上村愛子が期待する北京五輪、モーグル堀島、川村の見どころは?
1998年の長野五輪から5大会連続出場、すべての大会で入賞し、日本モーグル界のエースとして活躍してきた上村愛子さん。2月4日に開幕する北京五輪にて、男女ともに活躍が期待されるモーグルをはじめ、上村さんが注目する選手を紹介。さらに5大会出場という希少な経験を通してみた、五輪についての思いを伺いました(全2回)。
文=松原孝臣 写真=積紫乃
上村愛子
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1998年長野オリンピックを皮切りにに、2014年ソチオリンピックまで5大会連続出場を果たし、そのすべてで入賞。ワールドカップでは総合優勝、世界選手権で男女を通じ日本初の2冠に輝くなど、日本モーグル界のエースとして活躍したのが上村愛子である。
2014年に競技生活から退いたのち、多方面で活動。平昌大会ではNHKのキャスターとして現地に赴き、北京大会では東京のスタジオから伝える。
競技生活を通じ、そして引退後も、オリンピックと向き合ってきた上村に、まず、北京オリンピックで注目している選手を尋ねた。
上村が打ち込んだモーグル。男女それぞれに期待を集める選手がいる。堀島行真と川村あんりだ。堀島は今シーズンのワールドカップで、オリンピックでは実施されないデュアルモーグル2戦を含め、全9戦のうち3大会で優勝。その3大会はすべてモーグルだ。しかも全戦で表彰台に上がっている。
川村はワールドカップで3勝し、総合順位でも1位のまま、オリンピックを迎える。
その2人に期待を寄せる。堀島についてはこう語る。
「今回のオリンピックに出る選手の中で、唯一無二の滑りができる。カービングターンでスピードに乗った滑りを見せてくれる。わくわくしますよね。初めて見る人にカービングターンとそうじゃないターンの区別は難しいけれど、それでもその迫力ある滑りを観てほしいですね」
2022年1月14日、モーグルW杯ディアバレー大会、男子モーグルで優勝した堀島行真 写真=AP/アフロ
そして川村の特徴をこう表す。
「ターンとかエアのレベルも高い選手ですが、それよりもスタートからゴールまで頭の位置がかわらないことが目をひきます。あの滑りを女子でできる人はあまりいません」
2021年12月11日、モーグルW杯イドレ大会、女子モーグルで川村あんりがW杯初優勝 写真=AP/アフロ
モーグル以外の競技にも目を向ける。
上村は3人の名前をあげる。1人目はスノーボード・ハーフパイプの平野歩夢だ。ソチ、平昌大会の銀メダリストであり、昨夏はスケートボードで東京オリンピックに出場、異なる夏冬の競技での挑戦は注目を集めた。
「平野歩夢選手は、東京オリンピックでスケートボードにチャレンジして出場しました。そこから北京オリンピックまで半年間という短時間しかないのにワールドカップで2勝し、今までにない大技の『トリプルコーク1440』も成功させました。オリンピックへ向けて準備するのに3年、4年こつこつ小さいことを修正していた身からすると進化のスピードが速すぎて」
自分を貫く強さも感じる。
「本当の本当のところで頭もいい選手だし丁寧な人だから、まわりのことも考えているところは絶対にあると思います。ただ、発信していること、言葉からは、伝えようとしているもの、追い求めているものを進化しながら表現したいという意志を表に出していますよね」
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スピードスケートの小平奈緒も注目している1人だ。
「小平選手は地元が同じ長野ですが、ストイックさが言葉の端々に出てきますし、とてもきちんとしている方だな、と尊敬しています。誠実に向き合って努力を重ねている小平選手が、どんなタイム、パフォーマンスを見せてくれるのか、どのような言葉が出てくるんだろうと楽しみです」
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2021年12月30日、 スキージャンプ女子W杯リュブノ大会での郄梨沙羅 写真=アフロ
続けて名前をあげたのは、ジャンプの郄梨沙羅。
「郄梨選手が初めてオリンピックに出た措置のとき、会話をする機会がありました。まだ試合をする前のときです。選手村に日本選手団が滞在する一棟があって、そこで一緒になりました」
『こんにちは』と挨拶を交わしたあと、郄梨に質問を受けた。
「オリンピックってどんな場所ですか?」
「その頃から世界1位の強い選手で、でも質問が純粋で」
上村は答えた。
「4年に1回しかないし、緊張もするけれど、自分が練習してきたこと、積み重ねてきたこと、大丈夫と思えるものがあれば全然楽しいところだよ」
返した言葉を、「あれでよかったのかな」と考えるという。
「そのとき、郄梨選手はメダルが獲れなくて、涙まじりのインタビューを観ると、あのとき、あの言葉でよかったのかなといつも考えます」
そのやりとりもあって、郄梨をずっと見てきたという。
「強くなっているなあと思うし、この何年間か技術を作り直しているのを観たり聞いたりしています。、外から見ている人は、成績が上がったり下がったりだけで『あの選手の方が強いのかな』とか『よくないままなんじゃないか』とか、いろいろ言います。でも本人が『ずっと勝ち続けられるような選手でいたいと練習していた』と話しているのを聞いて、彼女も芯が強くて理想としているジャンプ、選手像も持っているんだなとあらためて思いました。かっこいいなと思って楽しみにしています」
そしてこう続けた。
「体験したこと、想像したことのない世界がたくさんあって、その競技の中で争っている人たちの技術をみるのがオリンピックだと思います。どの競技も、初めて観る競技も、わくわくします。こんなに頑張っている人がたくさんいるんだなと思うのが楽しいですね」
口調は終始穏やかで柔らかかった。口調だけでなく、その中身にも、選手たちへのあたたかさがあった。
そこにはオリンピックに5度出場した競技生活で得た思いが根底にあった。(続く)
上村愛子(うえむら・あいこ) フリースタイルスキー・モーグルの選手として冬季オリンピックに5大会連続で出場しすべての大会で入賞。世界選手権優勝、ワールドカップ年間総合優勝を達成。2014年4月に現役引退。次代を担う選手の育成や普及に努めるほか多方面で活躍。平昌オリンピックではキャスターとしてさまざまな競技を現場から伝え、高い評価を得た。北京オリンピックでも東京から、キャスターを務める。
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