ファーウェイの折りたたみスマホ「Mate X」ハンズオン:革命的と言えるが、疑問も多い
すごいけど怪しさも漂う、そんな感じ。
米GizmodoのSam Rutherfordがファーウェイの折りたたみスマ−トフォン「HUAWEI Mate X」に実際に触れることができたようです。その感想を翻訳して紹介します。シンプルにワクワクすると言い切れていないのは、その真価を理解できていないからなのか、それともまた別な理由からなのか。私たちにその判断ができるのは6月の発売後、ということになりそうです。
今やテックに少しも関心がない人でもファーウェイの折りたたみスマホ「HUAWEI Mate X」の名前を耳にしたことがあるでしょう。Mate Xは信じられないほど高価ですが、Samsung(サムスン)の折りたたみスマホ「Galaxy Fold」が浴びていた注目をいくらかかっさらいもしました。
Mate Xは折りたたみスマホ懐疑論者を信者に変えうるだけのプロダクトでさえあります(私がそうなったわけじゃないですよ、折りたたみディスプレイ技術について、私はいつも楽観的です)。折りたたみスクリーンはノッチのようなものではありません。全画面スクリーンスマホのような大きなゴールを達成するためのマイルストーンというわけではないのです。折りたたみディスプレイはガジェット、とりわけウェアラブルやスマートフォンの作り方やデザインを変える力を持っているのです。
しかし、洗練の余地のある第1世代の技術であるにも関わらず、Mate Xとの対面は考えていた以上に魅惑的でした。
約29万円のスマートフォン
ディープに見ていく前に、Mate Xの価格が無視できない点であることは書いておかねばなりません。価格は2300ユーロ(約29万2000円)とひどく高価で、Mate 20 ProやGalaxy S10のようなハイエンドスマホに比べても150%増しというプレミアムプライス。まぁ新たなテクノロジーはお高いものです。モトローラが出した世界初の携帯電話「DynaTac」は4000ドル(インフレを考慮せずとも約45万円!)しました。折りたたみディスプレイ技術も最初は高価でしょうが、もし受け入れられるなら、より手頃な価格になっていくでしょう。
しっかりとした折りたたみ機構
ヒンジがあって折りたためるデザインから受けるイメージに反して、Mate Xを持った瞬間、ずいぶんしっかりした印象を受けました。こうした安定感はMate Xの非対称な構造によるものです。
端末の右側にはバー状の構造があり、そこにUSB-Cポートなどのスマートフォンにとって重要な要素のほとんどがまとめられているのですが、これはグリップ(持ち手)としても機能します。グリップだけでMate Xを持って揺すっても、スクリーンが動き回ることはありません。
また、ヒンジと反対方向にも折り曲げられます(言われなきゃやらないでしょうが)。
やり方としては古風ですが、Mate Xはボタン開閉式になっていて、しっかりと折りたたんでおけるようになっています。ボタンはリアカメラの下にあって、それを押せばMate Xが開くって寸法です。折りたたんで閉じると、それとはっきりわかる音がします。
開閉しながらでも美しい画面表示
ファーウェイはソフトウェアの開発にも注力していて、カメラアプリを使うにしろ、ネットサーフィンをするにしろ、カレンダーをチェックするにしろ、ハーフスクリーンモードからフルスクリーンモードへの移行はスムーズです。Royole FlexPaiにあった不安感や移行時の画面表示の乱れなどはありませんでした。
折りたたみ状態でのMate Xは、通常のスマートフォンと似たような感じです。ディスプレイ背後の洗練されたパネルのお陰で、Nintendo 3DSのディスプレイにあったようなスクリーンのぐにゃぐにゃ感はありません。折ったときのスクリーンのカーブの仕方も滑らかで、現代のスマートフォンの丸みを帯びた立体ガラスディスプレイから受けるのと同じ印象を受けます。
スクリーンそのものもすばらしいものです。色合いは豊かで鮮やか。タブレットで写真を撮る人やあまり視力がよくない人にとっては、撮った写真を8インチのフルスクリーンモードで見るのは楽しいことでしょう。2画面スマホ「ZTE Axon M」のような製品に感じた「第一世代ならではのフラストレーション」はそこにはありませんでした。
耐久性にまつわる3つの謎
しかし、ファーウェイには答えるべき重要な疑問が残っています。すなわち、このディスプレイの長期的な耐久性です。Samsungが折りたたみディスプレイ「Infinity Flex」を2018年11月にもったいぶって見せたときに、同社はフレキシブルな有機EL層と回路基板、超極薄の偏光板や新しい接着剤を生み出すために必要だった仕事を強調しました。そして、これらのおかげでSamsungの折りたたみスマホは数千回の折り曲げができると。
