目次
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18日に採択された日本共産党第27回大会決議は、次の通りです。
(1)新しい対決構図――「自公と補完勢力」対「野党と市民の共闘」
(2)この新しい時代を開いた力はどこにあったか
(3)「二つの異常」の行き詰まりと強権政治
(4)安倍政権を打倒し、野党連合政権を
(5)「世界の構造変化」と核兵器廃絶にむけた画期的な動き
(6)平和の地域共同体――曲折もあるが大きな前進
(7)アメリカ――軍事的覇権主義の大破たん、グローバル資本主義の深刻な矛盾
(8)中国――新しい大国主義・覇権主義のあらわれ
(9)ロシア――スターリン時代の覇権主義復活
(10)大国主義・覇権主義に未来はない
(11)欧米での注目すべき新たな社会変革の動き
(12)日本共産党の野党外交――到達点と課題について
(13)安倍政権の危険と、それを打ち破る可能性
(14)「戦争する国」づくりを許さない――日本共産党の平和の提案
(15)格差と貧困をただす経済民主主義の改革を
(16)原発再稼働を許さず、「原発ゼロの日本」を
(17)沖縄をはじめとする米軍基地問題――全国の連帯を訴える
(18)憲法改悪を許さず、憲法を生かした新しい日本を
(19)侵略戦争を肯定・美化する歴史逆行、排外主義を許さない
(20)日米安保条約、自衛隊――日本共産党の立場
(21)統一戦線の画期的発展と今後の展望について
(22)来たるべき総選挙の目標について
(23)東京都議会議員選挙の勝利をめざして
(24)地方政治をめぐる政治的焦点、地方選挙の躍進をめざして
(25)新しい情勢にふさわしく選挙方針を抜本的に発展させる
(26)「党勢倍加、世代的継承」の達成を――党勢拡大の取り組みの到達点
(27)いまなぜ党建設か――その歴史的意義について
(28)どうやって党建設を本格的な前進に転ずるか
(29)全党あげて労働者階級、若い世代のなかの党づくりに挑戦しよう
(30)党費を要にした党財政の確立・強化を訴える
(31)党創立95周年――歴史が決着をつけた三つのたたかい
(32)党創立100周年をめざして――野党連合政権に挑戦を
(1)新しい対決構図――「自公と補完勢力」対「野党と市民の共闘」
安倍自公政権とその補完勢力に、野党と市民の共闘が対決する、日本の政治の新しい時代が始まった。
2016年7月の参議院選挙では、安保法制=戦争法の廃止、立憲主義回復という大義で一致し、安倍政権打倒をめざす、野党と市民の共闘がつくられ、全国32の1人区のすべてで野党統一候補が実現し、11の選挙区で激戦を制して勝利した。10月の新潟県知事選挙では、「原発再稼働は認めない」という旗印を掲げ、野党と市民の統一候補が圧勝した。国民の願いにこたえる「大義の旗」を掲げ、野党と市民が「本気の共闘」に取り組むなら、政府・与党の激しい攻撃をはねかえして勝利できることが示された。これは、日本の前途にとっての大きな希望である。
「日本共産党を除く」という「壁」が崩壊した。この「壁」は、1980年の「社公合意」を契機につくられ、1990年代前半の「自民か、非自民か」というキャンペーン、2000年代の「二大政党の政権選択」というキャンペーンなど、形をさまざまに変えながら続き、自民党政治に対抗する野党勢力の大同団結の最大の障害になってきた。しかしいまや「壁」は過去のものとなり、日本共産党は、新しい対決構図の一方の極で、重要な役割を果たしている。
日本の政治は、歴史の本流と逆流が真正面からぶつかりあう、戦後かつてない激動的な新しい時代に入った。
(2)この新しい時代を開いた力はどこにあったか
この新しい時代を開いた力はどこにあったか。
第一は、安倍政権の暴走政治に対抗する新しい市民運動が発展したことである。この数年来、一致する切実な要求で共同する「一点共闘」がさまざまな分野で広がった。とくに、安保法制=戦争法に反対するたたかいを通じて、国民一人ひとりが、主権者として、自由な、自発的な意思で立ち上がり、声をあげる、戦後かつてない新しい市民運動、国民運動がわきおこり、豊かに発展した。この運動のなかから「野党は共闘」という切実な声が広がり、この声に背中を押されて、国会内外で野党共闘がつくられ、それは参院選での野党共闘へと発展していった。
第二は、日本共産党の政治的躍進である。わが党は、2013年7月の参議院選挙の躍進に続いて、2014年12月の総選挙で8議席から21議席へと躍進をかちとった。2015年4月の統一地方選挙でも、党史上初めてすべての都道府県議会で議席を確保するなど、全体として躍進をかちとった。これは、1980年の「社公合意」以来30年余にわたって国政を支配してきた「日本共産党を除く」体制を打ち破るとともに、安倍政権の暴走政治に対抗して、中央でも、地方でも、野党と市民の共闘をすすめる大きな力となった。
日本共産党は、2015年9月19日、安保法制=戦争法案の強行採決という事態にさいして、「戦争法(安保法制)廃止の国民連合政府」を提唱し、全国規模での野党の選挙協力の追求という新たな道に踏み出した。この提唱は、「野党は共闘」という多くの市民の声にこたえ、「私たちも変わらなければならない」と思い定めてのものだったが、野党と市民の共闘の発展への貢献となった。わが党が、こうした決断ができた根本には、社会発展のあらゆる段階で、当面する国民の切実な要望にこたえた一致点で、思想・信条の違いをこえた統一戦線によって社会変革をすすめるという、党綱領の生命力がある。
(3)「二つの異常」の行き詰まりと強権政治
日本の政治で、「自公と補完勢力」対「野党と市民の共闘」という新しい対決構図がつくられた根底には、「二つの異常」――「異常な対米従属」「異常な財界中心」を特質とした自民党政治が、深刻な行き詰まりに直面し、保守の人々も含めた国民との矛盾をいよいよ広げているという、社会の土台での激動がある。
「異常な対米従属」の政治は、日本国憲法といよいよ両立しえなくなった。安保法制=戦争法の強行は、「憲法9条のもとでは集団的自衛権行使は許されない」という戦後60年余におよぶ歴代内閣の憲法解釈を百八十度くつがえし、立憲主義という民主政治の大原則を破壊するものとなった。沖縄県民の総意を踏みつけにした辺野古新基地建設の押し付けによって、沖縄米軍基地問題の矛盾は限界点をはるかにこえた。
「異常な財界中心」の政治によって、人間らしい雇用が根底から破壊されている。庶民への重税、社会保障削減によって、所得の再分配機能が働かなくなっている。格差と貧困の拡大、中間層の疲弊がすすみ、日本の社会と経済の持続的な発展を不可能にしている。「原発利益共同体」の利潤追求を国民の安全の上に置く、原発再稼働への暴走が、深刻な矛盾を引き起こしている。
さらに、侵略戦争と植民地支配を肯定・美化する歴史逆行の政治が、国内外できわめて深刻な矛盾をつくりだしている。「自民党改憲案」には、歴史逆行、戦争国家づくり、立憲主義否定など、矛盾が集中的にあらわれている。
「二つの異常」を特質とする自民党政治は、あらゆる分野で、国民多数の民意との矛盾を広げ、民意と衝突せざるをえなくなっている。
こうしたもとで安倍政権は、民意無視の強権政治に頼るほかに、いまやこの国を統治する術(すべ)をもてなくなっている。安倍政権の強権政治=暴走政治は、この政権の「強さ」では決してない。それは古い自民党政治が、深刻な行き詰まりに直面し、国民との矛盾をいよいよ広げていることのあらわれにほかならない。
(4)安倍政権を打倒し、野党連合政権を
安倍政権の暴走政治は、古い自民党政治の行き詰まりと一体のものである。安倍政権を打倒することは、たんに暴走政治をストップすることにとどまらない。それは自民党政治そのものを終わらせ、新しい日本に踏み出す、大きな一歩となるだろう。
野党4党は、国政選挙でできる限りの協力を行い、現与党およびその補完勢力を少数に追い込み、安倍政権の打倒をめざすことを合意している。また、安倍政権と対決する政治的内容として、(1)安保法制を廃止し、立憲主義を回復する、(2)「アベノミクス」による国民生活破壊、格差と貧困を是正する、(3)TPP(環太平洋連携協定)や沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない、(4)安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する――という四つの太い柱を確認している。日本共産党は、これらの合意をふまえ、野党間の政治的・政策的合意を豊かで魅力あるものに発展させるために力をつくす。また、当面する総選挙をはじめとする国政選挙で選挙協力を発展させ、衆議院でも参議院でも、「改憲勢力3分の2体制」を打破し、さらに現与党とその補完勢力を少数派に追い込むために全力をあげる。
安倍政権に代わる政権をどうするか。この問題については、現時点では、野党間に合意が存在しない。しかし、野党が本気で、安倍政権と対決する四つの政治的内容の実現をはかろうとするならば、それを実行する政権が必要になる。また、野党が本気で、安倍政権の打倒をめざすならば、この政権を倒した後に、どういう政権をつくるかを国民に示す責任が生まれてくる。「綱領、理念、政策の違うものとは政権をともにできない」という議論があるが、綱領や将来像が違っても、国民の切実な願いにこたえて、当面の一致点で協力することが、政党間の共闘の当たり前の姿であり、それは選挙協力だけでなく、政権協力でも基本にすえるべきことである。この立場から、日本共産党は、「国民連合政府」という暫定的な野党連合政権の構想を提案しているが、野党連合政権についても、真剣な協議をつうじて、前向きの合意を得るために知恵と力をつくす。
日本共産党第27回大会の名において心から呼びかける。野党と市民の共闘をさらに大きく発展させ、安倍政権を打倒し、自民党政治を終わらせ、野党連合政権をつくろう。立憲主義、民主主義、平和主義を貫く新しい政治、すべての国民の「個人の尊厳」を擁護する新しい日本への道を開こう。
(5)「世界の構造変化」と核兵器廃絶にむけた画期的な動き
前大会決議は、「20世紀におこった世界の最大の変化は、植民地体制が完全に崩壊し、民族自決権が公認の世界的な原理となり、100を超える国ぐにが新たに政治的独立をかちとって主権国家になったことにあった」と指摘するとともに、「これは、まさに『世界の構造変化』と呼ぶにふさわしい巨大な変化」だと強調し、「今日の世界の特徴は、この構造変化が、世界の平和と社会進歩を促進する力として、生きた力を発揮しだしたところにある」ことを解明した。
その力はいま、「核兵器のない世界」の実現という人類にとって死活的な緊急課題をめぐる画期的な動きとなってあらわれている。
2016年12月23日、国連総会は、核兵器禁止条約の締結交渉を開始する決議を、賛成113カ国という圧倒的多数で採択した。これによって、「核兵器を禁止しその全面廃絶につながるような法的拘束力のある文書(核兵器禁止条約)」の交渉が、市民社会(反核平和運動)の参加もえて、2017年3月、6〜7月に国連で開催されることになった。
核兵器禁止条約に、かりに最初は核保有国が拒否したとしても、国連加盟国の多数が参加して条約が締結されれば、核兵器は人類史上初めて「違法化」されることになる。あらゆる兵器のなかで最も残虐なこの兵器に「悪の烙印(らくいん)」をおすことになる。そうなれば、核保有国は、法的拘束は受けなくても、政治的・道義的拘束を受け、核兵器廃絶に向けて世界は新しい段階に入ることになるだろう。わが党は、「核兵器のない世界」への扉を開くこの画期的な動きを、心から歓迎する。
この前向きの激動をつくるうえで、二つの力が合流した。
一つは、圧倒的多数の途上国、先進国の一部を含めた諸政府の共同である。非同盟諸国が中心となって、この20年、国連総会で核兵器禁止条約を求める決議が提出され、毎年、圧倒的多数の賛成で採択されてきた。核兵器の非人道性を追及する国際会議が開催され、2015年の国連総会で、初めて「核兵器の人道的結末」についての決議が、加盟国の75%の賛成で採択された。
いま一つは、「核兵器のない世界」を求める世界の反核平和運動――市民社会の運動である。被爆者を先頭に、日本の反核平和運動は、当初から一貫して、広島、長崎の実相を訴え、核兵器の非人道性、残虐性を告発してきた。核兵器の全面禁止・廃絶を求める国際署名に、この10年余りで、世界でのべ5000万人以上が賛同を寄せた。これらの草の根からの取り組みが、国際政治を動かす大きな力となった。今回採択された決議では、2017年の国際会議に市民社会が参加し、貢献することへの期待を表明している。それは、今日の流れを生み出す根本的な力が、世界の市民の世論と運動であったことを示している。
核兵器禁止が現実の日程にのぼったことに危機感を深めた核保有大国は、妨害者としての姿をあらわにしている。米英仏ロ中のP5・核保有5大国は、2016年9月、国連総会を前にワシントンで会合を開き、「段階的アプローチ」(ステップ・バイ・ステップのアプローチ)が「核軍縮に向けて前進する唯一の選択肢」と主張し、核兵器禁止条約に背を向ける態度を表明した。しかし、核軍縮の部分的措置をいくら積み重ねても、「核兵器のない世界」に到達しえないことは、戦後70年余の核兵器をめぐるすべての外交交渉が証明している。「段階的アプローチ」論は、核兵器廃絶を永久に先送りする、最悪の核兵器固執論にほかならない。
日本政府は、これまで、核兵器禁止条約の交渉開始を求める国連総会の決議には「棄権」を続けてきたが、今回の歴史的決議にさいしては、アメリカのどう喝に屈してさらに後退し、「反対」の態度をとった。唯一の戦争被爆国の政府にあるまじき、日本国民の意思を踏みにじる態度として、きびしく批判しなくてはならない。
この問題の帰趨(きすう)を決めるのは、世界の世論と運動である。「ヒロシマ・ナガサキの被爆者が訴える核兵器廃絶国際署名」(「ヒバクシャ国際署名」)が、世界で数億を目標に開始されている。日本共産党は、この取り組みに連帯し、その成功のためにあらゆる力をつくす。
(6)平和の地域共同体――曲折もあるが大きな前進
前大会決議は、「国連憲章にもとづく平和の国際秩序」の担い手として、東南アジア諸国連合(ASEAN)と中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)という平和の地域共同体が形成され、発展していることに注目した。
これらの二つの地域共同体に共通しているのは、(1)あらゆる紛争を平和的に解決するという立場を堅持していること、(2)大国の介入を許さず自主性を貫いていること、(3)非核地帯条約(宣言)を結び、核兵器廃絶の世界的な源泉となっていることである。
2017年に設立50周年を迎える東南アジア諸国連合(ASEAN)は、この地域を、「分断と敵対」から「平和と協力」へと劇的に変貌させた。
