USB Type-Cなのに充電が遅い? ケーブルと充電速度の知っておくべき関係
「USB Type-Cケーブルは、充電速度が速いって聞いていたのに、思ったより充電されていなかった」「家を出るまでの短い時間で充電したかったのに……!」――そんな経験はありませんか?
確かに、今まで慣れ親しんできたUSB Type-A(USB Standard A) to USB Type-CケーブルやUSB Type-A to Micro USB(USB Micro B)ケーブルなどと違い、両端にUSB Type-CコネクターのついたUSB Type-C to USB Type-Cケーブルは、電力供給量が最大100Wになった(現在は最大240W対応)ことで話題になりました。
しかし、全てのUSB Type-Cケーブルが大容量の電力供給に対応しているわけではありません。“なる早で”充電できるケーブルの選びかたを紹介します。
急速充電とは?
急速充電とは、その名の通り、スマホなどのモバイル端末への充電を短時間で行うこと、またはそのような仕様のことを指します。
以下に詳述しますが、USB Type-A to USB Type-Cケーブルであれば1.5Aより大きな数字のもの(2.0A、2.1Aなど)、USB Type-Cケーブル to USB Type-Cケーブルであれば3Aより大きな数字のもの(5Aなど)での充電に対応している充電規格がそれにあたります。
あまり関係ない? データ転送速度と充電速度
まず、USB Type-Cを含むUSB規格にはさまざまなバージョンがありますが、そのバージョンナンバーと電力供給量には相関性がないということを知っておく必要があります。
USBの規格は、USB-IF(USB Implementers Forum)という団体が策定しています。現在出回っているUSB Type-Aには、USB 2.0とUSB 3.0および3.2 Gen2が、USB Micro B(Micro USBとして知られているもの)にはUSB 2.0や、USB 3.0/3.1に準拠しているものがあります。USB 2.0のデータ転送速度は最大480Mbpsで電力供給量は最大0.5A(5Vで2.5W)、USB 3.0ではそれぞれ5Gbpsと0.9A(5Vで4.5W)と定められています。
とはいえ、それだけでは電力をまかないきれないスマートフォンのようなモバイル端末が登場し、USB x.xという規格の他にUSB Battery Charging Specification(USB BC)という規格が追加されました。USB BC 1.2では、同じUSB 2.0規格のケーブルでも7.5W(5V/2.5A)で充電することができます。
さらに、USB Type-Cというコネクターの形状が誕生し、こちらはUSB Type-C Currentという規格で定義された5V/1.5A(7.5W)または5V/3A(15W)が最大の電力供給量になりました。よって、USB Type-Cでは7.5Wや15Wというのが“急速ではない”レガシーな充電速度と見なされます。
USB Type-C Currentという規格は、そもそものUSB x.x規格とは異なるラインで定義されています。例えば、USB 3.2 Gen2規格(データ転送速度が最大10Gbps)のケーブルでも、給電能力が最大7.5Wであるということがあり得ます。高速なデータ転送速度をうたっているUSB Type-Cケーブルが急速充電できないとしても、粗悪品とは限らない、というわけです。
100円均一ショップの1つ「Seria」で購入したUSB Type-Cケーブル。USB 2.0で、通信速度は最大480Mbpsだが、5V/3A(15W)給電に対応しているUSB Type-Cケーブルを選ぶなら「PD対応」
冒頭で説明した通り、USB Type-Cケーブルでは最大100Wで給電することが可能です。ただし、それは「USB Power Deivery(USB PD)」に対応している必要があります。
USB PDは従来のUSBよりもさらに給電能力を高めるために定められた規格です。最近のスマートフォンで採用例の多い「USB PD Revision 3.0(USB PD 3.0)」では、5V、9V、15V、20Vの電圧と、最大3Aまたは最大5A(20Vの場合)の電流を組み合わせています。
【訂正:2022年1月24日12時00分 初出時、USB PD 3.0の記述に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】
これを踏まえると、「最大100W対応」のUSB Type-Cケーブルは、最大で20V/5Aの電気を流せることになります。なお、USB PDでは60W(12V/5Aまたは20V/3A)を超える電気を流せるケーブルには「eMarker」と呼ばれるICチップを搭載することが必須となっています。ゆえに、60Wを超える電気を流せるUSB Type-Cケーブルは、それ以下の電気に対応するケーブルよりも割高になります。
よって、「USB PD対応ケーブルだから100Wまで大丈夫」とは必ずしもいえません。eMarkerのないケーブルであっても、60W未満であれば「USB PD対応」とパッケージに記載できます。モバイル用途であれば、60W未満のケーブルとACアダプターを組み合わせて十分に急速充電が可能です。
【訂正:2022年2月10日13時25分 初出時、eMarkerについての記述に誤りがありました。おわびして訂正いたします。】
「QC」というのも見かけるけど……
Amazonでモバイルバッテリーを探していると「Quick Charge x.x」という表記を見かけることがあります。これは、Androidスマートフォンに採用されていることが多いQualcommが開発している高速充電規格のこと。決してUSB PDのまがい物などではありません。
Quick Charge(QC)の特徴は、接続したスマホに合わせて最適な電圧と電流で充電を行えることです。QC 3.0まではUSB PDなどとは全く無関係の規格で、ACアダプターと充電される側の機器(スマホなど)の双方が対応している必要がありましたが、QC 4以降の規格はUSB PDとの互換性も確保されているため、機器がQCに非対応でも、USB PDに対応していれば急速充電ができるようになっています。
なお、PDとQCの両規格に対応しているケーブルもありますので、それを選んでおけば間違いないでしょう。
「RAMPOW USB Type C-Type C」はPDとQCに対応したUSB Type-Cケーブル。充電速度は最大60Wで速いが、USB 2.0規格のためデータ転送速度は最大480Mbpsと遅いまた、データ通信の全くできない充電専用ケーブルにはQC対応のものはありません。というのも、QC対応ケーブルでは、大容量の電力供給を始める前に、給電する側(充電器やモバイルバッテリー)と給電される側(スマホなど)との間で、お互いにQCに対応しているかどうかをデータ通信して確かめるからです。
QC 2.0でスマホを充電しているところ。「D+」「D−」の横にも0.67Vという数値が表示されており、機器同士でデータのやりとりをしていることが分かる「充電専用ということは、データ通信に使う線も充電に使えるから、急速充電できるよね」ということはありません。データ通信できない分、安価になりますが、使えなければ意味がないので、しっかりと調べて買いたいものです。
まとめ
USB Type-Cケーブルであれば、充電速度が飛躍的にアップすると考えがちですが、コネクターの形状がUSB Type-Cだからといって、またはUSB x.xのバージョンが高いからといって、必ずしも充電速度が速いわけではありません。
USB PDまたはQCに対応しているかどうか、または最低でも「5V/3A(15W)」に対応しているかどうか、パッケージをしっかり確認しましょう。
さらに、充電器またはモバイルバッテリーとスマートフォンが急速充電に対応しているかどうかも確認しておきたいものです。