メガネ屋さんのスマートグラス「JINS MEME」でカラダとココロの健康をのぞく
斬新なメガネ型ヘルスケアデバイスとして誕生した第2世代の「JINS MEME」
さすがJINS! 見た目は普通のメガネと変わらないスマートグラス
スマートグラスといえば、メガネのレンズ部分にエンターテインメントのコンテンツを映して視聴したり、ペアリングしているスマホに届いた情報を表示したりする「ウェアラブルディスプレイ」的な使い方を提案する製品があります。JINS MEMEは、身に着けているユーザーの「ココロとカラダの状態」をリアルタイムに知らせてくれるという、ヘルスケア用途がメインのスマートデバイスです。
筆者は以前、あるメーカーが発売したシースルータイプのスマートグラスを装着してAR対応のモバイルゲームを遊んでみました。個人の感覚でいうと、ディスプレイに表示されるコンテンツに視界をふさがれたり、コンテンツに集中すると周囲の様子に目を向けられなくなったりします。家の中で腰を据えてVRコンテンツを楽しむにはアリだと思いますが、「ながら使い」は難しいと感じました。また、映像の画質や駆動時間をそれなりに確保しようとすると、スマートグラスのサイズも大きくなりがちです。
一方で新しいJINS MEMEは、既存のスマートグラスから視点を変えてヘルスケアに着目したことや、2015年発売の初代モデルからコンセプトを継承しつつデザインをブラッシュアップして、メガネと変わらないルックスに仕上げてきたところに面白さがあります。
度付きのレンズを入れても19,800円という、ちょっと試してみたくなる価格であることも魅力的。スタンダードなメガネタイプのフレームは4種類・2色、サングラスタイプは2種類・2色のバリエーションから選べます。
JINS MEMEを特徴付けるふたつの大事なセンサー
JINS MEMEのスマートテクノロジーは、鼻当ての部分にある「CORE(コア)」に集約されています。COREにはユーザーの「体の動き」を検知する6軸モーションセンサー(3軸加速度・3軸ジャイロ)と、JINSが特許を取得している「目の動き」を追う3点式眼電位センサー、バッテリーや通信に必要なモジュールが組み込まれています。
3点式眼電位センサーは「まばたきの強さと速度」「まばたきの間隔」「眼球が動く速さ」を検出して、ユーザーの脳の働きを測定、独自のアルゴリズムで分析します。センサーが取得したユーザーの生体情報は、Bluetoothでペアリングしたスマホのモバイルアプリ「JINS MEME App」に集まり、数値やグラフで可視化。iOS版から先行リリースされたアプリは、2021年11月にAndroid版のリリースを予定しています。
メガネとしてのかけ心地は少し特殊。取扱店で調整可能
アプリの機能や使い勝手の前に、メガネとしての装着感はどうでしょう。
筆者は今回、スタンダードなメガネタイプのJINS MEMEから、フレームは「ウエリントン」タイプ、色はブラックを選択しました。視力に合わせてノーマルな度付きの単焦点クリアレンズを装着していますが、追加料金で各種オプションレンズに変更できます。
装着してみると、鼻当てのところにあるCOREパーツに少し厚みがあるためか、筆者が普段かけているJINSのメガネよりも、眼球とレンズとの間が広めに開いているように感じます。数日間続けて使っていたら見え方に慣れてきましたが、デザインの好みよりも、スマートグラスとして毎日ストレスなく使えることを優先してフレームを選ぶべきだったかもしれません。
購入後も通常のメガネと同じように、JINS MEME取扱店舗であればショップのスタッフに依頼して、鼻当てやテンプル(つるの部分)を微調整してもらえます。筆者は東京・秋葉原のヨドバシカメラ マルチメディアAkiba 7階のJINSを訪ねました。
「毎日充電が必要なメガネ」に慣れるまでにも、少し時間がかかりました。専用のクリップ式充電器をCOREパーツに挟んで、約3時間でフル充電。アプリや使用環境で変わるものの、スペック上では約24時間の連続使用が可能です。ただ実際は、多くの場合でジャイロセンサーがセンシングを続けるため、連続使用の目安は約11時間。本体を下向きに置くとスリープモードになり、バッテリー消費をおさえます。JINS MEMEを外して過ごせる時間はスリープモードにしておくと、バッテリーが長持ちします。