ASEANは、国連憲章の原則にもとづき武力行使の放棄と紛争の平和解決などを掲げた東南アジア友好協力条約(TAC)を土台にして、ASEAN地域フォーラム(ARF)、東アジアサミット(EAS)、東南アジア非核地帯条約、南シナ海行動宣言(DOC)など、重層的な平和と安全保障の枠組みをつくりあげ、それを域外に広げている。これらの努力が、2015年末に、ASEAN共同体の設立という実を結んだことは、注目すべき新たな発展である。
この地域には、南シナ海問題など困難な課題が存在し、大国が関与を増大させ加盟10カ国に分断をもたらす動きもある。しかし、ASEANは、これらの課題に対して、忍耐力と柔軟性を発揮して団結を守り、自主性を貫き、状況を切り開きつつある。
2016年7月、常設仲裁裁判所は、南シナ海水域に対する中国の独自の権利主張を、国際法上「根拠がない」と退け、紛争の平和的解決を促す裁定(判決)を下した。この裁定を受け、9月のASEAN首脳会談が、南シナ海問題に関して、声明で「国連海洋法条約を含む国際法の普遍的に承認された原則」、「法的および外交プロセスの全面尊重」による平和的解決を確認したことは、重要である。わが党は、ASEANの声明を強く支持し、この方向で事態の前向きの打開がはかられることを願う。
ASEANがつくりあげてきた平和の地域共同体は、東南アジアのみならず、アジア・太平洋地域、さらに世界的規模の平和と安定にも寄与している。それは、世界に平和秩序をつくりあげる、平和の発信源となっている。
平和の地域共同体は、中南米カリブ海地域でも大きな前進をみせている。この地域では、この間、左派・革新政権の後退、困難がみられるが、個々の国ぐにの政権交代に左右されない共同体発足の歴史的意義が鮮明になっている。
2010年に地域の33のすべての国が参加して設立を宣言した中南米カリブ海諸国共同体(CELAC)の意義は、何よりもまず、歴史的に「米国の裏庭」とされてきたこの地域を、米国から自立した地域に変えたことにある。
この地域では、すでに1968年に非核兵器地帯(トラテロルコ条約)が設立されているが、2013年のCELAC第1回首脳会議では「核兵器全面廃絶に関する特別声明」が確認された。2014年のCELAC第2回首脳会議では「中南米カリブ海平和地帯宣言」を採択し、この地域から武力の行使とその威嚇を永久に放棄し、紛争を平和的に解決することをうたった。
「平和地帯宣言」にもとづいてCELACは平和のイニシアチブを発揮し、コロンビア内戦を終わらせる和平プロセスの節々で交渉を後押ししてきた。2015年7月に米国とキューバが54年ぶりに国交を回復したが、中南米カリブ海のすべての諸国が、米国によるキューバ封鎖政策を批判し、国交回復を支援してきた。
この地域で発展している対米自立と平和の流れは、容易にくつがえせないところまで進展し、大きな未来をもつものである。
日本共産党は、ASEANとCELACの経験に学び、前大会決議で「北東アジア平和協力構想」を提唱したが、二つの平和の地域共同体の取り組みは、北東アジアに平和と安定を築いていくうえでも、多くの教訓と示唆に富むものである。
(7)アメリカ――軍事的覇権主義の大破たん、グローバル資本主義の深刻な矛盾
2001年の9・11同時多発テロへの対抗措置として、アメリカのブッシュ政権は、2001年にアフガニスタン報復戦争を引き起こし、続いて2003年にイラク侵略戦争を開始した。これらの軍事介入は、少なくとも数十万人という無辜(むこ)の民間人の命を奪い、泥沼の内戦をつくりだし、テロを世界中に拡散させ、過激武装組織ISを生み出す主要な原因となった。この15年間の世界の現実は、アメリカの軍事的覇権主義が大破たんに直面していることを示している。
ブッシュ政権の政治の「チェンジ(転換)」を掲げて2009年に登場したオバマ政権は、全体として新たな大規模軍事介入は避け、国際・地域機構も活用し、さまざまな外交努力をすすめた。イランの核開発をめぐる合意、キューバとの国交回復、気候変動に関する合意などが行われた。
しかし、アフガニスタンとイラクは今なお内戦と混乱のなかにある。米軍の駐留規模はピーク時に比べて縮小されたものの、アフガニスタンには現在も約1万人が駐留し、イラクでも空爆、無人機による攻撃、特殊部隊による作戦展開が行われている。シリアではアメリカ・NATO(北大西洋条約機構)諸国とロシアが軍事介入する内戦が泥沼化し、多数の民間人が殺傷され、国内外で1千万人を超える難民が生まれている。アフリカなどでの軍事拠点の拡大、軍事力の展開もすすんだ。
オバマ政権が作成した「2015年米国家安全保障戦略」では、「必要なら一方的に軍事力を行使する」と先制攻撃を宣言し、「必要な場合には単独で行動する」と国連を無視した単独行動を宣言している。“国連憲章と国連を無視した先制攻撃”という軍事的覇権主義の戦略に、いささかも変わりはない。
オバマ大統領は、「米国はイラクで、たとえ数十万の勇敢な兵士と数兆ドルの国費をもってしても、それだけで外国に安定を押し付けることはできないという厳しい教訓を学んだ」と表明した。「イラクで出現したアルカイダは今ではISIL(=IS)に進化した」ことも認めた。
しかし、そのような事態をもたらした軍事的覇権主義の戦略に対する根本的な検討はなされなかった。
アメリカの軍事的覇権主義は出口の見えない行き詰まりに陥り、大破たんに直面している。破たんした道への追随――安倍政権による安保法制=戦争法に、決して未来はない。
アメリカ社会は、長年続いた多国籍大企業の利益を最優先するグローバル資本主義、新自由主義の経済政策のもとで、格差と貧困が広がり、深刻な行き詰まりと矛盾に直面している。オバマ政権は、新たな保険制度の導入など一定の手直しを行ったが、この政権のもとでも、1%の富裕層が全国民の22%の収入を得るなど、格差と貧困がさらに拡大し、国内産業の空洞化、中間層の没落がすすんだ。
2016年11月8日に行われたアメリカの大統領選挙で、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したが、この結果は、アメリカ社会の陥っている深刻な行き詰まりと矛盾の一つの反映にほかならない。トランプ氏は、「既得権益層」批判を行ったが、矛盾を打開する方策を示したわけではない。また、核戦力の強化や移民問題など危惧される発言を行っている。新大統領として、今後どのような政策を提示するのか、強い警戒をもって注視していく。
(8)中国――新しい大国主義・覇権主義のあらわれ
この間、中国の国際政治における動向に、見過ごすことのできない問題点があらわれてきた。少なくとも次の四つの点を指摘しなければならない。
第一は、核兵器問題で、中国に深刻な変質が起こっていることである。
中国は、ある時期までは、核兵器禁止の国際条約を繰り返し求めてきた。ところが、この数年来、変化が起こっている。2009年、胡錦濤主席(当時)が国連安保理首脳会議で行った演説では、核兵器廃絶は「究極的目標」とされ、「核兵器禁止条約」はそれにいたる「段階的行動で構成される実現可能な長期的計画」の一つに位置づけられ、はるか彼方の未来の課題に追いやられた。
変質が際立ってあらわれたのは、2015年〜16年の国連総会で、核兵器禁止条約の国際交渉を現実の日程にのせようという動きに対して、中国が、P5・核保有5大国の一員としてこれに背を向ける態度をとったことである。「段階的アプローチ」を主張し、核兵器に固執する立場に、中国は公然と身を移した。少なくとも核兵器問題については、中国はもはや平和・進歩勢力の側にあるとはいえず、「核兵器のない世界」を求める動きに対する妨害者として立ち現れている。核兵器問題は、外交問題のあれこれの部分的な一つでなく、人類にとって死活的な緊急・中心課題であり、この問題での変質はきわめて重大である。
第二は、東シナ海と南シナ海での力による現状変更をめざす動きである。
東シナ海で、中国は、2008年12月、尖閣諸島の領海に初めて公船を侵入させるという行動をとった。2012年9月、日本政府が民間人の所有者から尖閣諸島を買い上げる措置(いわゆる「国有化」)を行ったあと、中国公船による領海侵入が激増・常態化し、日中間の緊張が絶えず続く異常な事態となっている。中国側にどんな言い分があろうと、他国が実効支配している地域に対して、力によって現状変更をせまることは、国連憲章および友好関係原則宣言などが定めた紛争の平和的解決の諸原則に反するものであって、国際社会で決して許されるものではない。
南シナ海について、中国は、2009年、国連への提出文書で南シナ海のほぼ全域について自国の権利を公式に主張するようになり、とりわけ2014年以降、南沙諸島での大規模な人工島の造成、3000メートル級の滑走路、レーダーサイトの建設など、力による現状変更をあからさまにすすめている。これは中国とASEAN諸国が交わした「南シナ海行動宣言」(DOC)に明らかに反する行動である。仲裁裁判所の裁定は、南シナ海水域に対する中国の独自の権利主張を「根拠がない」と退け、力による現状変更を国際法違反と断じたが、この裁定に対して、中国は「無効で何の拘束力もない」と非難している。国連憲章と国際法の普遍的に承認された原則に反して、自国の利益を第一に追求する態度は許されない。
第三は、国際会議の民主的運営をふみにじる横暴なふるまいである。
2016年9月、マレーシアで開催されたアジア政党国際会議(ICAPP)総会の「クアラルンプール宣言」の採択にいたる過程で、日本共産党代表団は、「核兵器禁止条約の速やかな交渉開始の呼びかけ」を宣言に盛り込む修正案を提起した。宣言起草委員会は、中国を含めて全員一致でわが党の修正案を受け入れることを確認し、総会最終日に参加者全員に配布された宣言案はわが党の修正案を取り入れたものとなった。ところが宣言採択の直前になって、中国共産党代表団は、この部分の削除を強硬に求め、削除されるという結果となった。宣言起草委員会が全員一致で確認したことを最後になって一方的に覆すというのは、覇権主義的なふるまいそのものである。
2016年9月、ベネズエラで開催された非同盟諸国首脳会議で、異例の事態が発生した。東南アジア諸国連合(ASEAN)は、最終文書案の南シナ海問題を扱った部分について、最新の情勢を反映させ、「非軍事化と自制」などを強調する修正を求めた。しかし、それが拒否され、ASEANは採択された最終文書に部分保留を表明する事態となった。この事態に対して、オブザーバーとして参加していた中国政府は、「非同盟運動は南シナ海問題を討論するのに適した場でない」と断定し、「ごく一部の国が文書で南シナ海にかかわる内容を一方的に誇張する要求」(外務省)を出したと非難した。ASEANで中国との調整役をつとめているシンガポール政府は、この異例の事態に対して、「地域の項目を、地域グループが外部勢力の干渉なしに作成する重要な原則が尊重されなければ、非同盟運動とその加盟国の利益に反する」と厳しく指摘した。
第四に、ICAPP総会での中国共産党代表団のふるまいは、日本共産党と中国共産党の両党関係にとっても重大な問題である。日本共産党代表団は、中国共産党代表団に対して、修正案の内容が宣言に盛り込まれるよう、真摯(しんし)に話し合いを求め、協力を要請した。ところが、中国共産党代表団は、わが党の協力要請を、まともな理由をなに一つ示すことなく拒否したうえ、最後は「覇権主義」という悪罵をわが党に投げつける態度をとった。
これは、32年余にわたる両党間の断絶を引き起こした、日本共産党への無法な干渉に対する中国共産党側の反省のうえに、1998年6月、「日本共産党と中国共産党との関係正常化についての合意」で確認し、それ以来、両党関係を律する基準としてきた原則とはまったく相いれない態度である。
以上の事実にてらして、今日の中国に、新しい大国主義・覇権主義の誤りがあらわれていることを厳しく指摘しなければならない。
前大会決議は、「社会主義をめざす新しい探究が開始」(党綱領)された国ぐにについて、「覇権主義や大国主義が再現される危険もありうるだろう。そうした大きな誤りを犯すなら、社会主義への道から決定的に踏み外す危険すらあるだろう」と指摘した。中国にあらわれた新しい大国主義・覇権主義が今後も続き、拡大するなら、「社会主義への道から決定的に踏み外す危険」が現実のものになりかねないことを率直に警告しなくてはならない。
中国は、戦後、「平和5原則」(1954年)や「バンドン平和10原則」(1955年)など、国際政治の重要な民主的原則の形成に関与してきた国である。それだけに、これらの原則の否定ともなる大国主義、覇権主義の誤りを真剣に是正し、国際社会の信頼をえる大道に立つことを求めるものである。
(9)ロシア――スターリン時代の覇権主義復活
ロシア・プーチン政権による大国主義・覇権主義の動きも重大である。
ロシアは、2014年3月、ウクライナの領土であるクリミア自治共和国とセバストポリ特別市の併合を強行した。これは、各国の主権、独立、領土保全の尊重という国連憲章、国際法の原則を踏みにじった、明白な侵略行為である。プーチン大統領は、クリミアとロシアとの歴史的な結びつきを強調し、「ロシア世界、歴史的なロシアが統一を回復しようとしている」とのべた。これは自らの領土拡張を国際法の上におく無法な態度である。プーチン大統領は、クリミア併合のさいに、欧米との紛争が発生し、不利な展開になった場合を想定して、核兵器の使用準備まで検討したとのべ、世界を驚愕(きょうがく)させた。
さらにロシアは、ウクライナ東部で分離独立派の武装勢力への支援を行い、武力を行使して他国の内政に公然と介入する行動を繰り返している。
ロシア・プーチン政権のこれらの横暴は、スターリン時代の覇権主義の復活そのものである。日本共産党は、国連憲章にもとづく世界の平和秩序をくつがえす、大国主義・覇権主義に厳しく反対する。
こういう政権が相手だけに、日露領土問題の解決のためには、第2次世界大戦の戦後処理の大原則=「領土不拡大」に反する、スターリンの覇権主義的な領土拡張の誤りを正面から是正する立場に立った交渉が、いよいよ避けて通れない。そのことを、わが党は2016年10月に発表した提言「日露領土交渉の行き詰まりをどう打開するか――『日ソ共同宣言』60周年にあたって」でも詳細に主張している。
(10)大国主義・覇権主義に未来はない
今日の国際政治における大国主義・覇権主義のあらわれについてのべてきたが、この道には決して未来はない。
第一に、これはすでに歴史によって審判が下され、失敗した道である。アメリカによるベトナム侵略戦争、アフガン・イラク戦争など軍事的覇権主義は、失敗と破たんに終わった。旧ソ連は、スターリン以来の覇権主義の誤りを是正できないまま崩壊を迎えた。中国・毛沢東派が各国共産党の内部に分派集団を組織し、その国の党と運動を自国の支配下に置こうとした覇権主義、干渉主義も、無残な失敗に終わった。
第二に、21世紀の世界は、一握りの大国が世界政治を動かした大国中心の世界ではなく、国の大小での序列がない世界になりつつある。世界のすべての国ぐにが、対等・平等の資格で、世界政治の主人公になる新しい時代が開かれつつある。核兵器廃絶にむけていま起こっている歴史的激動は、そのあらわれである。どんなに巨大な軍事力、経済力をもとうと、道理の力をもたないものは、世界で孤立し、没落せざるをえない。
