30年続くデフレで貧しくなった日本
日本最大の100円ショップブランド「ダイソー」は世界各地に進出している。販売価格が一律的に100円(日本消費税引き上げで現在の価格は110円)の「100円ショップ」だが、他国はそうではない。
写真=ゲティイメージバンク
米国ダイソーの価格は1.5ドル(円換算時165円)だ。中国は10元(約170円)、ベトナム4万棟(約193円)、タイ60バーツ(約200円)など100円を超える。100円に満たない国は、韓国だけだ。韓国ダイソーの均一価格1000ウォンを日本円に換算すれば94円だ。◆「高級マグロ·ズワイガニ食べられない」世界の物価水準を比較する際に使われる「ビッグマック」の価格だけを見ても、日本の物価は著しく低い。1990年370円だった日本のビックマックの価格は現在390円だ。30年間ほとんど上がらなかった。一方、この30年で米国のビックマック価格は2.2ドルから5.66ドルへと2.5倍、中国は8.5元から22.4元へと2.6倍値上がりした。テレビ東京によると、日本のサラリーマンの昼食代は平均649円(約6680ウォン)だ。 ニューヨークの平均15ドル(約1万7610ウォン)、上海平均60元(約1万1000ウォン)の半分だ。世界第3位の経済大国日本が貧しくなった。経済協力開発機構(OECD)によると、1997年を100とした場合、昨年末、日本の給与水準は90.3まで下がった。韓国は158、米国と英国は122、130だった。韓国人の給与が23年間58%増える間、日本は逆に10%減少した。月給が減り、日本が誇る食道楽文化も萎縮している。マグロを最高の刺身として食べる日本人は、世界で捕れるマグロの25%を消費する。しかし、最近の最高級マグロは、大半が中国や東南アジア向けだ。日本の水産業者が、最高級マグロの競売でいつも敗れるためだ。高級食材を輸入する日本の食品メーカー「マルハニチロ」の全体輸入量は9年間で60%減少した。池見賢社長は「10年前までは日本の食品メーカーが、高級食料品競売で中国など新興国に負ければ話題になったが、今は日常茶飯事」と日本経済新聞に語った。日本の食品メーカーが競売で押されているのは、食材を高価で買い戻す日本の外食チェーンがあまりないからだ。30年間、所得水準が横ばいなので、日本の外食業者は、客足が遠のくことを憂慮して販売価格を上げられない。その代わり、卸売業者には、購入価格を一銭でもさらに引き下げようとせざるを得ない。供給価格は跳ね上がるのに、買入価格を上げることができないため競売で勝つことができない。世界的に需要が増えたズワイガニの価格は、10年で2.5倍上昇した。多くの日本人にとっては高嶺の花となっている。本当に良いマグロとズワイガニは、所得水準が高くなり、2.5倍を追加しても喜んで買って食べるという中国や東南アジアに売られる。価格が安い代わりに質もその分落ちる食材が日本人のものだ。日本の流通専門家が「日本人はもはや高級マグロやズワイガニを食べられなくなった」とため息をつく理由だ。◆グローバルサービスも「貧しい日本」に配慮給料が上がらないため、日本人は1円でも安い製品を求めている。各企業は1円でも販売価格の引き下げに生き残りをかけている。1円に命をかける日本消費市場を端的に見せてくれる事例が、「100円ショップ」の成長だ。100円ショップは現在、日本でオフライン市場では唯一成長している市場だ。日本にはダイソーだけでなく、セリア、キャンドゥ、ワッツの4社がし烈なシェア争いを繰り広げている。さらに、成長低迷から脱しようとする大手流通会社まで、100円ショップに新たに進出している。日本の物価が30年間上昇しない間、他国の物価は着実に上昇した結果、日本の相対的貧困感はさらに高まっている。日本を訪れる外国人は「日本の物価高は昔の話になって久しい」と口をそろえる。アップルの最新型アイフォンの価格は、日本人平均給料の45%だ。米国人は月給の25%で購入できる。2009年には、日本人も給料の20%でアイフォンを買うことができた。「貧しい日本人」に配慮するグローバルサービスも現れる。日本円に換算した米国と英国のアマゾンドットコムプライム会員の年会費は1万3000円と1万2000円で、日本(4900円)の2倍を越える。 最近、経済誌などによく登場する「二重価格」という表現も、日本と海外の消費格差を如実に表している。二重価格とは、外国人と韓国人の日本人が異なる価格帯で消費する現象をいう。日本最高級ホテルのオークラが2019年に開館したヘリテージルームは1泊7万円を上回る。それでもコロナ以前まで外国人観光客でいつも満室だった。先進国首都の最高級ホテルのスイートルーム価格にしては安いと感じる外国人が多かったからだ。逆に、一晩で5000円前後のビジネスホテルは、日本人の占有物だ。30代の日本人男性は「出張はもちろん家族旅行も価格が安いビジネスホテルを主に利用する」と話した。上がらない物価は、国家競争力を低下させるまでに至った。 今、日本のアニメ業界では、世界的に認められている日本の作品がこれ以上出にくいという危機感が高まっている。 アニメーション人材が、中国に流出しているためだ。日本アニメーター·演出協会によると、日本アニメーターの54.7%は1年に400万円も稼ぐことができない。民間企業平均の436万円を大きく下回る。協会に加入した大型·中堅製作会社所属のアニメーターの統計だ。協会に加入していない中小·零細制作会社所属のアニメーターの処遇はもっと悲惨だ。中国のアニメ制作会社は、月給を50万円以上提示し、日本のアニメーターを迎え入れている。中国テンセントの子会社、チャイナリテラチャーが出資した日本現地のアニメーション制作会社の人員は、3年間で3倍に増えた。米国のネットフリックスやディズニー、中国のテンセントといった超大型情報技術(IT)·コンテンツ企業に製作費の競争でも遅れを取っている。日本のアニメーション制作費は、米国や中国の動画ストリーミング大手企業の70%まで下がっている。◆原価は大幅上昇したものの、価格に転嫁できず生産単価は上がっているのに、販売価格を簡単に上げることができない企業も、業績悪化に苦しんでいる。世界的に原材料価格が高騰し、特に原材料を輸入する日本のメーカーが悲鳴を上げている。10月、企業が原材料を調達する物価を示す企業物価指数は、昨年同月比8.0%上昇した。 1981年以後40年ぶりの最大幅だ。一方、9月の消費者物価指数の上昇率は0.1%だった。9月基準企業の原材料価格は51%上昇したが、最終完成品価格は2.9%上昇に止まった。費用がいくら上がっても、企業が消費者価格を上げることができなかったという意味だ。利益が増えないので賃金を上げられず、賃金が上がらないので消費も増えない悪循環は昨日今日のことではない。日本の財務省によると、日本の個人消費は00年以降20年間で58兆円減少した。日本の年間国内総生産(GDP)の10%を超える。2013年に安倍晋三首相が就任後、日本政府は10年近く無制限に資金を供給している。しかし、物価が長期的に上がらないデフレはびくともしない。1990年のバブル経済崩壊後、日本経済は30年間デフレの沼から抜け出せずにいる。 2013年初め就任当時、日本銀行の黒田東彦総裁は「2-3年以内に物価上昇率を2%に引き上げる」と自信を示していた。しかし今年4月に「2022年4月までの任期中に物価上昇率目標値の2%を達成することはできない」と述べた。記者東京=チョン·ヨンヒョ特派員hugh@hankyung.com