「安かろう悪かろう」だった中国製 いつの間に日本は席巻されたのか
中国製といえば、かつては「安かろう悪かろう」のイメージだった。いまは性能や品質が向上し、ITや電気自動車(EV)などの成長分野に浸透する。中国に負けじと日本政府も国内メーカーの支援に乗り出すが、「メイド・イン・ジャパン」の復活は簡単ではない。
中国第一汽車集団の高級ブランド「紅旗(ホンチー)」の販売店が19日、大阪市にできた。運営会社(兵庫県尼崎市)が紅旗ブランドのPR拠点にする。販売台数などの具体的な目標はないという。
「しっかりした走りでデザインもいい」と式典に参加した購入者は語る。来年には中国メーカーが得意とするEVも投入する。SUVの「E―HS9」は1回の充電で460~690キロ走行可能で、価格は税抜き1100万円からの予定だ。
中国は日米欧のメーカーと合弁で自動車工場をつくり、技術を吸収してきた。エンジンに関する技術は遅れていたが、EVに一気にシフトすることで競争力を高めようとしている。
海外への輸出も増やしている。中国自動車工業協会によると、今年1~11月の自動車の輸出台数は約180万台で前年同期の約2倍。輸出先はアフリカや中東などの発展途上国に加え、温暖化対策を重視する欧州にも広がる。EV大手の比亜迪(BYD)はノルウェーに輸出を始めた。新興EVメーカーの蔚来汽車(NIO)もノルウェー進出を5月に発表した。走行距離などの性能で、日米欧のEVを上回るものも登場している。
日本にはEVの商用車を輸出している。BYDは12月1日時点で、累計55台のEVバスを日本に納入した。2030年に4千台の販売をめざす。物流会社でも中国製のEVトラックが導入され始めている。
EVは構造がシンプルで部品数が減り、車が「家電化」するとも言われる。テレビなどの家電の分野では中国製品が席巻している。
国内初のカラーテレビを開発した東芝は、テレビ事業を中国家電大手の海信集団(ハイセンスグループ)に18年に売却した。いまはハイセンス側が95%、東芝が5%を出資する「TVS REGZA」が、レグザブランドで生産・販売している。ハイセンスは自社ブランドも日本国内で売り出しており、東芝が培った画像処理の技術などを取り込んでシェアを伸ばす。
パナソニックも、中国家電大手のTCL集団などに低価格帯のテレビ生産を委託する見通しだ。
かつて日本の家電は高品質が評価され、世界中で売れていた。中韓メーカーにシェアを奪われ、国内電機メーカーの収益は悪化。事業ごと中国企業などに売る動きが相次ぐ。
パソコンでは世界最大手の中国の聯想集団(レノボ・グループ)が、国内大手2社の事業を傘下に収めている。NECと11年に合弁会社を設立し、レノボ側が株式の3分の2を保有する。富士通のパソコン子会社も18年に事実上買収した。NECや富士通のブランド名は残るが、製造しているのはレノボが出資する企業だ。
冷蔵庫や洗濯機といった白物家電でも中国メーカーが世界的に主導権を握る。
中国製品はスマホでも世界シェアを伸ばす。日本も中国からの輸入品のトップはスマホや携帯電話などの通信機だ。MM総研の調べによると、日本の21年度上期のスマホ出荷台数でOPPOが韓国サムスン電子に次ぐ5位となった。MM総研の担当者は「カメラの性能などで中国メーカーのコストパフォーマンスが良いものもあり、消費者に評価されているのではないか」と話す。(神山純一、鈴木康朗)
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