遠くから「電球を観察」するだけで盗聴が可能に:イスラエルの研究チームが実験に成功
以上のような補足事項に関係なく、スタンフォード大学のコンピューターサイエンティストで暗号学者のダン・ボネは、この盗聴手法は意図しない情報漏えいを利用して秘密を盗むサイドチャネル攻撃の新たな形式で、実用化の可能性がある重要なものだと主張する。
ボネは、「サイドチャネル攻撃の見事な応用です」と言う。「吊り下げ式の電球と大音量が必要だとしても、非常に興味深いものです。そして、この方法が可能であることが示されたのは初めてのことです。攻撃は高度化し続けるばかりで、将来の研究でこの手法は徐々に改良されるでしょう」
リアルタイムの盗聴を可能に
ネゲヴ・ベン=グリオン大学のユヴァル・エロヴィッチと、広く利用されているRSA暗号の共同開発者であるアディ・シャミアが助言を与えたこのLamphoneの開発チームは、予期せぬ音響現象が盗聴を可能にすることを最初に示した研究チームではない。
研究者の間では長年、レーザー光線を窓に当てて跳ね返らせることで、スパイが室内の音を傍受できることは知られていた。2014年には別の研究者グループが、ハッキングされたスマートフォンのジャイロスコープを使い、マルウェアがスマートフォンのマイクにアクセスできない場合でも音声を傍受できることを示している。
Lamphoneに最も類似した過去の手法は、マサチューセッツ工科大学、マイクロソフト、およびアドビの研究者が2014年に共同開発した「ヴィジュアルマイクロフォン」だ。例えばポテトチップの袋や観葉植物など、振動に反応する室内の物体を望遠鏡を使って記録した映像を分析することで、研究者らは音声と音楽を再現することができた。
映像を用いる手法は、室内の電球が見えている必要がないことから、用途が非常に幅広い。だが、録画後にソフトウェアを使って映像を分析し、物体上で観察された微妙な振動を音声に変換する必要があると、ナッシは指摘する。
それとは対照的に、Lamphoneはリアルタイムの盗聴を可能にする。振動する物体自体が光源なので、電子光学センサーは振動を非常に単純な視覚データとして検出できるのだ。
盗聴の簡単な予防法
その点でLamphoneは、これまでの技術と比べて諜報活動で実用化される可能性がはるかに高いと、ナッシは主張する。「実際にリアルタイムで使用すれば、チャンスを逃すことなく即座に対応できます」
それでもナッシは、研究チームがこの研究結果を発表しているのは、スパイや法執行機関が利用できるようにするためではなく、監視活動をする側とされる側に何が可能なのか明らかにするためだと言う。「わたしたちはこの種の攻撃手段の認識を高めたいと思っています」とナッシは言う。「ツールの提供には関与していません」
この手法のターゲットとなる可能性は低いし、簡単に予防することもできる。ぶら下がっている電球をすべて覆って隠すか、カーテンを閉じれば済むことだ。
この種のスパイゲームを心配するほど疑心暗鬼の人は、すでにレーザーマイクによる盗聴を防ぐために窓に防振装置を設置したり、自宅で盗聴器を探し出して一掃したりしているだろう。そして携帯電話やコンピューターからは、マイクを取り外しているに違いない。電球からでも盗聴される時代だけに、疑いだしたらきりがないのである。
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TEXT BY ANDY GREENBERG