日本共産党は、半世紀以上にわたって堅持してきた自主独立の精神を発揮し、国際政治から大国主義・覇権主義を一掃するために、奮闘する。
(11)欧米での注目すべき新たな社会変革の動き
欧米では、グローバル資本主義の暴走――世界中を最大利潤を求めて動きまわる多国籍企業や国際金融資本の横暴のもとで、格差と貧困の拡大に反対する幅広い市民運動が発展している。こうした運動に、イラク戦争反対のたたかいなど、伏流水のように存在してきたさまざまな運動が合流し、格差・貧困の是正と平和を求め、選挙をつうじた社会変革をめざす、注目すべき新しい潮流が生まれている。
EU(欧州連合)は、1993年の発足当初は、むき出しの市場の論理優先の経済でなく、社会的規制をくわえた市場経済を統合理念とし、労働条件、社会保障、公共部門などで労働者の要求も反映された指令や規則などを定め、「ルールある社会」をヨーロッパに築くうえで役割を果たした。しかし、とくに2008年の国際経済危機以後、EUが主導して、民営化や公務員削減、医療・教育予算の削減、年金改悪など極端な緊縮政策が実施され、格差と貧困、不況と失業が深刻化した。
こうしたなか、2015年に行われたギリシャ(1月と9月)、ポルトガル(10月)、スペイン(12月)の総選挙で、緊縮政策の転換を求める市民運動と連携した政党が相次いで勝利・躍進し、ギリシャとポルトガルでは新政権樹立につながった。イギリスでは2015年9月、労働党の党首選挙で、イラク戦争の反対運動を主導した「戦争阻止連合」の全国議長をつとめるジェレミー・コービン氏が党首に選出された。緊縮政策、失業、格差と貧困の拡大などに抗議する青年層がコービン勝利の立役者となった。
ヨーロッパでは、グローバル資本主義の暴走と、深刻な経済危機のもとで、移民排斥を主張する右翼排外主義の潮流の台頭という事態も起こっており、社会進歩か逆行かの重大な岐路に立っていることも重視しなくてはならない。
米国では、「人口の1%の最富裕層のための政治ではなく、99%のための政治」を主張し、イラク戦争に早くから反対し、「民主的社会主義者」を名乗るバーニー・サンダース上院議員が、米大統領選挙の民主党予備選で、青年層の大きな支持を集め、大健闘した。そこにあらわれたのは、従来の米国政治とそれをすすめてきた支配者層へのかつてない不信感と怒り、政治変革への願いだった。
「サンダース現象」は米国の市民運動に根をもったものである。さまざまな市民運動が底流にあるが、その一つは、「人口の1%の富裕層の貪欲と腐敗の根絶」を掲げ、米金融界の中心地ウォール街の占拠を訴えた、2011年の「オキュパイ(占拠)」運動である。運動は、数カ月で終息したように見えたが、サンダース候補への草の根からの広範な支持となり、再び地表にあらわれた。
いま一つは、2012年秋、世界最大の小売りチェーン「ウォルマート」の労働者とニューヨークのファストフード店の労働者が、賃金引き上げを求めてストライキに立ち上がったことをきっかけに、全米に広がった「時給15ドル」への最低賃金引き上げを求める運動である。この運動は、「ウォルマート」など各職場で賃上げを勝ち取っただけでなく、ニューヨーク州とカリフォルニア州で「時給15ドル」への最低賃金引き上げが実現するなど、州・自治体単位の最低賃金引き上げにつながった。
欧米での新たな動きは、格差・貧困の是正と平和を求める新しい市民運動と結びついた社会変革の動きとして、いま日本で発展しつつある野党と市民の共闘と響きあうものとなっている。
(12)日本共産党の野党外交――到達点と課題について
日本共産党が、1999年に、従来の各国共産党間の交流の枠をこえて、世界の諸政府、諸政党との交流――野党外交にのりだしてから18年が経過した。
わが党の野党外交は、アジアを中心舞台として開始された。18年前は、アジアの諸政府、諸政党との交流は極めて限られており、ほとんど空白の状態だったが、この18年間に、北東アジア、東南アジア、南アジア、中央アジア、中東と、交流が大きく広がった。アジア政党国際会議(ICAPP)を重視し、2002年の第2回総会以後、連続して参加し、この国際会議の発展に力をつくすとともに、多様な政党と交流を広げてきた。この活動は、わが党の認識を豊かにし、「北東アジア平和協力構想」など新しい政策提起にも実を結んだ。また、異なる文明間の対話と共存(党綱領)の立場に立って、イスラム世界との交流を発展させてきたことも、大きな意義をもっている。アジア・アフリカ・ラテンアメリカとの交流を引き続き発展させる。
わが党は野党外交のなかで、唯一の戦争被爆国の政党として、「核兵器のない世界」の実現を一貫して追求してきた。日本の平和運動と協力して、NPT(核不拡散条約)再検討会議など、国際政治に働きかけてきた。アジア政党国際会議で、繰り返し、「核兵器禁止条約の国際交渉の速やかな実現」を訴えてきた。各国の政府・政党、在京の外交団との懇談でも、核兵器問題を中心テーマの一つにすえ、意見交換を続けてきた。国際政治で「核兵器のない世界」への歴史的激動が起こるもとで、この活動をいっそう強化する。
わが党は、前回大会後、欧州の諸党との交流の強化に努めてきた。フランス、ポルトガル、スペイン、ドイツ、チェコなどの共産党・左翼党との交流にくわえて、ギリシャやスペインなどの進歩的政党との交流が始まっている。欧米で注目すべき社会変革の動きが起こるもとで、欧米の進歩的勢力との交流と連帯を抜本的に強化する。発達した資本主義国でのたたかいを相互に交流し、教訓を学びとることは、日本の社会変革の運動を豊かに発展させるうえでも、世界での進歩的運動の発展のうえでも、大きな意義をもつ。
(13)安倍政権の危険と、それを打ち破る可能性
安倍政権は、これまでの自民党政権にはなかった、突出した危険性をあらわにしている。安倍政権は、2014年7月、集団的自衛権行使容認の閣議決定を行い、2015年9月、安保法制=戦争法を強行成立させた。これらは、選挙で多数をえた政府・与党であっても、その権力行使は憲法の範囲内に限られるという立憲主義を破壊する暴挙だった。立憲主義を破壊した政治は、権力行使に抑制がなくなり、強権・独裁政治となる。安倍政権のもとで、国家権力が憲法を無視して暴走を始めていることは、きわめて重大である。
――総務大臣が、政府が「政治的公平に反する」と判断した放送局には停波を命じることができると発言し、それを内閣が容認するなど、歴代自民党政府でも自制していたメディアへの露骨などう喝・介入・干渉が行われている。
――特定秘密保護法の強行、盗聴法の適用拡大、共謀罪の導入計画など、国民の目と耳と口をふさぎ、自由と権利を侵害し、モノを言えない監視社会をつくる動きが加速している。
――主権者教育や歴史教育への攻撃、道徳の教科化、教科書制度の改悪など、教育内容と教育現場への権力的介入が相次いだ。全国学力テスト体制の強化、人事評価などを通じた教員統制、教育委員会制度の改悪も深刻である。
――沖縄県東村高江のオスプレイ着陸帯建設の強行、沖縄県との話し合いを拒否した一方的な提訴、法律を無視した辺野古工事の再開など、安倍政権による沖縄に対する異常な強権は、地方自治と民主主義、県民の尊厳を根底から踏みにじるものである。
――選挙では争点を隠し、選挙が終われば国民を「だまし討ち」にする政治が横行している。第2次安倍政権で3回の国政選挙が行われたが、政府・与党はいずれの選挙戦も「アベノミクス選挙」などと言って争点を隠し、選挙後に憲法破壊の政治を強行するという、民主政治を否定する手法を繰り返している。
――2016年の臨時国会で、安倍政権と自民党は、公明党、維新の会とともに、TPP協定・関連法、年金カット法、カジノ解禁推進法という三つの大悪法を、国民多数の反対・慎重審議の声を無視して連続的に強行採決した。数の力で三権分立も議会制民主主義も破壊する、究極の「モラルハザード」(倫理喪失)政権の姿があらわになった。
――安倍政権のもとで自民党は、かつての自民党が持っていた保守政党としてのある種の寛容さ、多様性、自己抑制、党内外の批判を吸収・調整する力を失い、灰色のモノクロ政党=単色政党へと変質した。
――安倍暴走政治の目標は、「戦後レジームからの脱却」――日本国憲法のもとでつくられてきた戦後日本のあり方を根本的に変えることである。その「設計図」が「自民党改憲案」にほかならない。
安倍暴走政治の4年間は、野党と市民が国民の願いにこたえる旗印を掲げ、連帯してたたかえば、これを打ち破る可能性があることを明らかにした。
2014年、沖縄では、保守と革新の垣根をこえて米軍新基地建設を許さない「オール沖縄」がつくられ、名護市長選挙(1月)、県知事選挙(11月)、総選挙(12月)で連続勝利をかちとった。2016年7月の参議院選挙では、東北、福島、沖縄という、安倍暴走政治の矛盾がとりわけ集中的に噴き出している地域で、野党統一候補が勝利をおさめた。10月の新潟県知事選挙では原発再稼働問題が大争点となり、野党と市民の統一候補が圧勝した。安倍政権の「争点かくし」が通用せず、国民との矛盾がそのまま争点となった選挙では、野党と市民の共闘が勝利した。
そもそも安倍政権は、「争点かくし」に終始するために、国民に自分たちのめざす政治の中身を語ることができない。国民に説明することができない、説明する気さえない政権では、その国民的基盤をつくることはできない。国民との矛盾が噴き出し、「争点かくし」が通用しなくなるとたちまち崩れるもろさが露呈した。
安倍政権は、歴代自民党政権のなかでも、戦後最悪の反動政権である。このような内閣は、一日続けば、その分だけ、日本に災いをもたらすことになる。日本共産党は、他の野党、市民と力をあわせ、安倍・自民党政権を打倒し、新しい日本をつくるために、全力をあげる。
(14)「戦争する国」づくりを許さない――日本共産党の平和の提案
日米安保条約を地球規模の軍事同盟に根本的に変質させた日米新ガイドラインと安保法制=戦争法のもとで、「戦争する国」づくりがすすんでいる。
安保法制=戦争法には、「戦闘地域」での米軍等への兵站(へいたん)の拡大、戦乱が続いている地域での治安活動、地球のどこでも米軍を守るための武器使用、集団的自衛権の行使――自衛隊の海外での武力行使を可能にする四つの仕組みが盛り込まれており、アメリカが起こす戦争に、世界中で、切れ目なく、自衛隊が参戦する道を開くものである。それは、戦後日本が歩んできた、「一人も殺さない、殺されない」という平和国家としてのあり方を根本から変えてしまうものである。安倍政権は、この法制の本格的な運用にのりだしている。その現実的危険として、次の諸点を強調したい。
――政府は、南スーダンPKO(国連平和維持活動)に派兵されている自衛隊に、「駆け付け警護」「宿営地共同防護」などの新任務付与を閣議決定した。南スーダンでは、2013年12月以降、大統領派と副大統領派の内戦が始まり、2016年7月には、首都ジュバで大規模な武力紛争が起こった。にもかかわらず政府は、「衝突は起こっているが戦闘ではない」などの詭弁(きべん)をろうし、現地の深刻な実態を認めようとしない。新任務付与によって、南スーダンが「殺し、殺される」最初のケースになりかねない。南スーダンでは自衛隊派兵の前提となる停戦合意など「PKO参加5原則」が崩壊していることは明瞭であり、自衛隊を南スーダンから撤退させ、日本の貢献は、憲法9条に立った非軍事の人道支援、民生支援の抜本的強化へと転換すべきである。
――政府は、安保法制=戦争法によって、アメリカを中心とする「有志連合」が行っている対IS軍事作戦への自衛隊の兵站支援が可能になることを認めた。政府は、「政策判断として、ISIL(=IS)に対する軍事作戦に対して後方支援を行うことは考えていない」と弁明したが、そうした「政策判断」を行っている理由を示せなかった。自民党政府は、アフガニスタン戦争でも、イラク戦争でも、アメリカに言われるまま自衛隊を派兵してきた。対IS軍事作戦でも、アメリカからの要求があれば拒否できず自衛隊を参戦させる危険がある。
――政府は、安保法制によって、アフガニスタンに展開した国際治安支援部隊=ISAFのような活動に自衛隊が参加し、治安活動に取り組むことが可能になることを否定しなかった。アフガニスタンは、ISAFの後継である「確固たる支援任務」(RSM)に約1万3000人が参加し、なお深刻な戦乱のなかにある。今後のアフガン情勢の進展いかんで、アメリカが自衛隊の派兵・支援を求めてくる危険がある。
日米軍事一体化を加速する新ACSA(日米物品役務相互提供協定)締結、「武器等防護」運用方針の決定など、集団的自衛権行使の現実的な危険性が生まれている。
憲法違反の安保法制=戦争法を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回することは、引き続き、国政の最大の緊急課題である。そのための世論と運動をさらに発展させることを心から呼びかける。
安倍政権が決定した「国家安全保障戦略」(2013年12月)は、自衛隊の海外派兵の推進とともに、「戦争する国」を支える体制づくりの「設計図」となっている。
――安倍政権のもとで軍事費は4年連続で増えており、2016年度予算では当初予算で史上初めて5兆円を突破した。海外派兵型の兵器が目立ち、高額兵器購入のための後年度負担の増加が、社会保障の切り捨ての要因となることは必至である。
――武器輸出三原則の撤廃(2014年4月)、「防衛生産・技術基盤戦略」の策定(同6月)と防衛装備庁設置(2015年10月)による武器輸出が推進されている。これは日本が「死の商人」となることを宣言したにひとしく、武器を輸出しないことで培ってきた国際的信頼を自ら損なう道にのりだしたことを意味する。
――防衛省は、2014年、大学・研究機関との研究協力を本格化させる方針を策定し、2017年度予算案は、研究者を兵器開発に動員するための予算を18倍に増額させた。「軍学共同によって戦争に加担する過ちを二度とくりかえしてはならない」と、全国の学者・研究者を中心とした反対運動が広がっている。
安保法制=戦争法廃止のたたかいと一体に、「戦争する国」を支える体制づくりを許さないたたかいを進めることは急務である。
前大会決議は、北東アジアに存在する紛争と緊張を、平和的・外交的手段によって解決する抜本的対案として、「北東アジア平和協力構想」――(1)域内の平和のルールを定めた北東アジア規模の「友好協力条約」を締結する、(2)北朝鮮問題を「6カ国協議」で解決し、これを平和と安定の枠組みに発展させる、(3)領土問題の外交的解決をめざし、紛争をエスカレートさせない行動規範を結ぶ、(4)日本が過去に行った侵略戦争と植民地支配の反省は、不可欠の土台となる――を提唱した。
この3年間、わが党はこの「構想」をもって関係各国の政府・政党・大学・研究所との懇談を重ねてきたが、多くの評価と賛同が寄せられた。マレーシア戦略国際問題研究所(ISIS)との懇談では、わが党の「構想」に対して、「きわめて具体的だ」「ISISの中でも北東アジアでのTAC(友好協力条約)の議論を始めている」という評価と反応が寄せられた。引き続き、この「構想」をもっての対話をすすめ、国内外でこの方向での合意形成がはかられるよう力をつくす。
