競合から共存へ向かうNetflixとCATV。「J:COM TVフレックス」に見る新たな関係
今回J:COMが提供するサービスは、シンプルに言えば、既存型のケーブルテレビを使った「放送」による専門チャンネルサービスの契約と、Netflixの契約をセットにしたものだ。
人々が映像を見る時間は有限だ。Netflixを見る時間が増えればその分、放送を見る時間は減る。そうすると、放送とNetflixは視聴者の時間を奪い合う存在であり、基本的には敵対するように思える。
だが、ポイントを「放送を見る時間」ではなく「契約の維持」という観点に絞ると、自ずと考え方は違ってくる。ケーブルテレビやそこに紐づく専門局にとっては、視聴時間そのものより、契約の維持が重要だからだ。
専用チャンネルには様々な価値ある番組がある。そのすべてがNetflixで見られるわけではないし、自分で番組を選ばなくても次々に見たいものが流れてくる、という「受け身で見られる」良さがある。
一方、新しい作品が続々生まれてくるという意味では、Netflixの方に分がある。消費者から見ると、Netflixの方が新しい存在に見えてしまう……という部分もあるだろう。
これは、ケーブルテレビ事業者としてはマイナスだ。別の価値があり、同居は可能であるサービス同士なのだが、消費者は目玉を奪い合うサービス同士を比較して「どちらかを選ぶ」形になりがちだが、「どちらも選ぶ」形を用意すれば話は別だ。現実問題、誰もがNetflixだけを見て過ごすわけでもないし、逆に専門局だけで満足できるわけでもない。現実的な補完関係がある。
現在のケーブルテレビ会社は、放送だけでなくネット接続なども含めた総合的な家庭向けサービスの提供が軸だ。多くのサービスをまとめて契約できて、サポートや支払いもまとめられるわけだが、そこでNetflixも同時かつ安価に契約できるとなれば、消費者にとってのアピールになる。ケーブルテレビ会社としては、競合と思われているが「本質的には同居可能なサービス」として認知させることで、「契約を維持できる」のが大きな利点なのだ。