ニュース 福島県沖地震1年、支えられ再起の道 山形屋商店「地域の味で恩返し」
「地域の味、家庭の味を支え続けたい」と話す渡辺さん =相馬市・山形屋商店
福島県沖を震源に最大震度6強を観測し、県内各地で大きな被害が出た昨年2月の地震から13日で1年となる。深夜に襲った大きな揺れにより、県内では2人が死亡し、重傷者5人を含む100人が負傷した。住宅被害は2万3000棟を超えた。いまだに修復作業などに追われる場所は多く、復旧は道半ばとなっている。 「あれから1年になるが、工事も続いているし、まだまだこれからだ」。しょうゆやみそなどを製造する1863(文久3)年創業の老舗「山形屋商店」(相馬市)の代表社員渡辺和夫さん(52)は厳しい表情を見せた。 店舗では被害を受けた屋根裏や電気配線の工事がまだ続いている。機械類も入れ替える予定だが新型コロナウイルス禍の部品不足もあって納期が遅れている。復旧にめどが付くのは6月ごろの見通しだという。 あの日の夜、出荷に向け蔵で作業していた渡辺さんは緊急地震速報を知らせる携帯電話のアラームにせかされるように表に出た。揺れが収まって戻ると、一升瓶が入ったケースが崩れ、丹精して仕上げたしょうゆが床一面に広がっていた。水や蒸気を流す配管など製造ラインも破損していた。 震災後の深刻な風評被害、2019年の東日本台風と大雨など災害に加え、コロナ禍で起きた地震にやるせなさも募った。だが、応急修理を急ぎ、1カ月後には製造を再開させた。 地震後、得意先の地元飲食店から「ここのしょうゆがないと、うちの味が出せない。商売ができないんだ」と励ましを受けたことが忘れられない。地域の人々に背中を押され、渡辺さんは覚悟を固める。「山形屋は地元に育てられてきた。その恩返しをしたい。地域の味、家庭の味を支え続けたい」福島の避難女性、以前の日常「近づけたい」 「団地の柱が壊れていて、ここにはもう住めなくなったと諦めましたね」。福島市森合町の市営中央団地に住む女性(84)は、今は建物がなくなった場所を見つめ、1年前を振り返った。 女性は当時、同じ団地の別の棟に住んでいた。平穏な生活を送る中、突然襲った巨大な揺れ。建物を支える柱に亀裂が入り、女性を含む住民たちは避難生活を余儀なくされた。 避難所生活で女性は目まいを覚え、倒れこんでしまった。さらに団地の解体が決まり、40年近く住んだ家を引っ越すことになった。慣れない日々に、心身ともに疲れ切っていた。 引っ越しは民生委員や社会福祉士らが手伝ってくれた。「周りの人に助けてもらい、ここまで来られた」。感謝の思いを口にする。 地震の影響で通わなくなった書道教室に、最近は顔を出すようになった。ただ、その回数は「たまに」という。「毎週顔を出せるくらいになればいいですね」。暮らし慣れた住まいを失い、人の温かさに触れた1年。地震前の日常に近づけることを思い、新しい場所で日々を過ごしていく。郡山市中央図書館、いまだ一部休館 柱や外壁、内壁が損壊するなど大きな被害を受け、約11カ月にわたり休館していた郡山市中央図書館は、先月13日に一部再開したが、現在も1階南側の子ども図書館は修繕工事が終わっていない。参考図書や郷土資料が閲覧できる2階や、学習コーナーがある3階もいまだに利用できない状態が続いている。 一部再開後は、休館前とほぼ同じ約41万冊の蔵書の貸し出しなどに対応している。二瓶斉館長は「利用者には迷惑を掛けるが、全面再開までもう少し我慢していただきたい」と話した。福島県内住宅の応急修理申し込み14市町3962件 県によると、本県沖地震で被災した住宅の応急修理について県に申し込みがあったのは7日現在、14市町から3962件で、このうち2822件で修理が完了した。 申し込みが最も多いのは福島市で1197件。郡山市712件、新地町592件と続いた。新地町では賃貸型応急住宅への入居が8件決まった。 罹災(りさい)証明書の交付済み数(1月31日時点)は、42市町村で3万4542件。市町村別では郡山市が1万84件で最多だった。
最終更新:福島民友新聞