1. Mate Xのスクリーンを供給してる会社はどこなんだ?
ファーウェイもMate Xについて似たような主張をしていますが、そのスクリーンがどのように作られたかについてはSamsungほど詳しくは明かしていません。サプライヤーがどこなのかすらわかっていないのです。私がファーウェイに尋ねてみても、広報担当者は「スクリーンの供給元の名前を明かすことはできない」と言うだけでした。しかし、世界を見渡してみてもフレキシブルなスクリーンを作れる会社は一握りであり、SamsungがMate Xのスクリーンを作っている可能性は低いでしょうから、LGやTCLのような会社が数少ない候補として残ります。
その一方で、Samsungが直接的に関わっていないにしても、Mate XとGalaxy Foldのスクリーンが同じ基盤技術に基づいて作られていると考えることはできなくもありません。2018年後半、Samsungのサプライヤーが折りたたみスクリーン技術を盗んで中国のディスプレイメーカーに売ったということで捕まり、訴えられたことがありました。このサプライヤーの取引相手はファーウェイに部品を供給していることで知られる「BOE」だというウワサがいくつか流れたのです。
折りたたみスクリーン技術の起源がわからないことは、耐久性を気にする人が心配するところでしょう。
2. シワがある個体も
ハンズオンの中でも疑問を抱かせるような点がありました。ファーウェイはごく限られた数のMate Xを展示していたのですが、その中にはスクリーンの中央に不審なシワがあるものがありました。これはMate Xの耐久性に関するファーウェイの主張をいぶかしませるものでした。
とはいえ、シワ自体は取るに足らない問題です。真正面やそれに近い視野角で見る場合、シワは見えないでしょう。私が見たすべてのMate Xにシワがあったわけでもありません。ほかの個体よりも使われているように見える個体がいくつかあったので、驚くべきことではありませんが。
3. プラスチックが使われている
ほかに気になるのは、折りたたみディスプレイの表面保護層にガラスの代わりにプラスチックが使われていることでしょうか。硬貨やカギのような、ここ数年間スマートフォンディスプレイへの脅威とはなっていなかった物体からのダメージを軽減するためです。Mate XやGalaxy Foldが実際に使われるようになるまで、折りたたみスマートフォンがどれだけタフなのかはわからないでしょう。
疑問はありつつも革命的
Apparently, Huawei's legal team doesn't check "fastest 5G" claims. Sub6 5G only gets to 2.6Gbps and mmWave 5gbps max. The Samsung Galaxy S10 on Verizon will likely be up to 2X faster than this sub6 device. Let the BS fly. #MWC19pic.twitter.com/i2aSxv8uK1
— Patrick Moorhead (@PatrickMoorhead) 2019年2月24日小さな心配事としては、Sub-6GHzネットワーク上で下り4.6GbpsというMate Xの5G通信速度に関するファーウェイの主張に物言いがついていることが挙げられます。それが本当ならQualcommの5Gモデムの最大下り速度の2倍出るということになります。しかし、アナリストのPatrick MoorheadはTwitterで、ミリ波を使う5G通信だけがそうした高速に達しうると指摘しています。
そうした疑問があってさえ、ファーウェイがMate XによってMWCで披露したものは革命的です。3D TVやレーザーディスクとは異なり、曲がるスクリーンは一過性の流行では終わらない、私はそう確信しています。折りたたみガジェットが実際に買える価格になるまでに問題の多くが解決されることを望みます。
HUAWEI Mate Xは2019年6月発売予定。SamsungがGalaxy Foldをリリースした2カ月後ということになります。