北朝鮮の核・ミサイル開発に国際社会がどう対応すべきか。日本共産党は、2016年9月の6中総決定で、(1)軍事対軍事の危険な悪循環をさらに深刻にする道でなく、対話による解決に徹する、(2)国際社会が本気になって「核兵器のない世界」への具体的行動に取り組む、という二つの基本的方向を示した。
国際社会のさまざまな努力にもかかわらず、北朝鮮の核・ミサイル開発を止めることができていないという事実を踏まえ、従来の延長線上にとどまらない外交的対応と、中国を含む国際社会による制裁の厳格な実施・強化という両面での対応を抜本的に強化することによって、北朝鮮の核・ミサイル開発の手を縛り、その放棄に向かわせることが重要である。
2005年9月の「6カ国協議」の「共同声明」、2002年9月の「日朝平壌宣言」に立ち返り、核・ミサイル・拉致・過去の清算などの諸懸案の包括的解決をめざす。
人類がグローバルな規模で直面している諸課題の解決のために、日本が憲法9条を持つ国として、次の方向での努力を行うことを提案する。
――国際テロ根絶。戦争でテロはなくせず、テロと戦争の悪循環をもたらすだけである。三つの原則を堅持してテロ根絶に取り組む。(1)テロ根絶の方法は、国連中心に、国連憲章、国際法、国際人道法、基本的人権と両立する方法で、“法による裁き”をくだすことを基本にすえる。テロ組織への資金・人・武器の流れを断つための国際的な協力を確実にすすめる。(2)貧困を削減し、教育を改善し、地域紛争を平和的に解決するなど、テロが生まれる根源を除去する。(3)テロを特定の宗教や文明と結びつけず、異なる諸文明間の対話と共存の関係の確立に力をつくす。
――貧困の削減。いまなお8億3600万人が極度の貧困に、7億9500万人が慢性的な飢餓に苦しんでいる(国連開発計画)。2015年9月の国連首脳会議は「2030年までに極貧や飢餓を根絶」することを誓約した。日本は援助対象国の自主的・自立的な発展支援を目的に定めるODA(政府開発援助)を充実させる。食料、保健、教育など基礎的生活分野の支援を中心におき、ODAの規模を引き上げ、国際目標(国民総所得比0・7%)実現に向けて努力する。
――難民への支援。世界の難民・国内避難民は6530万人に達し、第2次世界大戦後で最悪となっている。日本では2015年に、前年比5割増の7586人が難民認定を申請したが、認定されたのは27人にとどまった。難民の定義をあまりにも狭く解釈する立場を抜本的にあらため、難民を受け入れ、生活、教育などの援助を行う。
――人道的危機への対応。内戦などがもたらしている人道的危機に、国際社会がどう対応するかが問われている。今日の国連PKOは、武力を行使しての「住民保護」を主任務とするものに変質し、憲法9条をもつ日本がいよいよ参加できないものになっている。国連PKOへの自衛隊の派兵は中止し、日本の支援は、非軍事の人道支援、民生支援の抜本的強化という方向に転換する。
――気候変動への対応。2015年12月、パリで開かれた国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)は、世界197カ国・地域が参加する、地球温暖化対策の新しい枠組み「パリ協定」を採択し、2020年から開始されることになった。日本は、世界第5位の温室効果ガスの大量排出国でありながら、安倍政権が決めた2030年度の削減目標は、1990年比でわずか18%というきわめて不十分なものである。削減目標を抜本的に上積みする。発電コスト削減優先でCO2排出量を増やす石炭火力増設をやめ、再生可能エネルギーの大量普及を柱にすえ、原発に依存しないエネルギー政策に転換する。
(15)格差と貧困をただす経済民主主義の改革を
安倍政権の経済政策――「アベノミクス」が始まって4年になるが、その行き詰まりと破たんは明瞭である。
「世界で一番企業が活躍しやすい国」をめざすという掛け声のもと、日銀の「異次元金融緩和」や3年間で4兆円もの企業減税によって、大企業は3年連続で「史上最高益」を更新し、大株主など富裕層にも巨額の富がもたらされた。
しかし、労働者の実質賃金は4年のうちに、年額で19万円も減り、家計消費は実質15カ月連続で対前年比マイナスとなっている。日銀の「異次元金融緩和」も実体経済には全く効果がなく、副作用だけが拡大し、事実上の政策変更を余儀なくされた。
さらに重大なことは、「アベノミクス」が、格差と貧困をいっそう拡大し、社会と経済の危機をさらに深刻にしていることである。
自民党政権のもとで、とりわけ1990年代後半以降、新自由主義的な経済政策が強行されたことにより、所得、資産など、あらゆる分野で格差と貧困が広がり、日本の経済と社会の大問題となっている。日本の格差問題を、“富裕層への富の集中”、“中間層の疲弊”、“貧困層の拡大”の三つの視点からとらえると、次の特徴が浮き彫りになる。
――ごく一握りの“富める者”はより巨額の富を手にいれた。純金融資産5億円以上を保有する超富裕層では、1人当たりが保有する金融資産は1997年から2013年の間に2倍(6・3億円から13・5億円)に増えた。大株主にばく大な配当と、「株価つり上げ政治」による株式の値上がり益がもたらされた。
――国民の所得が全体として低下するなかで、中間層の疲弊が深刻になっている。労働者の平均賃金は、1997年をピークに、年収で55万6千円も減少した。給与所得者数を所得階層別にみると、増加しているのは年収2000万円以上のごく一部の高額所得者と、年収500万円以下の層であり、年収500万円〜1000万円の層は減少している。大企業によるリストラと正社員の削減、非正規雇用労働者の増大で、低賃金労働者が増え、中間層がやせ細っている。
――貧困が広がり、先進国のなかでも「貧困大国」となった。1997年と2012年とを比較して、日本の貧困率は14・6%から16・1%となりOECD(経済協力開発機構)34カ国の中でワースト6位となった。子どもの貧困率は13・4%から16・3%となり「貧困の連鎖」が深刻である。働きながら生活保護水準以下の収入しかないワーキングプア世帯は、就業者世帯の4・2%から9・7%と2倍にもなった。「貯蓄ゼロ世帯」(2人以上世帯)は30・9%、1997年から2015年の間に3倍に急増した。
超富裕層がますます富み、国民全体の所得が低下するなかで中間層が疲弊し、貧困層が増大する――これが現在の日本社会の姿である。貧困は、特別な事情でなく、倒産、失業、リストラ、病気、親や家族の介護などで職を失えば、誰もが貧困に陥ってもおかしくない。「板子一枚下は地獄」。そうした社会に陥っている。
格差と貧困の拡大、中間層の疲弊をいかに克服するかを、国の経済政策の基本にすえる必要がある。日本社会と日本経済の持続可能な発展にとっても、この問題に真正面から取り組む経済政策が必要である。
日本共産党は、格差と貧困をただす経済民主主義の改革として、次の四つの改革を提案する。
消費税増税は景気を悪化させるだけでなく、格差と貧困の拡大に追い打ちをかける。貧困層が増大するもとで、この層に新たな負担を求めることは限界である。富裕層と大企業は、巨額の富を蓄積し、税負担の能力を十分にもっている。
――消費税10%への増税を中止し、「消費税に頼らない別の道」へ転換する。
――もっぱら大企業が利用する優遇税制の結果、大企業の実質法人税負担率は12%しかなく、中小企業の19%に比べても低い(2014年度)。優遇税制をあらため、せめて中小企業並みの負担を求める。
――富裕層の所得の多くを占める株取引に対する税率が低くなっている結果、所得1億円程度を超えると逆に税負担率が下がってしまう。大株主優遇の不公平税制をあらため、富裕層に応分の負担を求める。所得税の累進を強化する。
――タックスヘイブン(租税回避地)を利用した大企業や富裕層の「税逃れ」を許さない法整備をすすめ、国際的な協力体制をつくる。世界的な「法人税引き下げ競争」を見直し、国際協調で下げすぎた法人税率の適切な引き上げをはかる。
日本の国民1人当たりの公的社会支出は、アメリカの9割以下、ドイツの8割、フランスの7割の水準にとどまっている(2013年)。高等教育費用に占める公費割合は、OECD諸国で下から2番目の低い水準である。軍拡や大型開発中心の予算にメスを入れ、社会保障、教育、子育て支援など、格差と貧困の是正につながる予算を増やす。
――安倍政権がすすめる社会保障費の「自然増削減」路線は、医療費負担増、年金削減、介護サービス取り上げ、生活保護切り下げなど、国民の生存権を脅かし、将来不安を増大させ、格差と貧困を拡大している。社会保障削減路線を中止し、拡充をはかる。
――高い学費によって進学の夢が絶たれ、卒業後も奨学金の返済に苦しむなど、世代を超えて格差と貧困が続くという深刻な事態が生じている。大学授業料を段階的に半減し、給付型奨学金を創設するなど、若者の未来をひらく予算を拡充する。
――安倍政権は「待機児童解消」に向け「50万人分の受け皿」をつくるとしているが、従来の自治体の取り組みとは別に追加されるのは、企業主導型保育5万人分にすぎない。認可保育所の30万人分の増設と、保育士待遇の大幅改善をすすめる。
――教育予算を抜本的に拡充し、教育費負担の軽減、少人数学級など教育条件の整備に政治が責任を果たす。教職員の多忙化・非正規化を解決し、専門職として待遇の抜本的改善をはかる。大学・研究機関の基礎研究を重視し、科学・技術の調和のとれた発展と国民本位の利用をはかる。
安倍政権は、「働く人の立場に立った『働き方改革』をすすめる」といいながら、実際には、労働者派遣法の改悪で不安定・低賃金の「使い捨て」労働を広げ、「残業代ゼロ法案」の成立を狙うなど、いっそうの改悪をすすめようとしている。「働く人の立場」と言いながら、実際には財界の立場に立った雇用破壊をすすめる策動を許さず、人間らしく働けるルールを確立し、格差と貧困の根本的是正に道を開く。
――長時間労働の規制――残業時間の法的規制、インターバル規制によって、過労死を生み出す長時間過密労働を解消する。「残業代ゼロ法案」を撤回させる。「サービス残業」を根絶し、「ブラック企業」を規制する。「解雇の金銭解決制度」に反対し、無法なリストラをやめさせる。
――非正規から正規への流れをつくるため、労働者派遣法を抜本改正して、派遣労働は一時的・臨時的なものに制限する。労働基準法、男女雇用機会均等法、パート労働法、派遣法などに「均等待遇」「同一労働同一賃金」の原則を明記し、格差をなくす。
――386兆円(銀行・保険業を含む)に達した大企業の内部留保の一部を活用して、大幅賃上げの実現をせまる。最低賃金はただちに時給1000円を実現し、1500円をめざす。早期実現のため、中小企業に対する賃金助成や社会保険料の減免などの本格的支援を行う。公契約法・条例の制定をすすめ、官製ワーキングプアをなくす。
大企業と中小企業では、労働者の賃金に大きな格差がある。事業所規模で見ても、中規模事業所(従業員30人〜99人)で大企業の約6割、小規模事業所では5割程度となっている。
大都市と地方との格差拡大、地域経済の疲弊も深刻であり、日本社会と経済の大問題になっている。農業では、2000年代に入ってから、総生産額がマイナス7・3%、農業所得はマイナス17・3%と、生産が減り、それをはるかに上回る規模で所得が減っている。地域経済を支えている中小企業、農林水産業の困難と衰退は、輸送、商業、加工など関連産業の苦境にもつながり、地域経済の衰退に拍車をかけている。
――中小企業を「日本経済の根幹」に位置づけ、中小企業の商品開発、販路開拓、技術支援などの“振興策”と、大企業・大手金融機関の横暴から中小企業の経営を守る“規制策”を「車の両輪」としてすすめる。
――農産物の価格保障・所得補償を抜本的に強化し、安心して再生産できる土台をつくる。公共建築への国産材利用促進など林業振興策、魚価安定対策の強化や資源管理型漁業など漁業経営の支援を行う。食料自給率向上を国の産業政策の重要な柱にすえる。
――地域振興策を「呼び込み」型から、地域にある産業や企業など今ある地域の力を支援し、伸ばす、「内発」型に転換する。公共事業を大型開発から、地域循環・生活密着型に転換する。再生可能エネルギー開発に本格的に取り組む。
――鉄道の地方路線の廃止が地域経済の衰退と疲弊をさらに加速している。その一方で、リニア新幹線には、採算性も環境破壊の影響もまともに検討されないままに、9兆円もの巨額が投資されようとし、政府もJR東海に3兆円の財政投融資を用意した。リニア新幹線建設を中止し、国が鉄道をはじめ地方の公共交通を確保するために責任を果たすことを求める。
――最低賃金の地域間格差を是正し、全国一律最低賃金制を確立する。
東日本大震災に続き、熊本地震や台風による被害など、大きな災害が相次いでいる。国民の命と財産を守る政治の責任が問われている。
――不幸にして大きな災害にあっても、生活と生業(なりわい)の再建への希望がもてる社会にしていくことが必要である。被災者生活再建支援法を改正し、「全壊」の場合の支援額を300万円から500万円に引き上げること、「半壊」「一部損壊」も支援対象にすることを強く求める。地域経済とコミュニティーの担い手である中小商工業者・農林漁業者の事業再建への支援を、施設・設備再建への直接支援を含め、抜本的に強化する。
――防災施設の整備と安全点検の徹底、消防や住民などを中心とした地域の防災力や自治体の防災体制の強化、乱開発の規制、住宅の耐震化促進など、防災のまちづくりをすすめる。普段から地域の医療や福祉のネットワークを整備・維持・強化することは、災害時に住民の命を守るために大きな役割を果たす。
――公共事業の重点を、大型開発・新規建設から、防災上も緊急の課題となっている老朽化した施設の更新や耐震化にうつす。復興に名を借りた大型開発の押し付けなど、政治のゆがみをただす。
安倍政権は、トランプ次期米大統領が「離脱」を宣言し、TPP発効が絶望的になっているにもかかわらず、国民の反対と慎重審議を求める声を無視して、TPP協定と関連法を強行採決した。これは安倍政治が世界の動きを見る力も喪失した暴走政治であることを示した。同時に、トランプ氏が、TPPからの「離脱」とともに、「2国間貿易協定をすすめる」としているもとで、米側からのいっそうの譲歩を迫られる条件をつくったことになり、きわめて危険で愚かな政治である。農産物などの関税撤廃や、食の安全、医療、雇用、政府調達、知的財産権などの非関税障壁撤廃、ISDS条項など、TPP協定やその交渉過程でアメリカに譲歩した内容が日本の「国際公約」とみなされ、そこから、さらなる譲歩を迫られる危険がある。
国民の生活と経済主権を米国と多国籍企業に売り渡す、不公正な対米交渉を許さないたたかいに取り組む。いま問われているのは、「自由貿易か、保護主義か」ではない。「自由貿易」の名で、多国籍企業の利潤を最大化するためのルールをつくるのか、各国国民の暮らし、経済主権を互いに尊重する公正・平等な貿易と投資のルールをつくるのかである。
(16)原発再稼働を許さず、「原発ゼロの日本」を
安倍政権は、原発を「重要なベースロード電源」として、将来にわたって推進することを決め、原発再稼働への暴走を続けている。原発再稼働の是非は、国政の熱い重大争点である。再稼働路線は行き詰まり、その矛盾がさまざまな形で噴き出している。
