ニュース 速度違反への素朴な疑問。制限50キロは49キロまでセーフ? 一瞬の速度オーバーはありか?
速度違反の重箱の隅をつついてみる
速度違反について、誰しも1度はこんな疑問を持ったことがあるんじゃないか。1、制限50キロは49キロまでセーフ?2、追い越しをかけるときの一瞬の速度オーバーもアウト?3、法定速度を超える制限速度は許されるの?待ち伏せ取り締まりの罠にハマり、素敵な若奥さんがブチ切れ。違反切符を破いた理由とは漠然とわかっていても「なぜ?」と尋ねられると困ってしまうかも。ずばり解いていこう。1、制限50キロは49キロまでセーフ?道路交通法では制限速度を「最高速度」という。第22条第1項がこう定めている。「車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。」「最高速度をこえる速度」とある。「こえる」とはどういう意味か。私は昔、警察官に尋ねたことがある。「こえるはこえるであり、制限50キロなら、それをこえる51キロからが違反になる」とのことだった。元法制局長官の故・林修三氏の著書『法令作成の常識』(日本評論社)ではこう解説されている。「一定の数量を基準として、その基準を含んでそれより多いという場合は『以上』を、その基準数量を含まずにそれより多いという場合は『こえる』又は『超過』を用い…」ここで「なぜ51キロなのだ。50.5キロも違反だろ」とおっしゃる方がおいでかも。確かにそうだ。が、追尾式も定置式(いわゆるネズミ捕り)もオービスも、測定値の小数点以下を切り捨てる。整数で表示する。よって「51キロから違反」という表現でいいでしょ。2、追い越しをかけるときの一瞬の速度オーバーもアウト?「制限速度を超えたのは、追い越すときの一瞬だけだ。追い越すとき制限速度を多少オーバーするのは当たり前でしょ。どうして違反なんだ!」と怒る人もおいでかも。だがそれは大間違い。第22条第1項は「最高速度をこえる速度で進行してはならない」と定めている。どんな理由があっても、最高速度をこえたらアウト。ここでいう速度は平均速度じゃない。一瞬でもこえたらアウトだ。追尾式も定置式もオービスも、一瞬の速度を測定する。3、法定速度を超える制限速度は許されるの?第22条第1項をもう1度見てみよう。「車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。」「道路標識等」とは、道路標識(道端や頭上にあるあれ)や道路標示(路面の規制ペイント)をいう。標識等による規制は都道府県の公安委員会が決める。「政令」とは、道路交通法施行令のことだ。施行令第11条が一般道路の最高速度について、原付バイクは30キロ、それ以外は60キロと定めている。高速道路については施行令第27条が、大型貨物やトレーラーなんかは80キロ、それ以外は100キロと定めている。まずは標識等の最高速度(指定最高速度)を守りなさい。標識等がない道路では施行令が定める最高速度(法定最高速度)を守りなさい。そういう組み立てなのだ。ゆえに高速道路の最高速度を、法定速度は100キロのまま標識等で120キロに指定することができるんだね。以上、3つの「なぜ?」を解いてみた。直ちに何かの役に立つってもんじゃないだろうけど、交通ルールの見通しが少しはよくなったのではないか。文=今井亮一肩書きは交通ジャーナリスト。1980年代から交通違反・取り締まりを取材研究し続け、著書多数。2000年以降、情報公開条例・法を利用し大量の警察文書を入手し続けてきた。2003年から裁判傍聴にも熱中。2009年12月からメルマガ「今井亮一の裁判傍聴バカ一代(いちだい)」を好評発行中。
今井亮一 Ryoichi Imai