スマホのバッテリーを長持ちさせる技のウソ・ホント。5つの定説を検証
このわずか数年の間に、スマートフォンのバッテリーは大きな進化を遂げました。そのため、これまでバッテリーの寿命を延ばすのに役立つとされてきたテクニックの中には、以前ほど有効でないものもあります。それでも、まるで金科玉条のように古い情報が出回っているのが現状です。BluetoothやWi-Fiをオフにしろといった時代遅れの知識を披露する前に、こうした以前からの定説を検証してみましょう。
定説その1:充電はバッテリーの残量をゼロにしてから
確かに、以前のバッテリーはあまり賢くありませんでした。古いモデルのバッテリーは、自分の満容量を「忘れて」しまうので、フル充電ができなくなってしまうのが常でしたから、バッテリー容量が0%になるまで完全に放電してから再充電するのが良いとされていました。しかしこれは今では、というかかなり以前から、当てはまらなくなっています。
最近のスマートフォンに搭載されているリチウムイオンバッテリーには、以前に使われていたニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池と違い、先ほど説明したメモリー効果の影響を受けません。同様に、リチウムイオンバッテリーでは前世代のバッテリーと充電サイクルのカウント方法が違っているので、いちいち完全放電する必要はありません。以下に引用するAppleの説明を読んでください。これはAppleのバッテリーに限定した記述になっていますが、あらゆるリチウムイオン電池に当てはまる話です。
ただし、多くのメーカーは今でも、バッテリーを「キャリブレーション」するよう勧めています。これはつまり、1~3カ月おきに、完全放電してからフル充電する操作が必要ということです。バッテリーの満容量は時間の経過とともに目減りしていくので、満充電時の使用可能時間は、完全に放電するたびに少しずつ減っていきます。要するに、放電するたびに、バッテリーの寿命は少し減るわけです。1カ月に一度、バッテリー残量が0%になるまで放電すれば、バッテリーがライフサイクルのどの段階にあるのかに合わせてオペレーティングシステムが調整を行い、経年変化による容量減を正確に把握できるわけです。
とはいえ、今ではデジタルキャリブレーション用のツールを内蔵するバッテリーが増えています。こうした「スマートバッテリー」であれば、手動でキャリブレーションを行う必要はほとんどありません。ただし、バッテリーの挙動がおかしいときには、試してみると良いでしょう。バッテリー残量が頻繁に突然変化する(たとえば、さっきまで確かに100%と表示されていたのに急に20%になる場合など)なら、手動でキャリブレーションを行うべきタイミングです。ただ、必要以上に何度もやるのはあまりオススメできません。実際、完全放電を何度も繰り返すと、リチウムイオン電池に悪い影響があるのです。完全放電するたびに充電サイクルは1回増えるので、その分バッテリーの寿命が縮まります。
定説その2:毎晩充電しているとバッテリーの寿命が縮む
これもバッテリーのキャリブレーションと同様の話ですが、以前であれば端末を充電しっぱなしにしていると、「過充電」でバッテリーがダメになることはあり得ました。長い時間電源につないでおくと、旧型のリチウムイオン電池は過熱し(あるいは、まれですが爆発する危険もあります)、充電容量と長期的なバッテリーの寿命が削られてしまったのです(熱を逃がすように作られていないケースを使っている場合は、今でもこの現象が起きる可能性はあります)。
でも最近では、充電器やスマートフォンもずいぶん賢くなり、こうした現象が起きないように対策がされています。情報サイト「Popular Mechanics」の記事にも、修理サイト「iFixit」のテクニカルライターAndrew Goldberg氏の話を受けて、以下のような記述があります。
とはいえ、スマートフォンを常に電源につないでいると、多少は劣化を招く恐れはあります。しかし、ユーザーが気づかない程度の問題です。以前にもライフハッカーの記事で指摘したように、できるだけ長く使いたいなら、バッテリー残量は常に40~80%の間をキープしておくのが最適とされています。確かに理屈の上ではそうなのでしょうが、この現代社会に生きる人間が、そこまでバッテリーの充電レベルに気を使わなくてはいけないなんてバカげています。幸い、今どきの端末であれば、たとえ満充電に近い状態であっても、一晩中電源につなぎっぱなしにしておいたからといって以前ほど電池が傷むことはありません。
