中国の「柔軟な就業」は2億人 多様なワークスタイルの実現か、実質的な半失業状態か 中国の「996 問題」とは?労働問題から見える遠ざかるチャイナドリーム アメリカで起こりつつある”働き方改革” >~ 急成長するフリーランス社会とは? ~ ギグエコノミーとは? >新しいワークスタイルから見える課題や日本への影響
中国政府が最近発表した「国内の“柔軟な就業”が2億人を超えた」という統計の数字が議論を呼んでいる。
「柔軟な就業(中国語は「灵活就业」、英文表記はFlexible Employment)とは、公的機関や企業などの固定した組織に雇用されて給料をもらうのではなく、個人として自らの力で所得を稼いでいる人たちの総称だ。そこには最近、注目を集めている中国版ユーチューバーやフードデリバリーの配達員などITの進化で生まれた新しい職種のほか、伝統的な個人営業の商店主や各種の職人仕事、短期アルバイトを主な収入源としている、いわゆるフリーターのような働き方も含む。
この話題の何が「議論を呼んだ」のかといえば、この「柔軟な就業」の増加を政府が前向きに評価し、さらに積極的に推進したいとの意図が明らかにあるからだ。
どこの国でもそうであるように、雇用の創出は政府の最も重要な仕事のひとつである。膨大な人口を抱える中国にとってはなおのことだ。中国政府もこれまで、雇用の創出を重要なテーマとして掲げてきた。
それが、ここへきて「柔軟な就業」を打ち出すのはなぜか。国民がひっかかったのはここだ。「柔軟な」といえば聞こえはいいが、それは安定した職に就けないから、「柔軟にならざるを得ない」人が大半ではないのか。仮にやりたくもない仕事を仕方なくやっているのなら、それは実質的には半失業状態ではないのか――というわけだ。うがった見方をすれば、経済が下降線で雇用創出が難航し、対応に苦慮した政府が「自らの食いぶちは自ら解決せよ」とのメッセージを国民に出し始めたと見えなくもない。
中国の「柔軟な就業2億人」は、果たして新しい多様なワークスタイルの実現なのか、それとも事実上の半失業状態なのか。今回はそんな視点で考えてみたい。