「6G」の要求条件は6つ、5Gと比べて何がスゴイのか
日本国内では2020年3月に第5世代移動通信システム(5G)の商用サービスが開始された。2021年現在、その次の世代となる「第6世代移動通信システム(6G)」への関心が世界中で高まっている。そこでこの特集では、6Gに至るまでの移動通信システムの進化、6Gの標準化スケジュール、要求条件やユースケース、要素技術を詳しく解説する。
NTTドコモでは、6Gで実現を目指すべき要求条件として6つの項目を挙げている。これらには5Gの性能をさらに高めた要求条件に加え、5Gにはない新領域への挑戦が含まれている。おのおのについて想定されるユースケースを交えつつ解説しよう。
6Gで目指す無線技術の要求条件NTTドコモの資料に基づき作成[画像のクリックで拡大表示]超高速・大容量通信:100Gbps以上を狙う
通信速度の高速化および通信システムの大容量化は、移動通信システム全世代にわたる普遍的な要求条件である。6Gでは、100Gビット/秒を超える通信速度および100倍以上の超大容量化の実現を目指す。
超高速・大容量通信のイメージ(出所:NTTドコモ)[画像のクリックで拡大表示]通信速度が人間の脳の情報処理速度のレベルに近づくことで、単なる映像伝送(視覚・聴覚)だけではなく、現実の五感の情報伝送、さらには雰囲気や安心感などの感覚も含めた「多感通信」の実現も考えられる。
このような従来にはない通信サービスを利用するには、今のスマートフォンを超えるユーザーインターフェースが必要になる。例えば、3Dホログラムの再生を実現するデバイスや、メガネ型端末のようなウエアラブル端末の進化が期待される。
さらにこのような多感通信サービスは、超大容量通信によって複数のユーザー間でリアルタイムに共有できる。そのためサイバー空間上での協調作業など、新たなシンクロ型アプリケーションの実現も期待される。
また、「サイバー・フィジカル融合」などの実現には、実世界の様々な情報をネットワーク上の「頭脳」であるクラウドやAIへリアルタイムに伝送する必要があるため、上りリンクにおける大幅な高速・大容量化が重要になる。サイバー・フィジカル融合とは、実際の物理空間内にある人やモノなどの要素を情報化し、予測や物理空間へのフィードバックなどに役立てるという考え方。すでに「デジタルツイン」などで産業分野に応用されている。
超カバレッジ拡張:サービスエリアを極限まで拡大
現在では、通信は電気や水と同様にライフラインとなっている。今後、その重要度はますます高まるだろう。このため6Gではあらゆる場所で移動通信サービスを受けられるように、サービスエリアを極限まで拡大することを目指す。
超カバレッジ拡張のイメージ(出所:NTTドコモ)[画像のクリックで拡大表示]陸上の面積カバー率は100%を目標とする。さらに現在の移動通信システムがカバーしていない空・海・宇宙などを含むあらゆる場所へのカバレッジ拡張も狙う。
これによって、さらなる人やモノの活動環境の拡大と、それによる新規産業の創出が期待できる。例えば、ドローン宅配や、農業・林業・水産業といった第1次産業における無人化や高度化が有望である。将来的には空飛ぶクルマや宇宙旅行、海中旅行など、2030年代の未来的ユースケースへの応用も期待できる。
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