っている私たちの多くは、栄養を専門とする組織や機関を代表しています。私たちもまた、子どもや若者を、政策立案やプログラムの設計・実施・モニタリングの中心に据え、有意義な参加を促進しなければなりません。今年9月に開催された国連食料システムサミットには、子どもや若者も参加しました。食料システム変革において必要不可欠であるクリエイターやパートナー、協力者として彼らを参加させるには、いくつか難しい点がありましたが、最も重要なことは、その成果を実感できたことです。私たちはこうした努力を続けなければなりません。食料システムサミットの成果と成長のための栄養サミットのコミットメントを支援するために、私たちは、子どもたちの声を意思決定プロセスの最前線に届けるという誓いを固く守っていかなければなりません。それと同時に、民間セクターのパートナーシップおよびリーダーシップも必要です。民間セクターは、食料システムを強化するための革新的なソリューションを開発できる特有の立場にあり、誰であるか、どこに住んでいるかに関係なくすべての子どもたちに栄養価の高い、安全で手頃な価格の食品が提供される世界を築くために貢献しています。両親のために作ったお米とヌードルを昼食に準備する13歳のマルダリータさん。(エクアドル、2021年7月撮影) © UNICEF_UN0512451_Vega
崩壊した食料システムは、今この瞬間も、栄養に関する子どもたちの権利と、地球をゆっくりと傷付けています。特に、COVID-19のパンデミックの影響によって、この問題を解決することは、私たちの世代にとっての最大の課題になるかもしれません。■ 子どもや若者のための食料システム変革を食料システムに関する今後の取り組みとして、ユニセフが特に注目していきたい4つの重要な活動分野は下記の通りです。今こそ、子どもや若者と協力して、世界の食料生産、食料消費、そして食品や食事に対する考え方を変革する時です。子どもや若者たちの栄養と健康、そして地球の未来がかかっているのです。もう、一刻の猶予もありません。* * *■ ユニセフについてユニセフ(UNICEF:国際連合児童基金)は、すべての子どもの権利と健やかな成長を促進するために活動する国連機関です。現在約190の国と地域※で、多くのパートナーと協力し、その理念を様々な形で具体的な行動に移しています。特に、最も困難な立場にある子どもたちへの支援に重点を置きながら、世界中のあらゆる場所で、すべての子どもたちのために活動しています。 https://www.unicef.or.jp/※ ユニセフ国内委員会(ユニセフ協会)が活動する33の国と地域を含みます※ ユニセフの活動資金は、すべて個人や企業・団体からの募金や各国政府からの任意拠出金で支えられています■ 日本ユニセフ協会について公益財団法人 日本ユニセフ協会は、先進工業国33の国と地域にあるユニセフ国内委員会のひとつで、日本国内において民間として唯一ユニセフを代表する組織として、ユニセフ活動の広報、募金活動、政策提言(アドボカシー)を担っています。 https://www.unicef.or.jp/このプレスリリースには、メディア関係者向けの情報があります。
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