携帯大手3社決算にみる「ケータイ料金値下げ」の本当の影響
各社の通信費売上は大幅減少、だが「企業間での顧客流動」は限定的
3社の決算を見ると、共通項はシンプルだ。料金値下げを軸とした「低価格プラン」の影響で、ARPU(ユーザー当たりの売上)は減少、携帯電話関連事業の利益は下がっている。
KDDIのセグメント別利益。通信ARPUの減少を他事業でカバーしているソフトバンクのコンシューマ事業売上。携帯電話端末販売の好調さが強調されているが、モバイル事業の売上自体は下がっている。NTT/ドコモのセグメント別売上・利益。移動体通信(携帯電話)事業の利益は大きく減少している値下げしたのでそうなるのは誰でも予測できることかと思う。各社年間で数百億円単位での売上減を想定していたが、ほぼその通りになったといえる。
ただそこで、「顧客の流動」が起きたわけでもない、ということが見えてきた。
KDDIの高橋誠・代表取締役社長は「我々でいうとUQ mobileやpovoにお客様が流れていくので、auの稼働数がその分減少」と説明している。MVNOも含む他社からの流動は比較的少ないようだ。
KDDI高橋社長ソフトバンクは若干解約率が上がったものの、「ソフトバンクユーザーで、価格に敏感な方はワイモバイルに移動することが多い。LINEMOもソフトバンクからの移行が多い」(ソフトバンク・宮川潤一代表取締役社長執行役員 兼 CEO)という。
ソフトバンク宮川社長NTTの澤田純代表取締役社長は、「13年続いたMNPの転出超過がahamo提供以降、月によって変わるものの、転入と転出がほぼ変わらないような状態で推移している」と話す。ahamoは180万加入を超えたというが、「ドコモからの移転が多いが、他社からのMNPもそれなりにある」(澤田社長)ともいう。
他の大手がそこまで顧客を減らしてはいない、というところを考えると、ドコモから流出するのでなくahamoに移行した人が多いこと、KDDIやソフトバンクではなく、MVNOや楽天からの移行者、もしくは新規加入者がいた、ということと解釈できる。
だとすると、今春の値下げプラン提供以降、低価格化による家計負担軽減はなされたものの、企業単位で見れば顧客の流動性はそこまで高まったわけではない……ということになる。
手続きや出費の簡素化が進んだとはいえ、携帯電話事業者の移行は面倒なもの。消費者は面倒なことはしたがらないものだ。料金による移行施策は一定の効果があるものの、携帯電話事業者の側が「同じ企業グループのままプランだけ移行する」形をアピールすれば、そちらを選ぶ人が増えても不思議はない。
さらにいえば、NTTは「NTTコミュニケーションズ」の統合を控えている。こちらはまだ総務省側での検討結果が出ておらず、今夏に予定されていた統合が遅れている状況だ。
ahamoよりも低廉な料金体系のサービスがどうなるかなど、NTTのコンシューマ向けサービスには影響範囲も広い統合となるが、しばらくは統合を除外した形での戦略展開が続くものと思われる。