吉川ひなのの健康法に医師が指摘「精神的なもので科学的でない」 吉川ひなの、“毒親告白”エッセイでゴリ押す“トンデモ健康法”に医師は「科学的でない」
彼女の稼ぎはほぼ両親が使い込み、ひなのさんが芸能界を辞めようと決心し、両親に今までの稼ぎを分けてほしいと言うと、当時住んでいた豪邸の家賃1か月分も残っていなかったそうです。その後両親とは距離を取っていたそうですが、金の無心は止まらず、彼女の500円玉貯金すら父親は奪っていったことを綴っています」(スポーツ紙記者)
吉川の“毒親”告白はネットを中心に反響を呼び、SNS上では現在の夫と幸せな生活を手に入れた彼女を称賛する声が多数上がった。
吉川ひなのが本当に“主張”したいこと
しかし、この本の狙いはおそらくそこではない。毒親告白は、彼女がしたい“別な主張”の入り口に過ぎない。
「ひなのさんのエッセイで毒親告白があるのは、1冊のうちの最初の部分だけ。目次を基準にいえば、それらは第1章が始まる前の前段部分となります。第1章である“ポジティブに生きるための心と体の整え方”以降は、彼女が現在実践するオーガニックすぎるほどの生活、健康法、思想の紹介が最後まで続きます。もちろんそれ以外の人の生活を否定したりするものではありませんが、ハワイで暮らす彼女の体験を交えながら、“トンデモ健康法”のような生活が無邪気に綴られています」(美容ライター)
エッセイの第1章は“月のめぐり”からはじまる。吉川曰く《新月の日は、解毒の作用が強い》《満月から新月に向かう時期はデトックスやダイエットに向いていて、逆に新月から満月に向かう時期は栄養を溜め込みやすい時期》だという(以下、《》内はエッセイより引用)。
今回、エッセイで綴られた吉川の現在のナチュラルライフの効果について、医師に検証してもらった。この月のめぐりと人体の関係について、新潟大学名誉教授で医療統計の第一人者と呼ばれる医学博士の岡田正彦先生は、
「結論を言いますと、精神的なもので科学的でないと思います。満ち欠けによって月の引力が変わり、地球では水面が上がったり大きな影響を及ぼします。“ムーンダイエット”というものを提唱している人がいて、引力が変わるので、人体にも影響を与えているという発想ですね。ただ、重力とダイエットは無関係だと思いますね。たとえば丹念に体重を測り、食べものも同じにし、月の満ち欠けと共に体重が減っているか増えているかというデータがあれば多少考察は可能だとは思いますが……。
そもそも人間は1日のうちに2キロ前後体重が前後します。たまたま満月のときに測ったら何キロで、月がないときに測ったら減っていたなんて話はアテにならない。時間や食べる量などをぴったり調整しないと月の影響であるという証明ができません」
続いて吉川は“水道水の塩素の危険性”を主張する。《シャワーを15分浴びると約2リットル分の気化された塩素を吸い込むことになる》。そのため彼女は塩素を除去できるシャワーヘッドにしているという。
「塩素というのは、濃度が濃くなれば安全なものではないですが、どこの国でも水道水には消毒のために塩素が入っています。数値は各国で違いますが、基準が決まっています。塩素を完全に無くしてしまうと、細菌が増えてしまってかえって感染症が増えるので、塩素は世界中どこでも必須なものです。基準を守っている限りは人間の身体に悪影響がないことが証明されています。
影響はゼロではないですが、細菌が繁殖することのリスクを考えたらはるかに安全だということです。人間は1日2リットルくらい水を飲みますが、それくらい飲んでも影響がないことが証明されていますので、シャワーを浴びたくらいで悪いわけがない」(岡田先生、以下同)
“パラサイトクレンズ”という言葉を聞いたことがあるだろうか。パラサイト、つまり寄生虫。彼女はそれらを殺すため、“ティンクチャー”と呼ばれる液状のハーブの製剤を水に垂らして飲んでいるという。その効果は……。
「今、人間の身体の中に寄生虫はいません。だからそもそもやる意味がないと思います。この“パラサイトクレンズ”として販売されている商品を見てみました。ニガヨモギというヨモギの一種が入っている。ヨモギは昔から虫下しとして使われていたもの。もう1つはチョウジ。こちらは漢方として胃腸を整えるというもの。3つめに黒クルミというものが入っている。最近、流行しているスーパーフードの1つです。
このように成分としてはもっともらしいものが入っていました。身体の中の虫を出すという作用がないわけではないので、こういった商品そのものがインチキとは言えませんが、現代人は飲む意味がまったくないでしょう」
個人の感想にすぎない