――国民世論が、再稼働の暴走の前に立ちはだかっている。この間、鹿児島県と新潟県という二つの原発立地県の知事選挙で、原発再稼働問題が最大争点となり、野党と市民の力が発揮されて勝利した。どんな世論調査でも再稼働反対は5割を超える。福島原発事故を体験し、原発再稼働反対は揺るがない国民世論の多数となっている。
――東京電力福島第1原発事故は、事故から6年近くが経過しても、「収束」とはほど遠く、8万1千人もの人々が避難生活を強いられている。安倍政権がすすめる避難指示解除と賠償の打ち切りや除染の不徹底などが、被害者に新たな苦しみを押し付けている。原発再稼働のために福島を切り捨てる政治が矛盾を広げ、深い怒りが広がっている。
――安倍政権は、原子力規制委員会の「世界で最も厳しい基準」で合格したものを再稼働するとしている。しかし、その実態は、重大事故対策でもEU諸国の基準にはるかに及ばず、地震・火山対策でもまともな基準と呼べるものではない。最悪の「安全神話」の復活で、再稼働への暴走が、ここでも矛盾を広げている。
――2年近い「稼働原発ゼロ」(2013年9月〜15年8月)の体験を通じて、日本社会は原発なしでもやっていけることが国民的認識となった。電力需給の面でも、原発再稼働の必要はない。
――政府・与党は、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉に追い込まれた。これは「核燃料サイクル」の破たんを意味するとともに、より根本的には使用済み核燃料の処理方針の破たんを意味する。原発を再稼働すれば、計算上わずか6年で、全ての原発の使用済み核燃料の貯蔵プールは満杯となりあふれ出す。処理方法のない「核のゴミ」という点からも、原発再稼働路線の行き詰まりは明瞭である。
――原発は、国民に巨大な経済負担を、累積的に、半永久的に強要する。政府は、福島原発事故の処理費用がこれまでの倍の21・5兆円にのぼるといいだし、これらをすべて税金と電気料金に上乗せすることによって、国民にツケをまわそうとしている。その一方で、東電の株主や資金を貸した金融機関は、責任を取ろうとしない。全国の原発の廃炉の費用、「核のゴミ」の対策の費用など、どれをとっても子々孫々にまで巨額の費用を押し付けるのが原発である。
破たんした原発再稼働路線をきっぱり中止し、「原発ゼロの日本」に本格的に踏み出すべきである。「核燃料サイクル」路線からすみやかに撤退すべきである。原発輸出をきっぱり断念すべきである。
福島原発事故の被災者支援にあたっては、被災者を分断するいっさいの線引きや排除、切り捨てを行わず、すべての被災者が生活と生業を再建できるまで、国と東京電力が責任をもって等しく支援することを強く要求する。
「原発ゼロ」の決断と一体に、再生可能エネルギーの飛躍的普及をはかる。日本共産党は、2030年までに電力需要の4割を再生可能エネルギーで賄うという目標をもち、地域環境に配慮しながら、それを実行する手だてを着実にとることを提唱する。この目標は、世界の再生可能エネルギー先進国に追いつくための最低限の目標である。
この道こそ、国民の生命と安全を守り、エネルギー自給率を向上させ、経済の発展にとっても大きな効果がある、真に未来ある道である。
(17)沖縄をはじめとする米軍基地問題――全国の連帯を訴える
安倍政権は、沖縄県名護市辺野古の新基地建設、東村高江のオスプレイ着陸帯建設、伊江島飛行場でのF35戦闘機着陸帯建設などを、異常な強権をむきだしにして強行している。これらの建設の目的は何か。米軍は沖縄をどうしようとしているか。
――辺野古新基地は普天間基地の「移設」などという生易しいものではない。1800メートルの滑走路を2本もち、強襲揚陸艦も接岸できる軍港をもち、耐用年数200年の最新鋭の巨大基地がつくられる。キャンプ・シュワブや隣接する辺野古弾薬庫、キャンプ・ハンセンと一体運用され、基地機能は飛躍的に強化される。
――高江の基地強化でオスプレイの訓練はさらに激化し、伊江島の基地強化でF35は新たな訓練拠点をもつことになる。オスプレイとF35は海兵隊部隊とともに辺野古新基地で強襲揚陸艦に搭載されて、海外に出撃することになる。
いま沖縄で起こっているのは、「基地負担軽減」とは正反対のことである。米軍は、辺野古、高江、伊江島などの基地建設・強化によって、沖縄の海兵隊基地を「戦略的出撃拠点」(米太平洋海兵隊の基地運用計画「戦略展望2025」)――世界への「殴り込み」の一大拠点として抜本的に強化・固定化しようとしているのである。
2016年12月、米海兵隊オスプレイが名護市の海岸に墜落した。沖縄の米軍トップが「占領者意識」をむき出しにした暴言を吐き、日本の捜査機関が「原因究明」のカヤの外に置かれるなど、日本の植民地的実態が浮き彫りになり、沖縄でも全国でも怒りが広がっている。米軍の調査でも事故原因は特定されず、日本の捜査機関が独自の情報を何も持っていないにもかかわらず、日本政府は、オスプレイの訓練の再開について「理解」すると表明した。沖縄県民や国民の安全より「日米同盟」を優先する恥ずべき態度である。
沖縄では、名護市長選挙、県知事選挙、総選挙(2014年)、参議院選挙(2016年)と、繰り返し新基地建設反対の圧倒的審判が下されている。この民意を踏みつけにして、新基地建設・基地強化を強行することは、民主主義の国では絶対に許されない。
沖縄の基地強化は、全国各地の基地強化と一体のものである。
――オスプレイは日本全国の重大問題である。沖縄に配備されている海兵隊のオスプレイは、横田基地(東京都)、厚木基地(神奈川県)、キャンプ富士(静岡県)、岩国基地(山口県)などに飛来し、訓練を繰り返している。木更津基地(千葉県)には、オスプレイの日米共同整備拠点がつくられている。さらに横田基地には、米空軍の特殊作戦用のオスプレイ10機が、2017年から配備される。佐賀空港に自衛隊のオスプレイ配備がねらわれている。自衛隊が導入を決めているオスプレイを合わせれば、日米あわせて50機ものオスプレイが日本中を飛び回ることになる。
――横須賀基地(神奈川県)には、新しい原子力空母ロナルド・レーガンが配備されたのに続き、新型イージス艦の配備が相次いでいる。
――岩国基地に2017年1月からF35が16機配備される。伊江島で訓練するのはこのF35である。一部は佐世保を母港とする強襲揚陸艦に搭載され、海外展開することになる。空母艦載機約60機も2017年をめどに移駐し、所属機は約130機と東アジア最大の航空基地となる。
こうしていま、在日米軍基地は、海兵隊と空母打撃群の両面で、世界への「殴り込み」の一大根拠地として強化されようとしている。
海外の侵略戦争への出撃基地を日本に置き続けることを許していいのかどうかが、いま問われている。海兵隊と空母打撃群の基地を国内に置くことを認めている国は、世界に日本以外にどこにもなく、国際的にも日本の地位にかかわる重大問題である。その意味で、沖縄県議会が「米海兵隊の撤退」の要求決議をしたことは、問題の核心に迫る意義をもつものである。沖縄と本土が連帯して、基地強化のたくらみを許さないたたかいを発展させることを、心から呼びかける。
(18)憲法改悪を許さず、憲法を生かした新しい日本を
2016年の参議院選挙の結果、衆議院と参議院で改憲勢力が3分の2を占めることとなったことの危険性はいささかも軽視できない。同時に、安倍政権の改憲策動には、二つの致命的弱点があることを正面からとらえ、安倍政権のもとでの憲法改悪を許さないたたかいを発展させることが重要である。
第一は、現行憲法のどこに問題があり、どこをどう変えなければならないかを、いっさい具体的に提起できないということである。
第2次安倍政権の発足後、安倍首相がまず力を入れたのは、憲法改正発議要件を緩和する「憲法96条先行改憲論」だった。しかし、「立憲主義に反する」との批判をあびて取り下げられた。次に「緊急事態条項」が主張されたが、これもその危険性が広く明らかにされ、思惑通りにはすすんでいない。
安倍政権の改憲策動の「本丸」が憲法9条改憲――「戦争する国」づくりの完成にあることは明らかである。しかし国民の批判を恐れてこの「本音」を語ることができない。とにかく改憲をと、あれこれの改憲案を手を替え品を替えて繰り出すたびに、「改憲先にありき」という逆立ちした、憲法を愚弄(ぐろう)する姿勢が浮き彫りになり、憲法改定を行う理由がないことを自ら告白する結果となっている。
第二は、「自民党改憲案」という立憲主義を根底から否定する希代の改悪案を、党の公式の改憲草案に据えていることである。
「自民党改憲案」は、憲法9条2項を削除し、「国防軍」の創設を明記し、海外での武力行使を無制限に可能にするものとなっている。この草案に盛り込まれた「緊急事態条項」は、首相が「緊急事態」の宣言を行えば、内閣が立法権を行使し、国民の基本的人権を停止するなど、事実上の「戒厳令」を可能にするものである。
憲法13条の「個人として尊重」を「人として尊重」におきかえ、「個人の尊重(尊厳)」という立憲主義の根本原理を抹殺している。「公益及び公の秩序」の名で基本的人権の抑圧ができる仕組みに改変されている。基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と規定した憲法97条がまるごと削除されている。これらは「憲法によって権力を縛る」という立憲主義を全面的に否定し、「憲法を憲法でなくしてしまう」ものにほかならない。
日本共産党は、他の野党、国民運動と連携し、安倍政権の改憲策動の致命的弱点をきびしく追及し、この企てを打ち破るために全力をあげる。
日本国憲法は、憲法9条という世界で最もすすんだ恒久平和主義の条項をもち、30条にわたるきわめて豊かで先駆的な人権規定が盛り込まれている。「現行憲法の前文をふくむ全条項をまもり、とくに平和的民主的諸条項の完全実施をめざす」(党綱領)ことが、わが党の抜本的対案である。人権規定にかかわっては、以下の諸点が大切になる。
――憲法13条が保障した「個人の尊重」「個人の尊厳」は、立憲主義による権力制限の究極の目的である。「個人の尊厳」が、政治、経済、教育、文化、市民生活など、あらゆる分野で貫かれる社会をめざす。
――憲法19条、21条、23条が保障した「思想及び良心の自由」「表現の自由」「学問の自由」が、強権政治のもとで脅かされている。20条の「信教の自由」を含め、市民的自由が全面的に保障される社会をめざす。
――憲法14条、24条、44条は、「両性の平等」について、社会的にも、家庭でも、政治参加でも詳細に規定している。政治、経済、社会のあらゆる分野に根強く残されている女性への差別を一掃する。憲法24条は、法律は「個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚」して制定されるべきと明示しており、民法における男女差別のすみやかな是正、選択的夫婦別姓の実現をはかる。日本での女性差別問題は、国連女性差別撤廃委員会など公的な国際機関から繰り返しきびしい批判と是正の勧告を受けながら、無視・放任され続けている。女性差別撤廃の運動はいよいよ重要である。憲法14条の「法の下の平等」にたって、性的マイノリティーにたいする差別と偏見をなくし、権利をまもる。
――憲法25条は、国民の生存権を保障し、社会保障の増進は国の責任と明記している。社会保障費「自然増」を削減する政治は、この規定に真っ向から背くものである。生存権を保障する社会保障、最低賃金を実現する。障害者の生活と権利、尊厳を守りぬく。
――憲法26条は、国民の教育を受ける権利をうたっている。「異常な競争教育」「教育の自由への権力的介入」「異常な高学費」などのゆがみをただし、一人ひとりの子どもの「人格の完成」を目的においた教育の民主的改革をはかる。教育をふくむ子どもの権利の保障について、国連子どもの権利委員会による一連の勧告もふまえて取り組む。
――憲法27条は、「国民の勤労権」を保障し、労働時間など労働条件に関する基準は法律で定めるとある。低賃金で不安定な非正規雇用の増大、残業の法的規制すらない状況をただし、人間らしい雇用のルールをつくる。憲法28条の団結権、団体交渉権、団体行動権(ストライキ権など)という労働基本権を全面的に保障する。
――憲法31条〜40条は、「人身の自由」を保障し、そのための公正な刑事手続きを定めている。取り調べの全過程の可視化、証拠の全面開示など、刑事司法の抜本改革を行い、冤罪(えんざい)のない社会をめざす。
――企業・団体献金は、カネの力で政治をゆがめ、国民主権を侵害しており、全面的に禁止する。思想の自由を侵害する憲法違反の政党助成金制度を廃止する。大政党有利に民意をゆがめる小選挙区制を廃止し、比例代表中心の制度への改革をはかる。
変えるべきは憲法でなく、憲法をないがしろにした政治である。世界に誇る日本国憲法の進歩的な諸条項を生かした新しい日本をつくるために力をつくす。
(19)侵略戦争を肯定・美化する歴史逆行、排外主義を許さない
安倍首相は、2015年8月、戦後70年にあたっての首相談話(「安倍談話」)を発表した。「安倍談話」には、「侵略」「植民地支配」「反省」「お詫(わ)び」などの文言がちりばめられたが、日本が「国策を誤り」「植民地支配と戦争」を行ったという「村山談話」に示された歴史認識の核心的内容はまったく語られず、「反省」と「お詫び」も過去の歴代政権が表明したという事実に言及しただけで、首相自らの言葉としては語らないという欺瞞(ぎまん)に満ちたものとなった。暴力と強圧をもって朝鮮半島の植民地化をすすめた日露戦争を賛美したことは、乱暴きわまりない歴史の歪曲(わいきょく)であり、植民地支配正当化論である。
「安倍談話」は、戦後50年にあたって「村山談話」が表明した立場を、事実上、投げ捨てるものとなった。「安倍談話」によって「村山談話」を“過去の文書”とし、日本政府の歴史認識を大きく後退・変質させることは許されない。日本共産党は、「村山談話」の核心的内容を、今後とも日本政府の歴史認識の基本にすえ、「談話」の精神にふさわしい行動をとることを強く求める。
戦後70年の首相談話が有害な内容になった根底には、安倍首相本人も含めて、安倍政権の閣僚のほとんどが、「日本会議国会議員懇談会」「神道政治連盟国会議員懇談会」の構成員であることが示すように、この政権が、侵略戦争を肯定・美化し、歴史を偽造する極右勢力によって構成され、支えられているという問題がある。この内閣の閣僚によって靖国神社参拝が繰り返され、首相自身も玉ぐし料・真榊(まさかき)の奉納を続けていることは、侵略戦争美化の立場に身を置く行動として許されない。
日本軍「慰安婦」問題について、2015年12月の日韓外相会談で合意がかわされた。しかしこの合意はあくまで問題解決の出発点であり、すべての「慰安婦」被害者が人間としての尊厳を回復してこそ真の解決となる。そのために日本政府は韓国政府と協力して誠実に力をつくさなければならない。「慰安婦」問題で「軍の関与と強制」を認めた「河野談話」は、「歴史研究、歴史教育を通じて、このような問題を永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さない」と明記しており、子どもたちに歴史の事実を語り継いでいくことは、わが国の責務である。この間、わが党は、見解「歴史の偽造は許されない」の発表(2014年3月)など、日本軍「慰安婦」問題での逆流に徹底的な批判をくわえ、歴史の真実を明らかにしてきたが、こうした努力を引き続き行っていく。
