車がドライバーを認識して命を守るーー車載センサーが自動運転時代を変える三つの方法
編集部注:寄稿してくれたGideonShmuel氏は、EyeSight TechnologiesのCEOで、コンピュータビジョンとジェスチャー認識技術の専門家である。
近い将来「ドライブ」が自動運転車のナビゲーターとして乗車することを意味する日が来ることは間違いない。自動車メーカーがエンドユーザーに向けた全自動運転車の準備開発を進める中、ドライバーに関連する機能への注目度も高まっている。
100パーセント自動で走り、しかも適正な価格で手に入る自動運転車が実際に道路上を走るようになるまではまだ10年、20年とかかることになる。この開発期間の間、半自動の自動運転車は自分のドライバーについてよりよく知る必要があるのだ。これはマシンラーニングと車内のコンピュータビジョンを使って簡単にできる。ドライバー自身が運転しているか、オートドライブモードで巡航中であるかににはかかわらず実際の運転には下記3つの領域での改良が必要になる。
自動運転車のレベルと洗練度が上がるにつれ、車の相乗り利用は新たな意味を持ち始める。ユーザーは、より環境にやさしく、乗らない時は車庫に入れっぱなしの車を持つという金銭コストを減らすためにも、車を共有し始めることになるだろう。このためドライバーのID認識の重要性とパーソナライズの利便性を重視した開発がなされるだろう。
コンピュータビジョン技術を使用した顔分析によって今、運転席に座っているのは相乗り登録者の誰であるかを判断できるのだ。さらに一歩進み、深層学習およびAIによって、車はドライバー自身の情報にアクセスできる。AIによってドライバーを認識すると、好みの車内温度、座席位置、サイドビューとリアビューミラー調整、車載システム、ラジオ音量などを、個々のドライバーに合わせてに自動的に調整することができる。
年齢や性別などドライバーのデータは、情報端末機能を持つコネクテッドカーや半自動の自動運転車に大きな役割を果たすことになる。車は今乗車中の人々に関連した対象コンテンツを提供することが可能だ。例えばAIは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)に乗員の顔ぶれに合わせて興味がありそうな場所(例えば、子供が乗っている場合近くの子供用レストラン)を提示する。また、車の乗員についてリアルタイムで分析することで、ラジオや音楽ストリーミングサービス(Spotify、Pandora、AppleMusicなど)に最も彼らが関心がありそうな広告を確実に表示させることができるようになる。
ドライバーの注意不足は事故原因のナンバー1であり、その中でも眠気は見逃してはならない原因の1つである。米国道交通安全局は少なくとも警察が発表する年10万件の事故の直接の原因はドライバーの疲労によるとしている。
この結果、死亡者は1550人、傷害のケースは7万1000人、金銭的損失は125億ドルと推定されている。虹彩(凝視状態)チェックで目が開いているかどうかを確認したり、瞬きの速度を計測、および頭ががくんと倒れたかどうかを追跡検出をするコンピュータビジョンを使った車載センサー技術ではドライバーが眠気を催しているか、または注意力散漫であるかをリアルタイムで判断することが可能だ。ハンドルの後ろで居眠りしているような場合、車は警報を鳴らしてドライバーを起こしたり、自律走行モードに切り替えたりしてドライバーの命そして同じ道路上の他の車の人々を事故から守ることができる。
このコンセプトはまったく新しいものではない。自動車メーカーは既に車内用ドライバー監視カメラを提供している。しかしカメラでは十分ではない。本当に役に立つシステムは、車に埋め込まれたコンピュータビジョンと深層学習ソフトウェアの組み合わせだ。この2つが運転中のドライバーの状態を検出し即時分析して運転者の目の動きに表れる以上のものを追跡し察知する。
またAIでは、そのドライバーの習慣や特徴をよりよく認識できる。ドライバーが普段からまばたきが多い場合、車は居眠り警告を出さないでむしろ自然な動作としてとらえる。また、もともと目が細い人も世の中には存在するので車はドライバーの顔分析中にこれを学習し、不必要な警告はしない。
車は誤った警告を送信することはしない。またドライバーの不注意と実際の眠気の違いを見分けることも同じく重要だ。頭の角度と目が一点を凝視しているかどうかを検出することで、ドライバーが運転に集中しているか注意力が散漫かどうかを判断して、携帯電話の使用、または居眠りにそれぞれ異った警報を出す。
今の複雑な車載システム操作はそれ自体でかなりなストレスになってしまう。タッチスクリーンディスプレイは画面がきれいでダッシュボードにコンパクトに収まってみえるが、ドライバーは複雑なメニューコマンドをタップすることに集中して、前方不注意になる。私たちの研究によれば、操作中は平均して5秒は道路を見ていない。時速90km弱で走行しているなら、目隠ししてサッカー場の端から端まで走るのと同じことになる。ドライバーにとっては、スクリーン操作の無いジェスチャーコントロールのように、より自然でややこしくない方法が必要だ。
日常合図に使っている簡単なジェスチャー(例えば、人差し指を唇に向けると静かに、という意味、右に手を振るとOK、左だとNOなど)は、ドライバーの負担を減らして注意散漫になるのを最小限に抑える。BMW社はすでに7シリーズでジェスチャーコントロールを実装しており、より使いやすい車載システムになっている。
テクノロジーによる車の機能の進歩はますます盛んになっている。しかし一方では不注意運転のケースも増加している。まさにこの記事を読んでいる方々もそのような運転をしている可能性が高いのである。全自動運転の自動運転車が市場に出るまでは車載センサー、コンピュータビジョン、AIなどの新技術によって不注意運転を回避し、安全運転を守りたいものだ。
【原文】
【via VentureBeat】 @VentureBeat
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