バッテリーの残量はアプリで確認できるほか、残量が少なくなるとスマホに通知が届きます。JINS MEME本体だけでは確認できないため、気が付いたらバッテリーが切れていた(センシングできていなかった)――というケースもありました。バッテリーが切れても普通のメガネとして使えるところはJINS MEMEの特長です。
スマホアプリでカラダとココロのバランスを確かめてみた
JINS MEMEアプリからは、ユーザーの「カラダ」「ココロ」「集中」という3つの状態が見られます。
まず「カラダ」の状態は、JINS MEMEを装着している頭の姿勢を4段階で評価。1日の間に良い姿勢を維持できた時間帯、割合をスコアとしてグラフ化します。
筆者は原稿を書いていると(タイピングしていると)、どうしても猫背になりがち。JINS MEMEは、垂直姿勢の状態から頭が前方向に20度以上傾くと判定がGoodからBadに変わります。やや厳しい感じもしますが、常に良い姿勢でいることを意識させてくれるヘルスケアデバイスとして、斬新で意義のあるスマートグラスではないでしょうか。
「ココロ」の状態は、JINS MEMEの3点式眼電位センサーが「まばたき」を検知した情報から生成されます。カラフルな球状のグラフは、ココロの状態が良いときには球形が大きく広がり、脈を打つように動くリズムが安定します。反対にココロが乱れていたり、気持ちがダウンしている場合は球形が小さくなり、動きも乱れます。まばたきの間隔や強さは「没入度」「安定度」「バイタリティ」の評価としてグラフ化されます。
ココロのバランスは日常生活の中では自覚しにくいため、JINS MEMEのアプリが役に立つ手応えを感じました。ココロのバランスが崩れているときは、アプリの「メンテナンス」メニューに収録されている瞑想コンテンツを試してみます。サウンドはオフのまま、オフィスやカフェでも誰にも気付かれずに、1分から3分前後でサクッとできるコンテンツなので実用的です。
アプリのもうひとつのメインコンテンツ「集中」は、JINS MEMEの各センサーから集まる情報をもとに自身の集中力を客観的に把握して、ココロを「プラスの状態」に導くことを目的としています。
集中状態は、拡大縮小する紫色の円グラフとポイント(数値)で表示されます。集中度は「軽集中」と「ZONE」に分かれ、それぞれを時系列で追いながら1日の間に集中した時間を表示します。
また、初代JINS MEMEの人気コンテンツ「集中測定」も収録。集中力を高めるBGMを選び、設定した時間中は目の前のタスクだけに集中するよう心がけてタイマーをスタート。毎日のルーティンにすると、集中状態のオン・オフを自分でコントロールしやすくなると思います。
とにかく機能が豊富で月額500円の価値アリ
JINS MEMEを1週間ほど使うと、カラダとココロの状態を詳細にグラフ化したレポートが作られます。グラフを見るだけで自分のコンディションをなんとなく把握できますが、アプリに収録されているメンテナンスのコンテンツがカラダとココロのバランスを改善する手引きを示してくれるので、悪い状態のときは改善したくなるモチベーションがわいてきます。
自身のコンディションを誰かと「共有」する機能は必要かどうか――。JINS MEMEが収集する情報はプライバシーに深く関わるようにも思えて判断が難しいところですが、ユーザー同士で「上手なJINS MEMEの使い方」を教え合うような、オンラインコミュニティはあっても良いと思います。
アプリはJINS MEMEの購入から1年間は無料ですが、2年目以降は月額500円(または年額5,000円)となります。これだけ機能が豊富だと「お買い得感」はものすごくありますが、その反面、筆者も最初は機能の多さに戸惑いました。まずは自分が必要とする、または興味のあるコンテンツから使い始めて、徐々にほかの機能を試していくと良いでしょう。
JINSのショップでセミナーやワークショップを定期的に開催すれば、スマートデバイスになじみのないユーザーでもJINS MEMEのことをよく知ることができます。JINSが提案するように、これからの新しい生活スタイルを健やかに生き抜くため、ココロのバランスを把握できるスマートデバイスの価値が広く知られることが大事でしょう。