「LINEをやりたい」シニアに向けた格安SIMとスマホの選び方 - 古田雄介の家電トレンド通信
総務省の平成29年通信利用動向調査によると、70代のシニアがネットに接続する端末として、パソコン(63.7%)に次いで選ばれているのは、携帯電話(32.1%)を抜いてスマホ(37.0%)となっています。60代ではパソコン(66.8%)とスマホ(54.8%)が肉薄し、携帯電話(21.2%)を大きく引き離しています。いまや、シニアにとっても手元でネットにつなぐファーストチョイスの道具はスマホとなっているわけです。
その一方で、不必要に豪華な契約プランやオプションを付けて利用している高齢者が少なくないのも事実です。本人がきちんと内容を理解したうえで取捨選択して適正な契約に落とし込むのが最善ですが、知識がなく自身での判断や解決が難しい場合は、デジタルに詳しい子世代が手助けするのが確実といえます。
そこで今回は、親のスマホのケアをする子世代の視点に立って、健全なプランで契約するコツを探ってみたいと思います。シニア世代に多い「LINEやネットをやる程度」のライトな使い方だとすると、どんなプランがベターで、現在の契約はどうやって見直せばよいでしょうか?
取材に協力してくれたのは、ビックカメラ有楽町店。携帯電話コーナーで主任を務める大墨拓巳氏は、最近のトレンドについて「最近は機種変更の際の大幅な端末割引が見込めなくなったこともあって、格安SIMに切り替えてベースの月額料金を抑えようという人が増えています」といいます。
通信契約は内容やルールの変更が頻繁にあるので、数年前の最善が現在は通用しないということがしばしばあるとのこと。最新のコツを5箇条にして教えてもらいました。
第1条:ライトな利用ならミニマムな格安SIMに注目を
ライトユースで新たに通信契約を結ぶなら、お勧めは「格安SIM」+「SIMフリースマホ」の組み合わせとのことです。格安SIMは、通話機能がないタイプなら月額1,000円以下から選べ、追加オプションなども付けずに使えるので、毎月の料金変動が少なく支払いが管理しやすい強みがあります。
ビックカメラがIIJと提供している「BIC SIM」の場合、お勧めなのは月間3GBが使えるSMS付きのミニマムプランとのこと。NTTドコモの回線を使う月額1,144円の格安SIMは3,280円で購入できます(税込み、以下同)。
「SMSなしでもう少し安いプランもありますが、LINEの契約にはSMSが必須なのが要注意ポイント。家族でライトに使うという方には、こちらが良いと思います。容量は、LINEとネットをたまに使うというスタイルなら3GBで十分ですね。BIC SIMなら、カードにトラブルがあったときも全国のBIC SIMカウンターで再発行できるので、サポート面でも安心感が強いですよ」
第2条:緊急時の安心を求めるなら電話機能付きを
電話機能が付いていないSIMでも、LINE電話などの無料通話アプリを使えば普段の音声通話は差し支えありません。ですが、LINEに対応していない携帯電話(ガラケー)を使っている知人などとの連絡を考慮し、月額料金が多少上がっても電話機能付きの格安SIMを条件にする人も多いそうです。
BIC SIMの場合、電話機能付きのミニマムプラン(3GB)は月額1,760円で、電話機能なしのプランと比べると月々の料金は600円ちょっと上がります。SIMカードの販売価格は3,280円で、こちらは電話機能なしと同じになります。
「電話機能があると、万が一のときに緊急連絡をかけるのに障壁がなくなるのが大きいです。ご高齢の親御さんがお使いになるということで、そこを重視する方は珍しくないですね」
第3条:端末は5年使うことを想定して選ぼう
格安SIMとともに購入するSIMフリー端末で重要なのは「長持ちする端末を選ぶ」のがひとつのコツです。
総務省が2019年4月に発表した消費動向調査の「主要耐久消費財の買替え状況」によると、携帯電話の買い替えスパンは29歳以下は2.6年と短めですが、60代は4.7年、70歳以上は5.8年と、年代が高くなるごとに同じ端末を長く使う傾向があります。購入したあとに慣れ親しんだ端末を使い続けるためにも、ざっと5年先までを視野に入れて選ぶのがよさそうです。
また、子や配偶者など、サポートする側にとっても使いやすい機種を選ぶと、何かあったときにスムーズにケアできるメリットもあるといいます。
「バッテリーの持ちやサポート体制などを見て判断するといいかもしれません。当店では国内メーカーということもあり、シャープの端末がよく選ばれています」
同店で人気になっていたのは、幅広い世代に支持されているというシャープのSIMフリー端末「AQUOS sense3 SH-M12」。バッテリーも大容量で、サポートの厚さも評価されているとのことです。取材時の価格は3万8280円でした。
第4条:現在のプランは契約とサブスク両面でチェックを
現在契約している大手キャリアなどのプランを見直すには、契約時の書類やキャリアのアプリで確認するのが確実です。また、あとから追加したApple IDやGoogleアカウントの定額サービスは、iPhoneなら「設定」-「ユーザー名」-「サブスクリプション」、Android端末なら「Google Play」のメニューから「定期購入」から確認できます。引き落とし先のクレジットカードなどの明細を調べるのも有効でしょう。
ただ、内容が煩雑でよく分からないという場合は、家電量販店に端末を持ち込んで相談する手もあります。「それぞれのキャリアカウンターがあるので、契約者様ご本人であれば、端末と身分証明書、新規の引き落とし先にされるクレジットカードがあれば対応可能です」
同店の場合、平日の午前中や14~16時ごろは比較的空いているとのことなので、じっくりと相談したいときはこうしたオフピークを狙うのが良さそうです。
第5条:子が契約者になるスタイルを選ぶ人もいる
契約見直しのとき、スマホや通信契約に不慣れなシニアの契約者ひとりでは最終的な判断に不安を持つことも多く、同店でも親子で来店するケースは少なくないそうです。さらには、契約者の名義を親御さんではなく子に集約するというスタイルに切り替える人も珍しくないとか。
「『僕の契約だけど使ってよ』というふうに渡される方もいらっしゃいます。子と親でキャリアが異なるなど、契約が複雑になるとサポートするご家族も混乱してしまうので、いっそ自分のものと含めて一本化してしまったほうが楽だと判断されることもあるんですよね」
いずれの方法を選ぶにしろ、まずやるべきは現状把握に尽きます。スマホを使っている人やサポートする側がプランや使い方を分かっていないと先に進めません。料金への不満や不安を感じているならば、頃合いをみて話し合ってみてはいかがでしょうか。