3000万円のスカイラインGT-Rに1000万円のRX-7! 国産スポーツカーの中古価格爆上げは「バブル」でこの先下がる可能性も
相場は需要と供給のバランスによって大きく変動する
上がり続けることは資本主義経済の仕組みからしてあり得な
中古車情報サイトで「スカイラインGT-R」を検索、値段の高い順でソートすると、最高価格帯は3000万円になっている。たしかに20年前のクルマとは思えないコンディションで、走行距離も1万km以下となれば、希少価値があるのは間違いないが、新車価格がせいぜい600万円の国産車が3000万円のプライスボードを掲げているのは、にわかには信じがたい状況だ。同時代の国産スポーツカーでいえば、マツダRX-7も最終型で程度が良好であれば1000万円に届きそうなプライスとなっていることも珍しくない。【写真】1000万円に届きそうなRX-7のフロントスタイリング! このように平成の名車といえる国産スポーツカーの中古車が新車時を超えるプレミア価格となっているのは、ひとえに「それでも欲しい」というユーザーがいるからだ。たしかに、これからは電動化に進むのは確実という状況で、純エンジンのスポーツカーは消滅する方向で、この時代の国産スポーツカー特有の乗り味は失われつつある。 しかし、どんなに希少であっても、そこに価値がつくかどうかは需要次第。いくらお金を積んでも欲しいという人が、“複数”存在していることが、こうした市場を作っている。 では、国産スポーツカーの中古車価格は上昇し続けるのだろうか。 単純に右肩上がりになるとは言い切れない。たとえば、バブル経済華やかなりし頃、日本に上陸したフェラーリF40は、いわゆるメーカー希望小売価格の5倍に相当する2億円を超える価格で取引されたという話もある。では、F40の価格はそれから上がり続けたのだろうか。 じつは、そんなことはない。10年以上前の相場を下げていた頃には新車時価格と同レベルで取引されていた時代もある。ここ数年、程度がよくヒストリーのしっかりした個体については2億円を超えることもあるが、スポーツカーにも人気の上下があり、需要と供給のバランスによって相場というのは意外に大きく変動するものだ。 国産スポーツカーの元祖的存在といえるトヨタ2000GTにしても、1億円が相場という印象もあるが、個体のコンディションや時期によってずっと安い価格で落札されていることもあったりする。旧車の相場は必ず右肩上がりになるとはいえない。 もちろん、こうした希少車の相場というのは専門業者が作っている部分もあるので、大きく崩れることはないが、いずれにしても「いくらでも金を出すから欲しい」というユーザーがいない限り、どこかに上限は出てくる。 とくに市場で流通している車両が数台レベルであれば体力のある専門業者が主に扱うので、高い価格を維持できるが、2000年前後の国産スポーツカーについては、まだまだ流通している台数も多い。 そうなると、体力的に高価格の商品を持ち続けることに耐えられない販売業者も出てくる。当たり前の話だが、中古車ビジネスは仕入れたクルマを売ることで初めて利益がでる商売だ。希少で高価な在庫を展示しているだけでは一銭にもならない。 つまり、ユーザーが支払えない、支払わないレベルまで相場が上がってしまうということは、資本主義経済の仕組みからしてあり得ない。はっきりいって、スカイラインGT-Rに3000万円というのはユーザーを選ぶ価格帯であり、それがずっと続くとは考えづらいのだ。 最近では、さほどクルマに興味がないような層に向けた経済コラムなどで「国産スポーツカーの中古は値落ちが少ないから投資として有効」だとか「アメリカの25年ルールによって本来は右ハンドルの国産スポーツカーが流出して価値を上げている。だから、もうすぐ25年になりそうなクルマを買えば損しない」といった情報を見かけることもある。 1929年の大恐慌の前触れを示す有名なエピソードに『靴磨きの少年』というものがある。投資する資産もないような靴磨きの少年が、熱心に株の話をしているのを見た投資家が「いまが株価の天井で、もうすぐ暴落するに違いない」と危機感を覚え、手持ちの株を売り払ったという話だ。 これ自体は都市伝説のようなものだが、クルマにさほど興味のない層までも国産スポーツカーの中古車が持つ価値を語るようになっているという状況は、まさに靴磨きの少年を思わせるもので、狂乱ともいえる国産スポーツカーの相場が落ち着く日はそう遠くないかもしれない。