埼玉で初めての「ランドセル現物支給」で揺れる秩父市 支給か否か「そもそも今後ランドセルで通学ある?」
色とりどりのランドセルを背負って登校する児童=秩父市内
埼玉県秩父市が2023年度の市内の新入学児童全員に同じランドセルを無償で配付する方針を決めた。同事業を含む21年度一般会計予算案は開会中の市議会12月定例会で議論されている。市はランドセルが多種多様、高額になっている現状を踏まえ、「義務教育の(児童生徒がいる)家庭に経済格差を持ち込ませない」と理解を求める。一方、議会はPC端末を使ったGIGAスクール構想などを見据え、「今後もランドセルで通学する保証はあるのか」と現物支給に疑問を呈する。同市によると、ランドセルの現物支給は県内に例がないという。同予算案の議決を求める本会議は定例会最終日の15日に開かれる。7歳がんで死去…悲しむ母、怒りぶつけた日々 「生きてくれてありがとう」に温かさ 大事な3つの約束
■新市長の公約 ランドセルを無償で配付することは、4月の市長選で初当選した北堀篤市長が子育て・教育支援策として公約に掲げていた。 市は22年度から現物支給を実施するため、7月に市内の保護者を対象にアンケート調査したところ、ランドセル商戦の早期化などに伴い、6割が「既に購入か予約済み」と回答。9月定例会では現物支給ではなく、「入学準備祝い金」として22年度の新1年生全児童1人当たり一律5万円を支給することにした。■対象は395人 市は11月24日に開会した12月定例会に、23年度の新入学児童にランドセルを現物支給するため、市内全13小学校の新入学児童395人分となる1975万円の補正予算案を提出した。 現物支給については一般質問でも取り上げられ、議員からは「ランドセルに制限をかけるのは、児童や保護者らの選択肢を市が奪うことになるのでは」と疑問視する意見があった。 対して市は「現物支給は、保護者の経済的負担を軽減するとともに、児童の健全な育成を図ることが趣旨」とし、「現在、経済的に恵まれている家庭と、生活に困窮している家庭があり、使用するランドセルの価格に差が出てしまう実情がある。大人の格差社会を学校生活の中に持ち込ませないためにも、現物支給を進めたい」と理解を求めた。