日本カメラ博物館の特別展「カメラ偉人伝」が開幕
日本カメラ博物館は、特別展「カメラ偉人伝 写真・カメラ技術に貢献した人々」を7月12日から10月16日まで開催する。本稿ではその展示内容の一部を紹介する。
紀元前とも言われる「光が画像になることの発見」から、画像の記録方法、鮮明な画像を得られるレンズ、使いやすいカメラの開発など、誰でも写真を撮れるようになるまでの発展に貢献した“偉人"にフォーカスした特別展。
偉人の顔ぶれは、1719年に硝酸銀の感光性を証明したヨハン・ハインリヒ・シュルツェ(ドイツ)、1800年頃に塩化銀紙を使って撮影を試みたトーマス・ウェッジウッド(イギリス)から始まる。
レンズを持つ最初の“カメラ"は、レンズを通して写った風景を手でトレースするなど、絵画のための道具だった「カメラオブスクラ」。1825年にフランスのジョセフ・ニセフォール・ニエプスが、アスファルトの一種が光で硬化する性質を利用した「ヘリオグラフィ」をカメラオブスクラに組み合わせて作成した原板が、現存する世界最古の写真とされている。
1830年ごとのカメラオブスクラ。上部のプリズムを通して写った風景を観賞またはトレースする各時代ごとに、解説パネルと関連するカメラや資料が並ぶ1790年頃の「小型カメラオブスクラ」。6×6cmの画面サイズを持ち、同館所蔵品では最も小型なカメラオブスクラという1839年には、フランスのルイ・ジャック・マンデ・ダゲールが銀板写真を「ダゲレオタイプ」として発表。これをもってカメラと写真の歴史では「写真が実用化された」と言われている。露光時間はヘリオグラフィの8時間から10分程度になり、後に1〜2分にまで短縮される。
ダゲレオカメラのセット(1842年)。薬品用の箱、乾板収納箱などが含まれる。撮影後は銀板を水銀現像機(二本脚の箱)にセットし、下からアルコールランプで熱して水銀を蒸発させて現像する「フォトグラフィック ポシュ」(1860年)。感光材料の作成から撮影後の現像まで、道具一式が収まっている。乾板やロールフィルムが登場する以前は、撮影後にすぐ現像しなければならなかった技術的背景が伺えるコロジオン湿板写真法とネガ・ポジ法の完成について解説するコーナー。タルボットの完成したカロタイプ(1835年)は、1枚の原板(ネガ)から複数のポジ画像を得られる点がダゲレオタイプに対するメリットだった「ヘーア フォールディングカメラ」(1870年)。乾板になり露光時間が短くなったため、レンズキャップの代わりにシャッター機構(レンズ後部の箱)が用いられるようになる。カメラの背面に置かれているのは、12枚の乾板を入れ替えながら撮影できるホルダーリチャード・リーチ・マドックス(イギリス)が発表したゼラチン乾板法(1871年)と、乾板のガラスを紙に換える特許を取得(1884年)したジョージ・イーストマン(アメリカ)がロールフィルムを製品化した時期は近い。この頃から工業化により感材の性能が安定してくる。ロールフィルムはやがて、素材を紙からセルロースに換えた透明のものが発明される。
紙ベースの100枚撮りロールフィルムを装填して販売した「ザ・コダック」(1888年)映画用の35mmロールフィルムを利用する小型精密カメラ「ライカ」を発明したオスカー・バルナックの直筆メモツァイス・イコンの「コンタックスS」(1949年)は、ペンタプリズムで上下左右を正しく見られる最初の一眼レフカメラ。ポロミラーを採用した「デュフレックス」(1939年)より明瞭に撮影画面を見られた1883年にセレンの起電力が発見され、1930年代から写真の分野に使われ始めた。1934年にはツァイス・イコンのハインツ・キュッペンベンダーがカメラに露出計を入れる特許を出願。彼が主導した「コンタックス」には導入されなかったが、「コンタフレックス」が世界初の露出計内蔵カメラとなった。
35mm判の二眼レフカメラ「コンタフレックス」(ツァイス・イコン。1935年)また、日本のカメラを「誰もが写真を楽しめるように」というテーマで集めたコーナーでは、自動露出を備えた手頃なカメラ「キヤノネット」(1961年)、のちにOMシリーズを手がける米谷美久氏が開発しハーフサイズブームを呼んだ低価格カメラ「オリンパスペン」や、世界で初めてカメラを搭載した携帯電話「シャープJ-SH04」(2000年)を開発した高尾慶二氏が紹介されている。
オリンパスペン(1959年)カメラ付き携帯電話の元祖「J-SH04」。写メールの始まりこの誌面ではお伝えしきれない展示ボリュームのため、関心のある方は日本カメラ博物館を訪れていただきたい。
日本カメラ博物館の所在地は東京都千代田区一番町25番地 JCII一番町ビル 地下1階。入館料は一般300円、中学生以下無料。開館時間は10時〜17時。休館日は毎週月曜(祝日の場合は翌日)。夏休みには親子向けワークショップも企画されている。
体験用として「レンズ解像力チャート」を展示。持参のカメラで試せるパール光学製の横型コリメーター。チャートとともに、山﨑光学研究所で使われていた物JCIIで使われていたシャッターテスター。日本カメラ博物館を運営する日本カメラ財団は、かつて日本写真機光学機器検査協会(JCII)として国産カメラの輸出検査を行っていた