現在、吉川の家庭では、肉食を完全にやめているという。その結果、《夫のイラつきが、格段に減った》という。そして《人間の体温よりはるかに高い温度の動物の脂がわたしたちの体に入ると、冷えて固まって血管を詰まらせてしまう》。さらに彼女は、不当な扱いを受け殺された動物の悲しみや悔しさが、人間の体内で毒物や異物として反応し、肉を食べた人間のイラつきや不安、悲しみに変わると綴った。
「食べた脂がそのまま血液中に流れているわけではないので、こんなことはいっさい起こりません。動物の肉、特に牛肉と豚肉にはパルミチン酸という脂肪酸が多くて、これが体内に入ると、コレステロールに変わります。これによって血管を詰まりやすくするということはあるわけです。ただパルミチン酸は人間にとって必須のもので、ゼロにしてはいけないものであることが医学的にわかっています。イライラするという話は、これはもう個人の感想で医学の話ではありませんね」
吉川は現代人に欠かせない電化製品にも疑問を投げかける。彼女は危険な電波に晒されないように、《テレビはコンセントを入れたままだと2メートルまでは電磁波が届くので、寝る前に必ずコンセントを抜く》《マンションの場合隣の家とつながっている壁は隣の人がその壁側にテレビやオーディオなど電子機器を置いている可能性があるので、ベッドをその壁側に置くのを避ける》という生活をしているという。
「テレビから電磁波は間違いなく出ています。電気が流れているところは必ず電磁波が生じていますから。ですが、超微弱なので人体にはまったく影響は与えないと言っていい。電磁波が影響を与えるとするならば、身近なところで言えば携帯電話のほうが比べるまでもないほど強力。脳腫瘍が増えるという研究も発表されています。右耳に当てて携帯電話を持つ人は右側に、左耳に当てる人は左側に脳腫瘍が多いというデータもありますが、これには否定的なデータもあって結論は出ていません。
ただ、5Gになればより強い電磁波となり、普段、携帯電話を使っている側に脳腫瘍が起こるリスクが高まるかなと思います。ただ、テレビによって害が及ぶことはいっさいないと思っていいでしょう。コンセントを抜くよりも、携帯電話をやめたほうがいいですね」
あながち間違いではない主張も
ここまですべて吉川の主張を否定する結果となったが、否定ばかりではなかった。吉川はペットボトルの水は、どんなにフィルターを通したとしても“ナノプラスチック”(1000分の1ミリメートル以下の超微細なプラスチックごみ)が混入しているという。
「ミネラルウォーターは微粒なプラスチックで汚染されているという研究があります。11銘柄を調べたところ、そのうちの93%のボトルから1本あたり最大1万個もの微粒子が検出された。その微粒子の正体がまさにプラスチックでした。ゴミとして海洋でバラバラになったペットボトルが、川に流れて……というケースや、プラスチックに汚染された海水や河川水が、いずれも結果的にミネラルウォーターや水道水となります。
ペットボトルの水どころか人間の体内にも入っており、どういう経路で入ったのかはわからないが血液からも検出されているというデータもあります。これが人体にどういう影響を及ぼすかはまだわかっていません。ただ、プラスチックという分解されないものがペットボトルや水道水、もしくは体内の中に入ってしまっていることは事実。水道水などが危険だとは言いませんが、汚染されていることは間違いないですね」
子どもへの対応は正解
現在、第3子を妊娠中の吉川。子育てについても一家言ある。子どもには“洗わない育児”を実践し、息子に対しては石鹸やボディソープ、歯磨き粉は一度も使ったことがなく、不必要な風呂やシャワーにも入れないという。これについては……。
「洗ったほうがいいですが、シャンプーや石鹸、歯磨き粉は使わないほうがいいというのは正解ですね。石鹸などで肌をゴシゴシこすっては皮膚の角質層が剥がれ落ちてしまい、人間の身体を守る防護膜がなくなってしまいます。また、身体の表面にはさまざまな善玉菌がいて、外から忍び込んでくる病原菌と戦ってくれています。石鹸はそういった菌を落としてしまう。歯磨き粉も歯のエナメル質を傷つけてしまうものになるので、本当はいらないものです。
身体の汚れはお風呂に入って温まって、タオルで水分を切るくらいがちょうどいいということがわかっています。お風呂に入るだけで表面の汚れが浮いて落ちるからです。それ以上落としてはいけない。子どもに対する対応としてはこれは正解だと思います。それほど大きな差はないですが、どちらかと言われたら使わないほうが健康的ということは医学的に正しいですね」
エッセイでは大量消費など前時代的な社会を終わらせたいとも強く宣言している吉川。彼女の理想の社会は実現できるか――。