安倍政権の歴史逆行の姿勢が、日本の右翼勢力や排外主義勢力を勢いづかせていることも重大である。この間、全国各地で、在日韓国・朝鮮人や中国人を罵倒するヘイトスピーチとデモが多発してきた。民族差別をあおるヘイトスピーチを根絶するために、政治が断固たる立場にたつことが必要である。
安倍政権の「戦争する国」への暴走は、過去の侵略戦争を肯定・美化する歴史逆行の政治と一体のものである。過去の侵略戦争を反省しないものが、海外での戦争に乗り出すことほど危険なことはない。このような政権に日本の政治を担う資格はない。
(20)日米安保条約、自衛隊――日本共産党の立場
2016年の参議院選挙で、政府・与党は、野党と市民の共闘に対して強い危機感を抱き、安倍首相を先頭に、さまざまな攻撃を行った。とくに彼らが力を入れたのは、「共産党の綱領には、安保条約をなくすと書いてある。自衛隊は憲法違反だ、解散すると書いてある。こんな無責任な話はない。こんな党と共闘するのか」といった攻撃である。わが党は、選挙戦のなかで断固たる反論をくわえたが、こうした攻撃に立ち向かう基本姿勢として、次の二つの点を強調しておきたい。
第一は、いま問われている真の争点を、太く押し出すことである。いま問われているのは、日米安保条約や自衛隊の是非ではない。安保法制=戦争法によって、憲法9条を踏み破った自衛隊の海外での武力行使――「海外で戦争する国」づくりを許していいのか。これがいま問われている真の争点である。そして、「こんな危険な道は許せない」という一点で、野党と市民は、日米安保条約や自衛隊に対する態度の違いをこえて結束している。日本共産党は、共闘の一致点を何よりも大切に考え、野党と市民の共闘に、日米安保条約や自衛隊についての独自の立場を持ち込まないという態度を、最初からとっている。
政府・与党の攻撃は、この真の争点を隠し、自らの憲法破壊の悪行を覆い隠すためのものであることをズバリ批判することが重要である。
第二に、日米安保条約や自衛隊に対する日本共産党の独自の立場を広く明らかにする、わが党独自の努力が大切である。
党綱領は、「日米安保条約を、条約第十条の手続き(アメリカ政府への通告)によって廃棄し、アメリカ軍とその軍事基地を撤退させる。対等平等の立場にもとづく日米友好条約を結ぶ」と明記している。
――日米安保条約にもとづいて日本に駐留する米軍は、海兵遠征軍、空母打撃群など、日本の防衛とは無関係の、干渉と介入を専門とする「殴り込み」部隊である。
――歴史を見ても、ベトナム侵略戦争、アフガニスタン報復戦争、イラク侵略戦争など、日米安保条約によって、日本が、米国の無法な戦争の根拠地とされ、戦争に協力させられ、他国の民衆の殺害に加担させられてきたのは、厳然たる事実である。
――在日米軍は、沖縄・普天間基地の「クリアゾーン」(利用禁止区域)問題、NLP(空母艦載機の夜間離着陸訓練)、米軍機の低空飛行訓練、米兵犯罪が裁かれないまま放置されるなど、米国内でも許されないような異常な特権を享受している。
これらの基本的事実を伝え、日米安保条約をなくしてこそ、日本はアメリカの引き起こす戦争の根拠地から抜け出すことができ、米軍基地の重圧から解放され、本当の独立国といえる国になることを明らかにし、日米安保条約廃棄を求める国民的多数派をつくるための独自の努力を行う。
党綱領は、「自衛隊については、海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。安保条約廃棄後のアジア情勢の新しい展開を踏まえつつ、国民の合意での憲法第九条の完全実施(自衛隊の解消)に向かっての前進をはかる」とのべている。
――わが党は、憲法9条にてらせば、自衛隊が憲法違反であることは明瞭だと考える。この矛盾をどう解決するか。世界史的にも先駆的意義をもつ憲法9条という理想に向かって自衛隊の現実を改革していくことこそ政治の責任であるとの立場に立つ。
――憲法と自衛隊の矛盾の解決は、一挙にはできない。国民の合意で一歩一歩、段階的にすすめる。(1)まず海外派兵立法をやめ、軍縮の措置をとる。(2)安保条約を廃棄しても、同時に自衛隊をなくすことはできない。安保条約と自衛隊の存在は、それぞれ別個の性格をもつ問題であり、安保条約廃棄の国民的合意が達成された場合でも、その時点で、「自衛隊は必要」と考える国民が多数だという状況は、当然予想されることだからである。(3)安保条約を廃棄した独立・中立の日本が、世界やアジアのすべての国ぐにと平和・友好の関係を築き、日本を取り巻く平和的環境が成熟し、国民の圧倒的多数が「もう自衛隊がなくても安心だ」という合意が成熟したところで初めて、憲法9条の完全実施に向けての本格的な措置に着手する。
――かなりの長期間にわたって、自衛隊と共存する期間が続くが、こういう期間に、急迫不正の主権侵害や大規模災害など、必要に迫られた場合には、自衛隊を活用することも含めて、あらゆる手段を使って国民の命を守る。日本共産党の立場こそ、憲法を守ることと、国民の命を守ることの、両方を真剣に追求する最も責任ある立場である。
政府・与党の攻撃に対して、いま問われている真の争点は「海外で戦争する国」づくりを許さないことにあることを太く押し出すとともに、日米安保条約や自衛隊に対する党独自の立場を広く明らかにしていく――二重の取り組みを行うという基本姿勢を堅持して打ち破っていく。
(21)統一戦線の画期的発展と今後の展望について
いま発展しつつある野党と市民の共闘は、これまでにない新しい特徴をもっている。
一つは、安倍政権の暴走政治に対抗して、戦後の平和運動、労働運動を担っていた潮流が過去のいきがかりを乗り越えて、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」という画期的な共闘組織をつくったことである。「総がかり行動実行委員会」が呼びかけた「2000万人統一署名」は、安保法制=戦争法の廃止を求める広範な団体・個人の共同の取り組みとなり、1580万人分に達した。
二つは、安保法制=戦争法に反対するたたかいを通じて、多くの市民が自覚的に立ち上がる戦後かつてない新しい市民運動がわきおこり、市民革命的な動きが始まったことである。この動きは、「総がかり行動実行委員会」と大合流して、「安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合」が発足した。
三つは、こうした新しい市民運動、国民運動に背中を押されて、国会内外で野党間の共闘が発展し、さらに参院選での選挙共闘という、戦後かつてない歴史的一歩を踏み出したことである。
党綱領の統一戦線の方針が国政を動かす、新しい時代が始まっている。野党と市民の共闘は、始まったばかりであり、多くの未熟な点、多くの課題を抱えており、前途には曲折と困難も予想されるが、この動きには大きな未来がある。
始まった野党と市民の共闘をどうやって発展させるか。日本共産党は、次の基本姿勢を堅持して奮闘する。
――野党と市民の間でも、野党間でも、一致点を大切にしながら、互いに違いを認め合い、互いを信頼し、敬意をもち、心一つにたたかう、「本気の共闘」をつくりあげていくために、誠実に力をつくす。この間も、ともに真剣に力をあわせてたたかうなかで、お互いが前向きに変わりうることを私たちは体験してきた。誠実に共闘を積み重ねるなら、必ずこの流れは発展するというのが、私たちの確信である。
――野党と市民の共闘が掲げている「大義の旗」を国民多数のものとするために全力をつくしながら、どんな問題でも根本的打開をはかろうとすれば、党綱領が示した国政の民主的改革が必要になることを、太く明らかにするわが党独自の活動に取り組む。この両者は決して矛盾するものでなく、それぞれに取り組んでこそ、野党と市民の共闘を発展させていくことができる。革新懇運動の役割は、いよいよ重要となっており、その活動と組織を発展させるために力をつくす。
――政府・与党による野党共闘攻撃、共産党攻撃を打ち破るために、他の野党、市民と力をあわせて奮闘する。同時に、かなり変わってきたとはいえ、国民のなかに日本共産党に対するさまざまな誤解や拒否感がなお存在することも事実である。その克服のために、私たち自身の努力として、党の歴史、路線、理念を丸ごと理解してもらう取り組みを強めるとともに、不断に自己改革をすすめ、名実ともに「日本の労働者階級の党であると同時に、日本国民の党」(党規約第2条)への成長をめざす。一部にある「共産党と一線を画す」といった傾向を克服するために努力する。
野党と市民の共闘を発展させる最大の原動力は、国民、市民のたたかいである。あらゆる分野で、安倍政権の暴走政治に対決し、新しい政治をめざす国民、市民のたたかいを発展させるために、ともに手を携え全力をつくそう。
党綱領は、「日本共産党が、高い政治的、理論的な力量と、労働者をはじめ国民諸階層と広く深く結びついた強大な組織力をもって発展することは、統一戦線の発展のための決定的な条件となる」とのべている。
日本共産党が、草の根で国民と結びついた強く大きな党をつくり、国政でも地方政治でもさらに政治的躍進をかちとることは、野党と市民の共闘を発展させる最大の貢献となる。そのことを肝に銘じて奮闘しよう。
(22)来たるべき総選挙の目標について
次の国政選挙は総選挙となる。日本共産党は、来たるべき総選挙を、安倍政権を打倒し、野党連合政権(国民連合政府)に向けて大きな一歩を踏み出す選挙としていくために、全力をあげる。次の二つの大目標に挑戦する。
第一は、野党と市民の共闘を本格的に発展させ、総選挙でも選挙協力を行い、衆議院における「改憲勢力3分の2体制」を打破し、さらに自民・公明とその補完勢力を少数に追い込むことをめざす。
衆議院選挙での選挙協力を成功させるために、次の三つの点で前向きの合意をつくるよう、力をつくす。
――豊かで魅力ある共通公約をつくる。参院選での共闘の到達点を踏まえ、真剣な政策協議を行い、一致点を最大限に確認し、国民にポジティブな(前向きの)メッセージが伝わるような、魅力ある政策のパッケージを打ち出す。
――本格的な相互推薦・相互支援の共闘を実現する。参院選でわが党は1人区のほとんどで候補者を降ろすという対応を行った。これはまず共闘を前進の軌道にのせるためのものだった。しかし、選挙協力は、本来は、相互的なものである。お互いの候補者を相互に推薦・支援しあってこそ最大の力を発揮し、自民党に打ち勝つことができる。相互推薦・相互支援にならなければ、選挙協力にならない。
――政権問題で前向きの合意をつくる。総選挙は、どういう政権をつくるかが問われる選挙ともなる。ここでの選挙協力に踏み込むならば、政権構想でも野党の一致した考えを国民に示す責任が生まれてくる。
こうした諸点で合意に達し、本格的な共闘が実現するならば、多くの小選挙区で与野党逆転の状況をつくりだし、情勢の激変をつくることは可能である。
第二は、2013年参院選に始まり、14年総選挙、15年統一地方選、16年参院選と続いている日本共産党の“第3の躍進”を大きく発展させることである。
――「比例を軸に」をつらぬき、「全国は一つ」の立場で奮闘し、比例代表で「850万票、15%以上」を目標にたたかう。全国11のすべての比例ブロックで議席増を実現し、比例代表で第3党をめざす。
――野党共闘の努力と一体に、小選挙区での必勝区を攻勢的に設定し、議席の大幅増に挑戦する。
――綱領実現をめざし、中期的展望にたった「成長・発展目標」――どの都道府県、どの自治体・行政区でも「10%以上の得票率」を獲得する党をめざし、この目標を現実的視野にとらえる結果を出す。
2019年参議院選挙にむけ、選挙区候補を早期に決め、総選挙と一体に勝利をめざす活動をすすめる。
(23)東京都議会議員選挙の勝利をめざして
2017年6月の東京都議会議員選挙は、東京都の未来、都民の暮らしに大きな影響をあたえるだけでなく、国政の動向を大きく左右する政治戦となる。前回獲得した17議席を絶対確保し、新たな議席をかちとるために全力をあげる。
築地市場の豊洲移転問題、オリンピック・パラリンピックの費用高騰の問題などで、日本共産党都議団が果たしている先駆的役割は目覚ましいものがある。小池知事は、「都民ファースト」を掲げるが、それを実現するためには、石原都政以来の大型開発優先路線を見直し、都政に「福祉の増進」という自治体の魂を取り戻すことが欠かせない。小池都政のもとで、都民の切実な願いを実現する運動と連携し、日本共産党が都政をリードする役割を発揮することが重要である。
東京都党組織の奮闘と一体に、「全国は一つ」の立場で、全国からの支援を集中することを、心から呼びかける。
(24)地方政治をめぐる政治的焦点、地方選挙の躍進をめざして
安倍政権は、国際競争力の名のもと、地方自治体に、大企業のもうけのための大型開発と「規制緩和」を押し付ける一方、住民の福祉と暮らしの破壊、病院・学校・保育所・幼稚園・公営住宅・公民館・図書館など公共施設の廃止・集約化、自治体窓口業務と公共施設運営の民営化をすすめ、地域経済の低迷・衰退に拍車をかける政策を強行している。
多くの自治体では、依然としてわが党を除く「オール与党」となっているが、そうした自治体でも、要求課題で野党と市民の共闘が議会内外で広がる新しい変化が生まれている。国政と地方政治を一体に視野に入れ、自民・公明の政治の批判・転換を正面に据えつつ、他の野党については事実にそくした前向きの批判を行う。維新の会の影響力がある地方では反動的役割を広く明らかにし、逆流を克服するためにたたかう。
日本共産党地方議員(団)は、子ども医療費の無料化・助成制度の拡充、就学援助の改善、認可保育所や学童保育の増設、少人数学級の実現、学校給食の補助・無料化、国民健康保険料(税)引き下げ、住宅リフォーム助成、災害救援・復興など、草の根からの住民の運動と協力して、議会と行政を動かし、住民の願いを実現している。ムダづかいや不正をただすために力をつくしている。地方議会での日本共産党の躍進は、住民要求実現の最大の保障になるとともに、地域から野党と市民の共闘を前進させる大きな力となる。
日本共産党の地方議員は、前大会以降の3年間で、約2700人から2809人(1月17日現在)に前進し、議席占有率を7・8%から8・4%に伸ばし過去最高になった。わが党の地方議員数は、自民党の3300人台、公明党の2900人台についで第3党である。引き続き地方議員第1党の奪回をめざすとともに、議席占有率で10%以上をめざす。
2019年統一地方選挙では、道府県議会で新たに空白を絶対につくらず、すべての道府県議会での複数議席実現、議席増に挑戦する。県議空白の政令市(20政令市中6市)での県議議席獲得、政令市の市議空白区(175区中47区)の克服、道府県議、政令市、東京特別区、県庁所在地、主要な地方都市での議席増を特別に重視し、地方選挙の取り組みを日常的に強化する。
