あのインテルも苦境…半導体業界の激変が日本にとってチャンスである理由 "部材"の進化が技術革新を支える
コロナショックの発生によって、世界経済の環境変化のスピードが加速している。米携帯電話大手ベライゾン・コミュニケーションズのトップのハンス・ベストベリ氏が「コロナショックによって世界経済のDX(デジタル・トランスフォーメーション)は5~7年前倒しされた」と指摘するほど、そのインパクトは大きい。
写真=iStock.com/archy13※写真はイメージです全ての画像を見る(3枚)そうした状況下、世界の半導体業界では台湾のファウンドリー(半導体受託生産会社)であるTSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング)の影響力が一段と高まっている。世界のIT、自動車など多くの企業が、世界最大手のTSMCの生産ラインを取り合い半導体の需給逼迫は鮮明だ。
世界の半導体業界が重大な構造変化に直面する中、わが国の企業は微細かつ高純度の半導体関連部材や、IT機器から社会インフラまで幅広く使われるパワー半導体(電力の供給とコントロールを司る電子部品)の分野で強みを発揮している。最先端(回路線幅5ナノメートル)の半導体生産に不可欠なEUV(極端紫外線)フォトレジスト(感光材)やその原料の分野で世界的なシェアを持つ本邦企業は多い。
今後、IT関連の投資は世界各国で増加し、半導体需要も増勢を維持するだろう。動線を前提としない経済活動を支える大手ITプラットフォーマー不在のわが国にとって、半導体関連の部材、製造装置(精密機械)、およびパワー半導体関連企業の競争力は、中長期的な経済の安定に無視できない影響を与えるだろう。それに加えて、高い製造技術と新しい発想の結合を目指す企業が増えることが、中長期的なわが国経済の展開に無視できない影響を与えるはずだ。
スマートフォンの創造やSNSをはじめとするプラットフォーマーの出現と成長は、米国をはじめ各国の経済成長に無視できない影響を与えた。IT先端技術の活用はデータの重要性を高め、DRAMなどのメモリや中央演算装置(CPU)への需要が高まった。世界の半導体業界では、いち早く、より多くの需要を取り込もうと競争が激化した。その中で変化にいち早く対応し、影響力を発揮しているのがファウンドリー最大手のTSMCだ。
端的に言えば、アップルのiPhoneのヒットのインパクトは大きかった。アップルは、生産工場を持たない“ファブレス”のビジネスモデルを確立し、ソフトウエアなどの設計と開発に注力し、生産を台湾の鴻海精密工業傘下のフォックスコンに委託した。それによって、アップルは設備投資の負担を軽減し、より短期間での新しい製品やサービスの創出を目指した。