リテールテックのフェズ、広告×販促×店頭施策を連動する一気通貫型プラットフォーム「Urumo OMO」を正式ローンチ
広告・マーケティングと、営業・販売促進というのは、別々に施策が打たれることがしばしばだ。論より証拠、これらそれぞれの役割を担う部署は、企業の中で分かれて存在することが多い。しかし、この状況にも変化が訪れるかもしれない。D2C(direct-to-consumer)プラットフォームの台頭で、製造ノウハウを持たないブランドやインフルエンサーがモノを売れるようになった。深夜帯に放映されるテレビ局自社制作通販番組に象徴されるように、メディアは広告ではなく自ら商品を売るようになってきている。
今日紹介するフェズは、売上を伸ばすという一つの目標に対して、複数の部門が担当する施策を横断的かつ一元的に管理できるプラットフォームだ。同社は14日、逆算型 OMO(Online merges with Offline)プラットフォームの「Urumo OMO」を正式ローンチした。OMO については BRIDGE の読者も聴き慣れた言葉と思うが、逆算型とは何だろうか?
従来型のマスマーケティングでは、商品の存在を潜在顧客に認知してもらうことから始め、最終的に来店してもらい購入してもらうことを目指す。この手法の首位の座に君臨するのがテレビ CM であるわけだが、消費行動が多様化する中でマスマーケティングは必ずしもコストパフォーマンスがいいとは言えない。対して、OMO 型のマーケティングでは、最初の来店・購入を促し、それが顧客にとっての最初の商品とのタッチポイントとなって認知を深めていく。
OMO 型マーケティングが求められる背景には、商品を作るメーカー、販売する小売業者、購入する消費者間の大きなニーズのギャップがある。メーカーはなるべく高い価格で自社商品を店頭に大量に置いてもらいたい、小売業者は複数メーカーの商品の中から売れ筋のみを選んで置きたい、そして消費者は広告に翻弄され、自分の欲しいものを手に入れられないインフォメーションオーバーロードがここでも起きているわけだ。
Urumo OMO では、ID-POS に代表される購買データ、店頭データ、ユーザの位置データを掛け合わせ分析・戦略立案。各店舗の商圏にいる潜在顧客に対してオンライン広告を流し、それを見て来店した顧客に対して、商品を店頭で手にとってもらえる体制を整える。実際にどのユーザがどの商品をどれだけ購入したか購買データと付き合わせ、これら一連の PDCA サイクルを回すことで最適解を導き出すというアプローチをとる。
こうしたリテールテックを持ち込む対象としてフェズが選んだのは、FMCG(日用消費財)、中でも、トイレタリーや化粧品といった分野だ。代表取締役の伊丹順平氏はフェズを創業する前、P&G ジャパンで大手流通を担当し、その後、Google で消費財メーカーやリテール業界を担当。FMCG メーカーのニーズと、リテールが抱える課題の両方を身近に体感したことが、この事業の設立につながったという。Urumo OMO を使ったセールスリフト(購買向上)の壮大な実験には、複数のドラッグストアが参加している。
厚生労働省傘下の労働政策研究・研修機構が発表したデータによれば、2018年現在、就業者人口6,642万人のうち1,072万人は小売業界、つまり、リテールに従事している。インターネットが普及したとはいえ、小売全体に占める EC の割合は6.76%(経済産業省のデータ)に留まっている。伊丹氏は、データを活用したセールスリフトでオフラインリテールを伸ばすことは、労働人口低下や働き方改革が叫ばれる昨今、社会全体の生産性向上にも大きく寄与するだろう、と期待を込めた。
フェズは8月、ニッセイ・キャピタルと Incubate Fund US から6.3億円の調達を発表している。
この分野では、対象バーティカルが FMCG ではないが、ファッション提案 O2O サービス「FACY(フェイシー)」を運営するスタイラーが中国のテック大手 Tencent(騰訊)と組んで OMO 領域に進出することを明らかにしている。
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