一般市議、町村議の議席増、空白議会(41市、341町村)の克服に挑戦する。それは選挙直前の対策では容易ではない。党員拡大を根幹にすえた党勢拡大に取り組み、移住も含め早く候補者を決め、候補者を先頭にした計画的・系統的取り組みが不可欠である。
党議員団が議案提案権をもつことは、住民の要求実現にとって大きな意義をもつ。現在、半分近く(47・3%)の自治体でもっている議案提案権を、都道府県ごとの拡大目標をもち、全国的には、3分の2以上の自治体でもつことをめざす。
首長選挙を、新しい情勢の発展にふさわしく攻勢的に位置づけ、野党と市民の共闘を地方政治でも前進させる立場で積極的に取り組む。2018年沖縄県知事選は、全国的意義をもつ政治戦であり、「オール沖縄」の知事の勝利のために全力をつくす。
この間、20代から40代の若い候補者が、積極的に立候補の要請を受けて選挙で当選し、地方議員として各地で活躍していることは、わが党の大きな希望である。学習をはじめ若い世代の議員の成長を励ます取り組みを思い切って強める。
近年、地方議員が地方党機関の任務を担うことが増えたことや、広域合併・議員定数の削減によって、党規約に定められた党議員団の確立・会議の開催に困難が生じている地域もある。党議員団の確立・会議の開催は、政治討議、学習、活動交流など、地方議員の成長の保障となる。党機関は議員団確立の努力を系統的にはらう。
地方議員は、有権者の負託を受けた公職として重い責任を負っており、党規約第5条に党員の義務として明記した「市民道徳と社会的道義をまもり、社会にたいする責任をはたす」を率先して実行しなければならない。
中央委員会として、地方議員の成長と交流を目的にして、「地方議員研修交流講座」を開催する。
(25)新しい情勢にふさわしく選挙方針を抜本的に発展させる
野党と市民の共闘の発展という新しい情勢にふさわしく、選挙方針をつぎの諸点で抜本的に発展させる。
――野党共闘の前進と日本共産党躍進の一体的追求という大方針を堅持してたたかう。参院選では「野党共闘での選挙区選挙に手がとられ、比例の対策が弱かった」という反省も寄せられたが、総選挙の教訓にしていく。すべての支部が「850万票、15%以上」にみあう得票目標、支持拡大目標をもち、それを実現する「政策と計画」――選挙活動の「四つの原点」を具体化し、やり抜く構えを確立することが重要である。
――「市民・国民とともにたたかう」、壮大な選挙戦を発展させる。参院選では、わが党が野党共闘に真剣に取り組むなかで、日本共産党を自発的に応援する動きが全国各地で広がった。新しい信頼と連帯の絆を大切にし、あらゆる分野で、切実な願いにこたえた市民運動、国民運動を発展させつつ、選挙にのぞむ。日本共産党後援会の活動を、いまわが党に新しい注目を寄せ、応援しようという人々が、参加しやすい活動へと思い切って改善し、その発展・強化をはかる。
――すべての有権者を対象に「政治は変えられる」という希望を届ける宣伝・組織活動を行う。メッセージの伝え方という点での自己改革の努力をさらに発展させる。伝えたい相手への敬意をもち、自分の言葉を大切にして、対等な目線で語り合うという、双方向での宣伝・組織活動を発展させる。参院選では、宣伝物などについて、市民運動のみなさんから率直に意見を寄せてもらい、作成に参加してもらうなどして、大胆な刷新に取り組んだ。これらの教訓を生かし発展させる。インターネット・SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)での発信をいっそう重視し、従来の宣伝・組織活動と相乗的に効果が発揮できるようにする。
――わが党は、2013年5月の第25回党大会7中総以来、党員と党組織のもつあらゆる結びつき・つながりを生かして選挙勝利に結実させる「選挙革命」ともいうべき活動に取り組んできた。参院選では、結びつき・マイ名簿を生かした対話・支持拡大に取り組んだ党組織と党員がこれまで以上に広がり、新しい支持を数十、数百と広げた新しい経験も生まれた。この活動方向は、新しい情勢のもとでいよいよ重要であり、全党員の運動に発展させることに正面から挑戦する。
――若い世代とともにたたかう選挙にしていく。いま、若い世代は、格差と貧困の広がり、劣悪な雇用、異常な高学費、平和と民主主義の危機などのもとで、前途を模索し、現状打開の展望を求めている。若い世代の悩みや願いをよく聞き、それを解決する政治的方向を語るという、双方向の姿勢で、若い世代とともにたたかう選挙にしていくために、新鮮な知恵と力をつくす。
(26)「党勢倍加、世代的継承」の達成を――党勢拡大の取り組みの到達点
私たちは、前大会で、党勢拡大の目標について、2010年代に「成長・発展目標」を実現するために、50万の党員(有権者比0・5%)、50万の日刊紙読者(同)、200万の日曜版読者(2・0%)の実現――全体として党勢の倍加に挑戦することを決めた。そのさい、党の世代的継承を、綱領実現の成否にかかわる戦略的課題にすえ、全党あげて取り組むことを決めた。全党の力を総結集して、この大目標をやりとげることを心から訴える。
この大目標を達成する第一歩として、私たちはいま、「第27回党大会成功をめざす党勢拡大大運動」に取り組んでいる。全党の大奮闘によって、「大運動」の4カ月通算で、4172人の新たな党員を迎えた。「しんぶん赤旗」読者は、4カ月連続で前進し、日刊紙2489人、日曜版1万514人、あわせて1万3003人の増加となった。
第26回党大会後の3年間では、44・2%の支部が、2万3千人の新しい党員を迎えた。党勢の現状は、党員が約30万人、「しんぶん赤旗」読者が日刊紙、日曜版をあわせて約113万人となっている。
「党勢拡大大運動」の目標総達成のために最後まで力をつくすとともに、開始された党勢拡大の前進の流れを中断、後退させることなく持続的に発展させるために、あらゆる知恵と力をつくす。
(27)いまなぜ党建設か――その歴史的意義について
いま草の根で国民と結びついた強く大きな党をつくることは、日本社会の前途にとっても、日本共産党自身にとっても、文字通り、歴史的意義をもつ事業である。
それは第一に、始まった野党と市民の共闘――新しい統一戦線を前進させ、野党連合政権をつくる力となる。先の参議院選挙で、野党共闘の勝利のために、全国の草の根でわが党支部と党員が献身的に奮闘したことは、他党の関係者、市民運動の方々からも、高く評価され、驚きをもって受け止められた。全国津々浦々に党支部、党員、「しんぶん赤旗」読者をもち、国民と結びつき、その利益を守って日夜活動していることは、私たちの誇りとするところである。野党と市民の共闘の一翼を担うわが党が、草の根の力を伸ばすことは、共闘の発展への最大の貢献となる。
第二に、日本共産党の“第3の躍進”を持続・発展させるうえでも、党建設の上げ潮をつくりだすことが、どうしても必要である。この間の国政選挙でのわが党の連続的な躍進・前進は、正確な方針のもとでの全国の党員と後援会員のみなさんの大奮闘のたまものだが、同時に、わが党を取り巻く客観的条件が有利に働いたことも事実である。わが党が躍進・前進すれば、支配勢力がそれを抑え込もうと激しい攻撃を加えてくることは、すでに参議院選挙でも体験したことであり、それは今後もさらに強まるだろう。わが党を封じ込める新しい仕掛けをつくる動きも起こりうることである。どんな難しい情勢が展開したとしても、それを打ち破って日本共産党が躍進・前進を続けるには、いまの党勢はあまりに小さい。いま強大な党をつくることがどうしても必要である。
第三に、21世紀の先ざきまで日本の社会変革を促進する党をつくるという点でも、いま党勢拡大を成功させ、とくに世代的継承をはかることは、死活的課題である。私たちは、当面の諸課題の遂行に責任を負うとともに、党綱領の実現――国民多数の合意のもとに民主連合政府の樹立と日本における民主主義革命の実現、さらに社会主義・共産主義社会への前進をめざして、未来にわたって責任を果たさなければならない。そのためには、広大な空白となっている若い世代、6000万人の労働者階級のなかに、党をつくる仕事を何としてもやりとげ、未来の世代に強大な党をしっかりと引き渡さなければならない。現在の党の年齢構成を考えるならば、いま、この仕事をやりあげることは、現在の党員と党組織の共通の責任である。
日本共産党の躍進と、野党と市民の共闘の前進という、二つの仕事に同時に取り組むためには、強く大きな党が必要である。「比例を軸」にした躍進とともに、有権者の過半数の獲得をめざす小選挙区で本気で勝ち抜こうとすれば、それを支える分厚い党組織をつくることが必要である。いま、強く大きな党をつくることは、自公とその補完勢力に、野党と市民の共闘が正面から対決する「日本の政治の新しい時代」を前にすすめ、野党連合政権をつくるうえで、わが党に求められている歴史的責務である。
大志とロマンをもって、党勢倍加、世代的継承の仕事をやりあげよう。
(28)どうやって党建設を本格的な前進に転ずるか
党建設の基本方針については、第22回党大会での規約改定をふまえ、これまでの5回の党大会決定で明らかにされている。その中心点は次の通りである。
――すべての支部が「政策と計画」を持ち、「支部が主役」の活動を行う。国民の要求実現のたたかいに取り組みつつ、党建設・党勢拡大の独自の追求をはかる「車の両輪」の活動は、強く大きな党をつくる大道である。
――党員拡大を、党建設・党勢拡大の根幹にすえて、一貫して追求する。党員拡大にあたっては、党規約通りの入党の働きかけを行うとともに、新入党員教育を行い、「党生活確立の3原則」(支部会議への参加、日刊紙の購読、党費の納入)を大切にして、温かく心が通う支部づくりをすすめ、一人ひとりが成長することに責任を負う。
――「しんぶん赤旗」中心の党活動を発展させる。(1)党員が「しんぶん赤旗」をよく読み、討議し、日々の指針として活動する、(2)持続的拡大と、配達・集金体制の強化をはかり、党と国民のつながりを「しんぶん赤旗」を軸にして広げていく、(3)どんな活動でも、読者と協力して党活動を発展させる、(4)党財政を支えるという観点からもこの活動を重視する。機関紙活動を、党活動のあらゆる多面的活動を促進し、統一し、発展させていく中心にすえる。
今日の巨大メディアが、全体として見た場合に、「権力のチェック役」としての役割を果たしているとはいえないもとで、“タブーなく真実を伝える、国民共同の新聞”――「しんぶん赤旗」の値打ちはかけがえのないものである。
――「量とともに質を」の立場をつらぬく。全党が、綱領学習と科学的社会主義の古典学習に取り組むことを、日常の気風とする。すべての支部が、「綱領・古典の連続教室」の支部教室に取り組む。
――「綱領を語り、日本の未来を語り合う集い」を、日本列島の津々浦々で開き、日本共産党の綱領、歴史、理念などを丸ごと理解していただき、党への意見・要望を聞き、党勢拡大をすすめる推進軸にしていく。
――市民道徳と社会的道義を大切にした党づくりに取り組み、社会進歩の促進のためにたたかう人間集団にふさわしいモラルの確立に力をそそぐ。
これらの諸点を、引き続き党建設の基本方針にすえる。
党建設は、党の活動のなかでも特別の意識性、粘り強さ、不屈性が求められる仕事であり、この仕事を担っている全国の党員の奮闘に、日本共産党第27回大会として心からの敬意と感謝をおくる。
全国のすすんだ支部の経験は、ほとんど例外なく、これらの党建設の基本方針を自覚的に実践している。問題は、そうした先進的経験が一部の支部にとどまり、全党の流れにすることに、私たちがまだ成功していないことである。どうすれば、法則的な党建設の流れを全党の流れにすることができるか。全党の実践と探究の課題である。その大きなカギの一つとなるのは、支部を直接指導、援助する地区委員会の活動の強化にある。
党大会にむけ、党中央として、全国のすすんだいくつかの地区委員会を訪問し、教訓を学んできた。次の四つの点が、重要な教訓として浮き彫りになった。
――第一は、「わが地区をこう変える」という大志とロマンある生きた目標をみんなのものにしていることである。
福岡県・直鞍地区委員会では、「比例代表で得票率18%」「全自治体で地方議員を3議席以上にする」ことを政治目標に決め、地区党全体でみんなの気持ちが一つになった。それを実現するために「党勢倍加と世代的継承」は地区党全体の強い願いと受け止められ、毎月5人の党員拡大目標を決め、一貫して取り組んでいる。前党大会後、党員は121%、77%の支部で党員を迎え、2016年参院選比例得票率は、前回の9・99%から12・47%に躍進している。
――第二は、決めた目標を何があっても中断せず、一貫性と系統性をもって追求していることである。
三重県・北勢地区委員会では、第26回党大会後、毎月の地区委員会総会で、必ず「総合計画」と支部の「政策と計画」を議題にし、「政策と計画」をもたない支部をなくし、自覚的な支部をつくることを地区委員会の重点的目標と決め、一貫して努力している。困難を抱えている支部への個別の援助も強め、「政策と計画」をもつ支部は、当初の2割から9割以上に広がった。地区は74カ月連続で党員を迎え、党大会後に新たに党員を迎えた支部は6割以上、困難が大きかった職場支部でも5割が党員を迎えている。
――第三は、支部に出かけ、支部から学び、一緒に知恵と力をつくすリーダーシップが発揮されていることである。
職場支部が多い神奈川県・川崎中部地区委員会では、「いちばん大切な活動は支部に出向くこと」を合言葉に、地区委員長が先頭に立って支部に出かけ、多いときは1カ月で20支部くらいに直接足を運んできた。「支部会議の開催こそ、職場党員の心に灯をともす」と、5年間の系統的な努力で、職場支部のほとんどが支部会議を開けるようになった。職場の状況を聞くと、労働強化と多忙さに苦しめられており、そのなかでも党員が党の旗を守り、労働者の信頼を得ていた。「職場が労働強化、ブラック化でたいへんな状況にあるいま、党が頑張るとき」と、党員を増やす活動に踏み出し、前大会後に職場支部の53%で新たに党員を迎えている(地域支部は85%)。
――第四は、地区常任委員会、非常勤を含む地区委員のチームワークが発揮されていることである。
千葉県・中部地区委員会では、前大会直後は、常勤常任委員が4人、常任委員会が12人の体制だったが、ベテラン党員に率直に要請し、常任委員会の体制を16人に増強した。県議、市議とも連携を強め、支部の状況がリアルに議論できるようになった。さらに、この1年間、地区党学校を開き、地区役員、補助指導機関メンバー、支部指導部など、のべ341人が参加し、綱領、科学的社会主義、党史、党建設の方針などを学び、政治的団結と政治的力量を高めた。地区委員会のチームワークの力が発揮され、2016年参議院選挙では、99%の支部が支持拡大に取り組み、比例得票率を、前回の9・94%から11・60%へと大きく伸ばした。
地区委員会の活動は、苦労もあるが、支部・国民と直接に結びついて活動するやりがいの大きい仕事でもある。これらのすぐれた教訓にも学び、わが党のもつ力を最大に結集して、地区委員会活動の強化をはかる。48%を占める女性党員比率にふさわしく、機関役員として女性党員が力を発揮することを重視する。
