KDDI石川専務に聞く、au新料金プランのコンセプト
――音声通話定額が導入され、データ通信は従量制の方向になりました。ユーザーからすると似たようなサービスに思えるところもありますが、auでは差別化を図ろうとしていくつかの要素を入れています。たとえば2GB、3GBといった細かな区分の通信料は、“ティアード型”としてユーザーごとに異なるであろう使用量にあわせたものということですよね。
石川氏データ通信料はこれくらい細かく切り分けないといけないよねと考えました。ドコモさんは家族間のシェアでいく形になりましたが、当社は、ユーザーの利用が増えていく中で、家族間シェアでは、家族の誰かが使いすぎる形になって、フラストレーションがたまるのではないかと考えました。そこでデータギフトという形が一番ではないかと。ちなみに料金については米国や韓国の事例も参考になります。たとえば韓国はもっと細かな設定もあり、通信量のプレゼントも頻繁に実施しています。
多田一国氏(料金関連を担当するコンシューママーケティング2部長)通話料が従量制の場合、通話時間である程度、利用の目安がわかりますよね。しかしデータ通信では時間軸ではないため、使いすぎになる可能性があります。そこで上限を設けたティアード型ということになりますが、ここで家族間のシェアにするかギフトにするのか。もし家族間でシェアするのであれば、誰かが使いすぎて、他の家族が困らないよう、ある程度、計画を立てて使う形になります。しかしauは個々人のデータ通信量があり、余れば贈れる形です。だから「データ自由ライフ、略してデジラ」と申し上げているのです。
――ただ、6月の新料金発表会では、そのデータギフトの使い勝手について、質問も多く挙がりました。
データギフトは12月開始予定ですので、それまでにシニアのお客さまが使いこなせるかどうか、といった指摘をいただきました。現在は、アプリで簡単に操作できる画面、電話番号ベースで送り先を選ぶ、といった形を含めて検討しています。ユーザーインターフェイスを詰めています。
――これまでは音声通話が従量制、通信が7GBなどの区切りはあるものの一応は定額という形でした。新プランで逆になっています。ユーザーインターフェイス面での取り組みはもちろん期待したいポイントですが、通話と通信がこれまでと逆になった、という点がどれだけ多くの方に理解してもらえるのか、という点が大きな課題になりそうです。
はい。スマートフォンはこれから、レイトマジョリティと呼ばれるユーザー層へいかに受け入れてもらうか、という点での取り組みになります。そこで一体何ができるのか。今回、料金の考え方をがらりと変えたのは、これまでの流れを踏まえたためです。歴史は繰り返すと言いますか、かつては多様な料金プランで複雑と批判を受けました。LTE時代になって1つのプランにしましたが、データ通信が7GBでは多すぎるといった声をいただくようになりました。それでより細かな形、いわゆるティアード型にしたわけです。
石川氏料金の構造からすると、ティアード型が一番だと思いますし、auスマートバリューを組み合わせていただければ安価に感じていただけると思います。10GBの価格を見ると、auは8000円(税抜、以下同)ですが、ドコモさんは9500円です。1GBあたりの単価を見ると、当社は2GB、3GBと増えるに従って、きれいな流れで単価が下がっていきます。他社さんはティアードがあまり細かくない形で、5GBと10GBの単価の違いが50円しかない、といった形で、利用料との整合性があまり合っていないように思えます。家族間のシェアをするときに通信料以外の料金がかからないのであればともかく、他社さんの場合は500円かかるそうですから、制度的・料金的な発想からすると、auのほうが“正しい”のではないかなと(笑)。
シェアを前提にすると、効率化される部分は割引効果と見なす必要があります。シェア用のプランでは、ある程度、単価を高めに設定する必要があるでしょう。他社さんが実際にどうされるかわかりませんが、たとえば10GBというプランで、当社はアドバンテージがあると思っています。
――ソフトバンクモバイルはキャンペーン(※関連記事)として10GBの価格を並べてきましたが……。
それは、家族間のデータシェアを選ぶか、翌月への繰越を選ぶか、と言う形ですよね。
――なるほど。
翌月への繰越といった機能はどちらかと言うと、個人単位での融通性の仕組みです。家族のシェアとは別の話ですね。