5Gの真の性能を引き出すミリ波 サブ6、SA、O-RANとペアで新展開
米Qualcomm(クアルコム)は2021年10月4日、5Gの真の性能を引き出すためには、ミリ波の活用が不可欠だとするコラム「What is the missing piece of the 5G puzzle? How to plan for the future.」を自身のブログに掲載した。
関連ブログWhat is the missing piece of the 5G puzzle? How to plan for the future.ミリ波で現状の5Gネットワーク戦略強化が可能になる
現在の5Gネットワークにミリ波を追加することで、ユーザー体験やネットワーク効率が著しく改善する。ミリ波周波数帯の超広帯域幅を活用することで、サブ6(6GHz未満の周波数帯)のみ使用時の19倍、LTE時の38倍の高速大容量化が可能となる。また、2026年までに現在の4.5倍増になるといわれるデータ消費量やクラウドゲームなどの新しい用途にも、迅速かつ効率的に対応できる。最新のベル研究所の調査では、5Gミリ波により、さらに柔軟で効率的なモバイルブロードバンド配信や展開が可能になり、通信事業者に多くの利益をもたらす。
コスト効率の高いネットワークサービス展開を可能にする5Gミリ波(出所:Qualcomm)[画像のクリックで拡大表示]移動通信事業者は、5Gネットワークの高性能化や持続可能性に向けたさまざまな投資計画を用意している。それら主要な投資分野とミリ波を組み合わせることで、さらなる相乗効果が生まれる。
サブ6+ミリ波=データ通信量の多い密集地帯での高コスト効率な容量強化
現在、移動通信事業者は、3.5GHzなどのサブ6を使った5Gサービス展開に焦点を置いているが、この周波数帯には容量拡大に必要な十分な帯域幅がない。デュアルコネクティビティーやキャリアアグリゲーションなどの技術で5Gミリ波とサブ6とを組み合わせることで、高コスト効率での大容量通信提供が可能となる。先のベル研究所の調査でも、混雑した繁華街やオフィス、屋内や屋内のイベント会場、ショッピングセンターなどへの導入例が紹介されている。また、最近のGSMAの調査では、通信量の多い場所にミリ波とサブ6の両方をサポートする5Gシステムを導入することで、サブ6のみの場合に比べ、総保有コスト(total cost of ownership、TCO)を最大35%削減できるとしている。
FWA+ミリ波=無線で有線レベルの通信を実現
ミリ波のもう一つの重要な用途として、家庭などに有線レベルの高速通信を提供する5G FWA(Fixed wireless access、固定無線)がある。既に30カ国、60社以上のプロバイダーが商用サービスを開始しているが、5G FWAは固定ブロードバンドでのユーザー体験を大幅に改善するだけでなく、デジタル格差の解消にも役立つ。前述のGSMAの調査でも、3.5GHz帯のみのネットワークに対して、ミリ波のみのFWAでは、総保有コストを34%削減し、カバレッジを強化する中周波数帯と通信容量を強化するミリ波帯を組み合わせたFWAでは、最大39%まで低減できるとしている。また、上りリンクが全通信量の30%に達するケースでは、サブ6GHz帯とミリ波を組み合わせることで、サブ6GHz帯のみの場合に比べて、総保有コストが最大60%低減されるとしている。
5G SA+ミリ波=超低遅延サービス
移動通信事業者の短期的な投資分野としては、5G SA(Standalone)への移行が挙げられる。5G SAネットワークを導入することで、基幹ネットワークの遅延時間を著しく低減し、ネットワークスライシングや5Gネットワークの仮想化も可能になる。これに5Gミリ波を組み合わせることで、タイムラグを感じないクラウドゲームやXR(extended reality)など、超低遅延な新サービスの提供が可能となる。
5Gミリ波はクラウドゲームなどの体験を劇的に改善する(出所:Qualcomm)[画像のクリックで拡大表示]5Gプライベートネットワーク+超高信頼性低遅延通信+ミリ波=産業向けIoTプラットフォーム
サブ6とミリ波を組み合わせることで、より高いサービス品質が必要となる分野にも対応できるようになる。例えば、産業用IoTでは、1ミリ秒程度の低遅延性と最大99.9999%の超高信頼性を求められる。Qualcommでは、こうした要件への対応に向けて、スマートファクトリー内の多様なユースケース、高速大容量通信やミッションクリティカルな通信、カメラセンサーなど複雑度の低いIoTデバイスなどを5Gミリ波に接続した場合のシミュレーションやフィールド試験を行っている。なお、日本やドイツなど多くの国々では、ミリ波を使ったプライベートネットワークやIoTの活用が進んでいる。
スマートファクトリー内での5Gミリ波を使ったシミュレーションの様子(出所:Qualcomm)[画像のクリックで拡大表示]