中央として、「支部が主役」の党づくりを学びあう「組織活動の全国交流会」を開催し、中央と地方が一体になって、探究・開拓・前進をはかる。
党員拡大を党勢拡大の根幹にすえ、「しんぶん赤旗」中心の党活動の前進をはかるとともに、今日のわが党に対する政治的関心や注目の広がりにこたえて、定期雑誌を党勢拡大のなかに位置づける。
党の発行する定期雑誌(『前衛』『月刊学習』『議会と自治体』『女性のひろば』)、普及に協力している『経済』は、いずれも編集・普及の両面で、それぞれの役割にふさわしい独自の挑戦を行う。なかでも、広く女性のなかに普及できる性格を持つ『女性のひろば』を党勢拡大のなかに位置づけ、今大会期に倍加をめざすことを呼びかける。
(29)全党あげて労働者階級、若い世代のなかの党づくりに挑戦しよう
わが党の事業を、若い世代に継承していくことの緊急性、切実性は、全党が共通して実感していることである。ここで前進をつくることは、全党の痛切な願いでもある。すべての党機関、支部・グループ、議員団が、世代的継承の目標と計画をもち、あらゆる結びつき、可能性、条件を生かして、必ず前進をつくりだす。
わが党の労働者階級のなかでの組織的影響力はごく一部にとどまっており、6000万人の労働者階級全体から見れば、組織的にはほとんどの職場が空白という状況である。新しい情勢のもと、6000万人の労働者階級の全体を視野に入れ、日本共産党の組織をつくる活動に、新たな決意で挑戦する。
第26回党大会期に新たに迎えた労働者の党員は、職場支部が迎えた党員と、地域支部をはじめ全党の結びつきで迎えた党員が、ほぼ半々となっている。6000万人の労働者階級のなかに強く大きな党をつくる仕事を、職場支部と全党の共同の事業として取り組むことを呼びかける。
――職場支部の継承・発展のうえで、新しい条件と可能性が生まれている。この間、野党と市民の共闘が発展するもとで、労働運動のナショナルセンターの違いを超えて、さまざまな協力と共同の取り組みが広がっている。新しく生まれた結びつきを生かし、党に迎え入れる活動が全国各地で生まれていることは重要である。
第25回党大会3中総決定は、「労働者のなかの党員拡大では、労働組合の違いをこえ、あらゆる労働者のなかに根をおろす。連合系の職場でも、全労連系の職場でも、党をつくったら、つくったところに根をおろして、党組織を発展させる。そして、その党組織のネットワークが、職場労働者全体の連帯のネットワークになっていくようなとりくみをおこなう」ことを強調した。この方針が、本格的に力を発揮する情勢が生まれている。「あらゆる労働者」に視野を広げ、党づくりをすすめるときである。
職場支部の活動を発展させるうえで、2006年4月の「職場講座」の内容を、今日的に生かすことが重要である。この「講座」で強調した、「出発点はあいさつから」「労働者の全生活にわたってつきあう」「党員の苦しみは、労働者みんなの苦しみ」など、労働者と日常的に結びつき、人間的信頼関係をつくることを、党活動の根本に位置づけることの重要性は、今日の情勢のもとでいよいよ切実なものとなっている。
――全党の結びつきを生かし、空白の職場に党支部をつくる事業に挑戦する。地域支部は、その地域で生活する現役の労働者との結びつきを、さまざまな形でもっている。労働者は職場の要求だけでなく、地域においてもさまざまな切実な要求をもち、政治を変えたいという願いをもっている。この間、地域支部が開催した「集い」などで、現役の労働者が入党し、自治体職場や民間企業職場に新しい支部をつくる経験が生まれていることは、きわめて重要である。
地域支部は、地区委員会、地方議員(団)と協力し、結びつきを生かし、要求にこたえた活動に取り組み、労働者を党に迎える活動に積極的に取り組む。労働者を地域支部に迎えた場合には、地区委員会と協力し、労働者党員が、地域での活動とともに、職場で労働者と結びつき党をつくる活動に取り組めるよう援助する。
この間の戦後かつてない新しい市民運動のなかで、若い世代は目覚ましい役割を発揮している。その一つの重要な特徴は、若い世代が、年配世代が戦後取り組んできた平和と民主主義を擁護するたたかいに敬意をもち、それを引き継ぐのは私たちだという声をあげていることである。新しい市民運動のなかで、世代を超えた連帯が大きく発展しつつあることは、きわめて重要である。
こうした条件も生かし、若い世代のなかに党をつくるため、全党が総力をかたむける。そのさい、若い世代の声をよく聞き、ともに考え、心を通わせ、日本の前途を考えるという、双方向の取り組みを行うことが、何よりも大切である。
2016年9月の6中総決定は、すすんだ党組織の努力に学び、「三つの柱」での取り組みを呼びかけた。その本格的な実践――探求と開拓をすすめる。
――第一の柱は、「どの支部にでもできる世代的継承」を推進することである。多くの党員、支部、党組織が、若い世代と何らかの結びつきをもっている。まず結びつきを出し合い、名簿にすることが大切である。名簿にもとづいて、若い世代の関心・願いにこたえた「集い」を気軽に開く。「集い」では、党綱領を土台にすえて、双方向の対話・懇談を行う。若い世代に双方向で党の主張を伝える後援会ニュースの発行に取り組む。こうした活動は、その気になれば、どの支部にも可能なことである。
――第二の柱は、民青同盟への親身な援助を強め、同盟員を増やし、民青班をつくることである。民青同盟は、「青年との共同」「草の根の行動力」「社会を変革する学び」を掲げ、青年の切実な要求実現、科学的社会主義と党綱領を学び成長することを基本的性格として奮闘している。若者憲法集会などに取り組み、安保法制=戦争法反対の若者の運動を発展させるうえでも、先駆的な役割を発揮している。その存在と活動は、若い世代の未来をひらくうえでも、日本共産党の未来にとっても、かけがえのないものである。
すべての都道府県、地区委員会が、支部と協力して、高校・大学、職場や地域に、民青同盟を建設する計画をつくり、民青同盟との共同の事業として推進する。学習を中心に、民青同盟への援助を強め、同盟員の成長のために力をつくす。中央委員会、都道府県委員会、地区委員会、支部・グループが、それぞれの段階で、民青同盟と系統的な懇談に取り組み、民青の役割や、県、地区、班の実情をよく聞き、同盟員の願い、悩みをよく聞くことが、取り組みの出発点となる。
――第三の柱は、全党のあらゆる力、結びつきを生かして、学生党員を迎え、学園に党支部をつくることである。都道府県委員会、地区委員会は、支部と協力して、学園に党支部をつくる目標と計画をもって、系統的な取り組みを行う。大学門前宣伝などに系統的に取り組み、学生に働きかけ、対話を行う。党機関が、学生支部・党員と協力し、大学人の協力もえて、学生の知的関心にこたえ、たたかいと一体に、「集い」を開くなど、学園に根ざした活動を探求する。
中央委員会が毎年開いている「学生党員特別講座」は、学生党員の成長の力となっている。青年・学生党員と民青同盟員の成長にとって「学習と交流」は特別に重要であり、中央、地方で積極的にすすめる。
中央として「特別党学校」を系統的に開催し、若い世代のなかでの後継幹部づくりに力をそそぐ。
(30)党費を要にした党財政の確立・強化を訴える
党のあらゆる活動は、それを支える財政的保障ぬきには成り立たない。党費を要に「4原則の財政活動」(党費、機関紙誌収入、募金、節約)を抜本的に強化する。
党機関の中心を担って献身的な奮闘をしている専従活動家は全党の宝であり、その生活と活動を保障することは、党財政確立の大きな目的の一つである。
とりわけ今日的に重要なことは、熟達したベテラン専従活動家の力を生かしながら、若い世代のなかに専従活動家をつくり、現在に倍する専従者によって支えられる党機関をつくることが、綱領実現に不可欠だということである。
専従活動家の週休を確保し、心身の健康の保全をはかること、給与を毎月定期的に支給し遅配をしないこと、給与水準は民間企業の平均給与水準を上回ることをめざすことを、焦眉の課題と位置づけて取り組む。品性も能力もすぐれた若い世代が、専従活動家の道を選択するうえでも、勤務条件の改善は急務であり、そのためにも全党の努力によって党財政を確立・強化することが必要である。
党費は、党財政の根幹であり、党員の自覚的活動の根本である。党費納入を強めることは、党を土台から強めることにほかならない。
日本共産党は、政党助成金も企業・団体献金も受け取らず、財政のすべてを国民に依拠している。ここにこそわが党が、何ものをも恐れず社会変革のためにたたかう保障がある。日本共産党の財政活動強化のために、党員と支持者のみなさんの協力を心から訴える。
(31)党創立95周年――歴史が決着をつけた三つのたたかい
2017年は、日本共産党が1922年に創立されてから95周年の節目の年である。日本共産党の95年は、日本国民の利益を擁護し、平和と民主主義、社会進歩をめざして、その障害となるものに対しては、相手がどんなに強力で巨大な権力であろうと、正面から立ち向かってきた歴史である。95年のわが党のたたかいのなかで、歴史が決着をつけた三つのたたかいがある。
第一は、戦前の天皇制の専制政治・暗黒政治とのたたかいである。誕生したばかりの日本共産党は、非合法下での迫害や投獄に屈することなく、国民主権と反戦平和の旗、さらに人間解放と未来社会をめざす旗を掲げ続けた。戦前の社会でこの旗を掲げることは、文字通り、命がけのことであり、多くの諸先輩が弾圧で命を落とした。
わが党のたたかいが、比類のない先駆性、全体としての正確さをもっていたことは、歴史によって検証された。日本が敗戦のさいに受諾したポツダム宣言には、日本の戦争が侵略戦争だったという明瞭な認定と、軍国主義の除去、日本の民主化が明記された。日本国憲法には、「政府の行為」によって戦争を引き起こしたことへの反省とともに、わが党の努力も働いて、国民主権の原則が明記された。
第二は、戦後の旧ソ連などによる覇権主義とのたたかいである。最初にわが党がこの巨悪による干渉を受けたのは、1950年のことだった。ソ連のスターリンを総司令官、中国を副官として、武装闘争を日本共産党に押し付けようという干渉が行われ、党中央の一部が内通・呼応して、中央委員会が解体された。この党史上最大の危機を乗り越える過程で、日本共産党は、自主独立の路線――自らの国の革命運動の進路は自らの頭で決める、どんな大国でも干渉や覇権は許さないという路線を確立した。
1960年代には、ソ連と中国・毛沢東派の双方による無法な干渉攻撃が行われた。どちらも国家権力の総力を動員して、日本国内に反日本共産党の流れをつくるとともに、内通者を支援してニセの「共産党」をつくり、日本共産党を押しつぶそうという大干渉作戦だった。日本共産党は、全党が立ち上がって、この無法な攻撃を打ち破った。
このたたかいも歴史が決着をつけた。ソ連共産党は、1979年に行われた日ソ両共産党首脳会談で、ソ連の干渉についての反省の言明を行った。その後もソ連からの干渉は続き、厳しい論争が続いたが、このたたかいは1991年、ソ連共産党の崩壊という形で終止符が打たれた。中国共産党は、1998年6月の両党会談の合意文書で、中国による干渉行為について、「内部問題相互不干渉の原則にあいいれないやり方をとったことについて真剣な総括と是正をおこなった」と表明した。世界でも、二つの大国の党から、同時に乱暴な干渉攻撃を受けた党は日本共産党だけである。そして、二つの大国の党にその誤りを認めさせた党は日本共産党以外には存在しない。
干渉攻撃とのたたかいを通じて、わが党は政治的・組織的に鍛えられただけでなく、理論的にも大きな発展をかちとった。スターリンによる理論の歪曲を総決算し、世界論、革命論、未来社会論など、あらゆる面でマルクス、エンゲルスの本来の姿が、現代に力をもって生きいきとよみがえった。これらの成果は、2004年に決定した新しい党綱領に全面的に盛り込まれた。
第三は、「日本共産党を除く」という「オール与党」体制とのたたかいである。その一大契機となったのは、1980年の「社公合意」だった。支配勢力が総力をあげ、日本共産党を政界から排除し、その存在をないものかのように扱う、反共作戦が大掛かりに開始された。1990年代前半には「自民か、非自民か」という共産党しめだしの一大キャンペーンが行われ、選挙制度の面でも小選挙区制という悪法が強行された。2000年代には、財界が主導して「二大政党による政権選択」の一大キャンペーンが行われ、わが党の前進を阻む最強・最悪の逆風となって作用した。
同時に、この反共作戦は、最悪の「反国民作戦」でもあった。新自由主義――「構造改革」路線が押し付けられ、社会保障も雇用も破壊され、格差と貧困が広がった。日本国憲法を無視し、日米安保条約の枠組みさえ無視して、自衛隊の海外派兵体制がエスカレートし、沖縄では基地問題の矛盾が噴き出した。さまざまな分野で、切実な一致点での「一点共闘」が広がり、悪政を国民的に包囲する流れが広がった。
こうした国民のたたかいが大合流して、2015年〜16年に開始された野党と市民の共闘を生み出した。「日本共産党を除く」という「壁」は過去のものとなった。この「壁」を取り払ったのは、党と国民、市民の共同したたたかいの力だった。
(32)党創立100周年をめざして――野党連合政権に挑戦を
5年後には、日本共産党は党創立100周年を迎える。
私たちは、いま、野党と市民の共闘によって、日本の政治を変えるという、かつて体験したことのない未踏の領域に足を踏み入れつつある。95年のたたかいを経てつかんだ成果、切り開いた到達点に立って、開始された新しい統一戦線を発展させ、安倍政権を倒し、野党連合政権に挑戦しよう。
2004年に決定した新しい綱領が、世界の動きとも、日本の現実政治とも響き合っている。日本改革論、世界論、統一戦線論など、どの問題でも、綱領が大きな生命力を発揮している。綱領は国民と党をしっかりと結びつける最良の文書である。綱領を手に、国民と広く語り合い、日本の民主的改革への国民的多数派をつくろう。
綱領は、社会主義・共産主義への世界的条件について、(1)発達した資本主義諸国の人民の運動、(2)資本主義から離脱した国ぐにでの社会主義への探究の努力、(3)政治的独立をかちとりながら資本主義の枠内では経済的発展の前途を開きえないでいる発展途上国――三つの流れのなかから、資本主義を乗り越えて新しい社会をめざす流れが成長し発展することを、21世紀の大きな時代的特徴と指摘している。同時に、綱領は、発達した資本主義国から社会主義的変革に本格的に取り組んだ経験を人類はまだもっていないこと、それは「二一世紀の新しい世界史的な課題である」と強調している。
発達した資本主義国における社会主義的変革の成功が、他の二つの地域における発展との関連においても、特別の世界史的な意義をもつであろうことは、確実である。
日本共産党は、戦前、戦後の95年のたたかいを通じて、発達した資本主義国で社会変革をめざす政党としては、世界的にも最前線に立っている。そのことへの確信と自覚をもち、党創立100周年をめざし、力あわせ前進・躍進をかちとろう。