岐阜市、顔認証による自動運転バスでのキャッシュレス決済の実証実験
岐阜市は、公共交通機関への自動運転技術の導入を目指し、2019年から3年連続で市民参加型の実証実験を行っている。背景として、運転免許証を保有しない高齢者、バス停までの移動が困難な交通弱者の増加、バス運転手不足による地域交通の持続の難しさなどの課題を挙げている。
2021年度の取り組みでは、2020年に実験した時よりも運転手が操作する機会を減らすことを目標に、運転席やハンドル、アクセル、ブレーキペダルのないフランス製の車両を採用した。
続いて、自動運転バスの走行検証と同時に、顔認証AIによるキャッシュレス決済の実証実験を行う。顔認証AIエンジンには、トリプルアイズの画像認識基盤「AIZE」を採用した(写真1)。
写真1:バス乗車口に設置した顔認証タブレットの様子(出典:トリプルアイズ)拡大画像表示実証実験は、10月23日から9日間の日程で行う。小型バスタイプの電気自動車に人を乗せて一般道を走る。ルートは、岐阜市役所を出発し、金華橋通りからJR岐阜駅を経由、長良橋通りで岐阜市役所に戻る1周5キロと、岐阜市役所を出発、若宮通りを経由して岐阜市役所に戻る1周2キロの2パターンを用意した。
その際、車両と信号機の通信で信号の色を自動判断しながら走行させたり、車両搭載のセンサーから横断者と障害物を自動で検知したりできるか検証する。走行速度は、最大で時速19キロを想定。運転手がコントローラで車両を操作する使い方もできる。
実証実験の参加者は、事前にiPadなどのカメラで顔画像を撮影し、AIZEに登録する。バスに据え付けたタブレットで顔を認証すると、撮影した画像をクラウド上のAIZEで解析して本人を確認する。事前に登録済みの人物の場合、「ご乗車ありがとうございます」というメッセージとともに運賃を画面上に表示する。これにより、キャッシュレス決済を行ったことを確認できる。顔認証と同時に検温も行い、バス内の感染症対策も支援する。
岐阜市は、将来的には「乗務員がいないバス」の運行を想定し、車内の様子の遠隔監視や、キャッシュレス決済を見据えた顔認証など、実用化に向けた実験を重ねている。「人口減少と少子高齢化を迎えるなか、中心市街地と各地域を利便性の高い公共交通などのネットワークで結び、市民が暮らしやすいコンパクトネットワークの都市づくりの実現を目指す」(同市)。
なお、AIZEは、トリプルアイズが取り組む囲碁AIの研究から生まれた、ディープラーニング(深層学習)による画像認識システムである。クラウドに画像データを送信して解析する。512次元の特徴量を顔画像から検出し、個別認識する。マスク着用時にも98%以上の確率で本人を認証し、年齢、性別、感情も認識できるとしている。