ついでに指摘しておくと、スマートフォンのバッテリーの管理は、ノートパソコンなどのバッテリーとは事情が多少異なります。なぜかというと、スマートフォンは少なくとも2年に一度は買い換える場合がほとんどだからです。このように、スマートフォン端末自体の使用年数が短くなっているので、バッテリーのライフサイクルは以前ほど重要な問題ではなくなっています。もちろん、自分は1つの端末をいつまでも使い続けるタイプだ、という人もいるでしょう。でも、あなたが端末を定期的に買い換えるタイプなら、バッテリーの寿命についてそれほど気にする必要はありません。使い方に関係なく、いずれバッテリーは劣化し、寿命が尽きます。ですからあまりこの件についてこだわりすぎないほうが良いでしょう。
定説その3:不要なアプリを終了するとバッテリーの持ちが良くなる
私たちユーザーは、スマートフォンは小さなコンピューターだと考え、コンピューターに近い扱いをしがちです。ノートパソコンの場合、複数のアプリを立ち上げておくと(インターネットと通信するアプリは特に)バッテリー消費が速くなるので、スマートフォンでも同じ理屈が成り立つと思っていませんか? それは間違いです。スマートフォンはそういう仕組みにはなっていません。
iOSの場合、コンピューターとは違い、一度起動したアプリが開きっぱなしになることはありません。アプリを切り替えると、それまで使っていたアプリは一時停止状態になり、特に何もしませんしリソースも消費しません。こうしたアプリを閉じたとしても、バッテリーには何のメリットもありません。逆に「閉じる」操作そのものがCPUを使用し、バッテリーを食います。以前Genius Barの技術スタッフを務めていたScotty Loveless氏に、このあたりの事情を解説してもらいましょう。
Android端末でも同じです。アプリを閉じ、バッテリーを持たせるために「タスクキラー」系アプリを使っているという話を聞いたことがあるかもしれません。ですが問題は、こうしたアプリは効果がないばかりか、メリットよりもデメリットのほうが多いのです。iOSと同様に、Androidでタスクを終了させた場合、あとで使うときには再起動しなければなりません。そうするとやはりCPUを使い、ムダにバッテリーを消費します。手動かタスクキラー経由かを問わず、タスクを終了させると余計にリソースを使い、これがバッテリーの残り時間にも悪影響を与えるわけです。
いちいちアプリを閉じるよりは、バックグラウンドのデータ更新をオフにするほうが、バッテリーを長持ちさせるには効果的です。iOSでは、この機能には「Appのバックグラウンド更新」という名前がついています。ここで更新対象になっているアプリは、ほかのアプリに切り替わったあとも、データを読み込んでいるわけです。データ更新にはCPUが使われるので、バッテリーを消費します。この機能をオフにしたいなら、[設定]>[一般]>[Appのバックグラウンド更新]の順にタップし、更新が必要ないアプリのトグルボタンをオフにします。
Android端末なら、「設定」アプリを起動し、[無線とネットワーク]>[データ使用量]の順に進んでメニューアイコンをタップし、バックグラウンド更新を許可する状態になっている場合は[バックグラウンドデータを制限する]と表示されるので、これをタップすると、バックグラウンド更新をオフにできます。とはいえ、『Google Playストア』をはじめとする一部のアプリは、バックグラウンドデータを制限するとうまく機能しなくなるので、この点は留意してください。
だからと言って、アプリそのものに問題があるケースがないわけではありません。メッセージアプリなどの一部のソフトウェアはバッテリー容量をかなり消費します。ですから、必要がないアプリについてはバックグラウンド更新をオフにし、通知も切ってしまいましょう。まったく使っていないアプリなら、いっそ削除してしまうのも手です。プログラムに問題があるアプリや、非常に多くのリソースを要求するアプリも、バッテリーにとっては天敵です。最近のスマートフォンは計測機能も優れているので、そうしたアプリを突き止めることも可能です。Androidであれば、「設定」アプリから[電池]メニューを選べば、どのアプリが1番電力を消費しているのかが一目瞭然です。iOSなら、[設定]>[バッテリー]とタップすると同じような情報が見られます。
