【IEDM 2017】スマホの虹彩認識用CMOSセンサーをソニーが開発
人間の眼に見えない赤外線をモバイル機器の生体認証に導入
スマートフォン(スマホ)やメディアタブレットの虹彩認識や顔認識、ゲームの全身動作認識などには、赤外線を使うことが多い。対象物に赤外線を照射し、反射光をイメージセンサーで検出する。赤外線を使うのは、人間の視覚が検知しない(ユーザーがわずらわしく感じない)波長だからだ。
ただし、可視光検知を主体とするシリコンのCMOSイメージセンサーは、赤外線に対する感度があまり高くない。このため、CMOSイメージセンサーに赤外線の認識機能を付加するためには、高出力の赤外線発光ダイオード(赤外線LED)を採用する、あるいは赤外線の感度を上げるためにシリコンの光吸収層を厚くしたCMOSイメージセンサーを採用する、といった対策が必要とされてきた。
こういった対策は、部品コストの増加につながる。たとえばスマートフォンに搭載可能な小型で高出力の赤外線LEDが製品化されたのは、最近のことだ。当然ながら標準的な赤外線LEDに比べると、価格は上昇する。またシリコンの光吸収層を厚くしたCMOSイメージセンサーは、製造工程で不純物イオンを打ち込む距離が長くなるので、製造装置であるイオン打ち込み装置が高価なものになる。したがって製造コストが上昇する。
シリコンの光吸収層の厚みを従来のCMOSイメージセンサーと同等に維持しながら、赤外線の感度を向上できれば、赤外線LEDに要求される出力が減るとともに、CMOSイメージセンサーの製造工程で従来のイオン打ち込み装置がそのまま利用できる。赤外線LEDの部品コストが低下するとともに、CMOSイメージセンサーの製造コストを増やさずに済む。
CMOSイメージセンサーの大手ベンダーであるソニーセミコンダクタソリューションズ(以降はソニーと表記)はこのようなCMOSイメージセンサーを開発し、12月に米国サンフランシスコで開催された国際学会IEDM 2017で、その技術概要を発表した(講演番号16.4)。