定説その4:充電器は端末付属の「純正品」のみを使うべき
スマートフォンメーカーは、端末に付属している純正品の充電器のみを使ってほしいと思っています。製品が入っていた箱やマニュアルにはたいてい、純正以外の充電器を使わないことを「強く推奨する」と書いてあるはずです。確かに、怪しげな模造品や偽造品など、安物の充電器は使わないほうが良いとはいえ、手ごろな価格のノーブランド品にも十分使える性能の製品はあります。
最近のUSB充電器は標準化が進んでいるので、製品によって充電にかかる時間は違うとはいえ、それによってバッテリーそのものが損傷することはありません。数年前にブロガーのKen Shirriff氏がさまざまな充電器をテストした際にも、製品によって充電に必要な時間は異なりましたが、サードパーティーの充電器を使っても、バッテリー自体には影響はないという結果が出ています。
充電器が供給する電流が、携帯端末が想定しているアンペア値と違っている場合でも、特に問題はありませんでした。最近のスマートフォンのバッテリーは賢いので、供給されている電流に関係なく、自らが扱える範囲内で最大の電気を使うように作られています。ですから、充電器がスペック通りの電流を供給している分には、過熱の危険はありません。ただし安物の充電器の場合は、本来の性能以上(あるいは以下)の出力をうたうケースが多く(さらには充電中に出力が大幅に変動する製品もあります)、これがトラブルのもとになります。ノーブランドでもきちんとした製品なら、こうした問題は起きません。
定説その5:BluetoothやWi-Fi、位置情報サービスをオフにするとバッテリーを大幅に節約できる
iOSの「Appのバックグラウンド更新」にせよ、Androidの「Google Now On Tap」にせよ、スマートフォンに追加される新機能はどれもこれもバッテリーを大量消費するものばかりのように思えます。それは確かに正しいのですが、だからと言って新しい機能を探してはすべてのトグルスイッチを「オフ」にする必要もありませんし、バッテリー節約だけのためにBluetoothやWi-Fiのような基本的なシステムサービスを切るのも得策ではありません。
たとえば、Apple製品とソフトウェアを扱うウェブサイト「MacWorld」が、システムサービスがどれだけiPhoneのバッテリーを消費するかを調べた記事では、あまり使っていないアプリの位置情報サービスをオンにしておいても、バッテリーの使用可能時間にはほとんど影響がないとの結果が出ています。同様に、「機内モード」に切り替えてモバイルデータ通信、Bluetooth、GPS、位置情報サービスをすべてオフにしても、使用可能時間は30分しか伸びませんでした。総合的に考えて、節電効果はあまりないと言うしかないでしょう(しかもこの調査は2年前に行われたものなので、今ならその差はさらに縮まっているはずです)。
以前は、Wi-FiやBluetoothがかなりの電力を消費しましたが、今はかなり省電力化が進んでいるので、頻繁にオンオフしてもバッテリー残量に与える影響はごくわずかです。位置情報サービスについては、アプリがこの情報を必要とするときだけ使用を許可するようにすれば問題ないでしょう。ただし、特別な事情がなければ「常に」位置情報を使う設定にしないよう、気をつけることが肝心です。常に位置情報を使っているとあっという間にバッテリーの残量が減ってしまいます。幸い、通常は位置情報サービスの使用をアプリの使用中のみに限るオプションが用意されているはずです。もちろん、BluetoothやWi-Fiを使わないのなら、最初からオフにしておけば良いのですが、かならずそうしなくてはいけないと神経を尖らせる必要はありません。
何よりもバッテリーを食うのは、液晶画面です。ですから、本当にバッテリーの残量が気になるなら、本当に使わないといけなくなるまで、画面をオフにしてスマートフォンをポケットに入れておくのが1番なのです。
Thorin Klosowski(原文/訳:長谷 睦/ガリレオ)
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